公務員とは
公務員とは、国や地方公共団体で「公のため」に働く職員のこと。営利目的の民間企業とは異なり、広く国民や住民の生活を支える役割を担います。実際に携わる仕事の内容は、所属する機関によって実にさまざま。国レベルの政策立案から、住民に寄り添う行政サービスの提供まで、多岐にわたる仕事・職種があります。
公務員の種類
公務員は、①所属する機関と②仕事内容によっていくつかの種類に分けられます。
国家公務員と地方公務員
まず、公務員はその所属する機関によって「国家公務員」と「地方公務員」に分かれます。
国家公務員は、国の機関で働く公務員です。外務省や財務省といった行政機関のほか、司法機関である裁判所、立法機関である国会などで働きます。
一方、地方公務員は、地方自治体で働く公務員です。都道府県や市区町村ごとに採用されて、その機関で働きます。警察官や消防官も地方公務員です。
(参考/人事院「令和5年度 国家公務員プロフィール」)
現在、国と地方合わせて約340万人の方が公務員として日々働いています。公務員といえば地元自治体の市役所職員をイメージする方も多いと思いますが、そのイメージのとおり、8割が地方公務員です。とはいえ、国家公務員として働く皆さんも約60万人と決して少ない数ではありません。
事務系と技術系
公務員を仕事内容でざっくり分けると、「事務系職種」と「技術系職種」の2つです。
事務系は行政に関する事務に携わる公務員です。所属する機関・部局や、後述する総合職・一般職・専門職の違いにより、具体的な仕事内容は様々です。技術系は、土木・建築・機械・農業など専門分野の仕事に携わります。
事務系と技術系、いずれの職種につくかは多くの場合、試験を受験する際に選択する試験区分によって決まります。
例えば、東京都庁の「Ⅰ類B(一般方式)」をいう職員採用試験では、次の5種類の試験区分があります。それぞれ専門科目の出題内容が異なり、受験生は大学での専攻をはじめとする学習経験と、職種志望から1つを選択して受験します。
東京都庁 「Ⅰ類B(一般方式)」試験区分
- ①行政
- ②土木
- ③建築
- ④機械
- ⑤電気
- ①が事務系、②~⑤が技術系職種です。
地方公務員には、事務系・技術系のほかにも、「公安系」職種として警察官・消防官があり、専用の採用試験が実施されています。また、保健師・看護師・栄養士・保育士などの有資格者が採用される枠もあります。
総合職・一般職・専門職
国家公務員には、「総合職」「一般職」「専門職」という職種の違いがあります。それぞれ専用の試験を経て採用され、採用後は各機関において全く異なる役割を担うことになります。
●総合職
政策の企画立案を担当する各省庁のブレーン
●一般職
決定された政策を執行する行政事務のスペシャリスト
●専門職
税務や労務管理など特定分野のスペシャリスト
国家公務員の場合、受験段階で将来担う「役割」を選択することになります。自分はどんな仕事がしたいのか、じっくり考えて受験に臨むことが大切です。
国家公務員の仕事となり方
●立法機関
衆議院/参議院法制局、衆議院/参議院事務局、国立国会図書館の職員など
●行政機関
各省庁の本府省・出先機関職員、国税専門官、財務専門官、労働基準監督官など
●司法機関
裁判所事務官、家庭裁判所調査官補など
ここからは、最も人数が多い行政機関で働く国家公務員について、より詳しくご紹介します。
国家公務員総合職
国家総合職はいわゆるキャリア官僚。「政策の企画及び立案または調査及び研究に関する事務」を職務とする国家公務員です。各省庁の霞が関にある本府省で、政策立案を担当し国家の運営に携わります。
● 国家総合職の仕事内容
国家総合職職員は、所属する省庁の所管事務について、課題設定から政策の企画立案、具体化するための法案作成、実現に向けた調整や国家議員などへの説明まで行います。中長期的な視点で国のグランドデザインを描き、ルールメーキングを行うスケールの大きな仕事です。
いずれは幹部職員として省庁を動かすことになる総合職職員。特定分野のスペシャリストというよりは、ゼネラリストとしての資質が求められます。2~3年のサイクルで部局や出先機関を異動します。省庁によっては地方公共団体への出向などもあり、全国規模の転勤があります。
また、外務省に限らず、総合職職員は各省庁を代表して外国、あるいは海外企業と折衝する機会が多くあります。ある程度の語学力が求められます。公費で留学する制度も整えられており、海外の大学院等で学ぶことでより高い専門性を身に付けることもできます。
国家総合職の魅力【まとめ】
- ・中長期的な視点でスケールの大きな仕事ができる
- ・省庁のブレーンとして企画立案に携わる
- ・短いサイクルでさまざまな仕事を経験できる
- ・昇進や昇給のスピードが速い
- ・留学をはじめ研修制度が充実
● 国家総合職になるには
国家公務員総合職になるまでの流れは2ステップです。
ステップ① 試験に合格する
ステップ② 志望する省庁から内々定をもらう
まずは、①「国家公務員総合職試験」に合格する必要があります。合格すれば『採用候補者名簿』に名前が載り、②志望する省庁への「官庁訪問」を行うことができます。そして内々定を獲得できれば、翌年4月から晴れて総合職職員です。
国家公務員一般職
国家一般職は行政事務のスペシャリスト、「政策の実行やフォローアップなどに関する事務」を職務とする国家公務員です。全部で9つに分けられた地域ごとに採用され、そのエリア内にある機関(本府省または出先機関)で働きます。
● 国家一般職の仕事内容
政策を企画立案し実現にこぎつけるのが総合職だとしたら、一般職は実施が決まった政策をきっちり実行していく「執行」の役割を担います。具体的な仕事内容は省庁によって様々ですが、具体例として①検察事務官(検察庁)、②法務局(法務省)、③税関(財務省)をご紹介しましょう。
「国家一般職」で採用される機関・職種をみてみよう
● 検察庁(検察事務官)【法務省】
検察事務官は、刑事事件について捜査および起訴・不起訴の処分を行う検察官をサポートする公務員です。「法律を使って行う仕事」といえば、まず法曹三者が思い浮かびますが、検察事務官も法律知識を活かせる仕事です。
● 法務局【法務省】
法務局も、法律知識を活かしたい皆さんにはおすすめの職種。出生・婚姻・死亡、自宅の購入、会社の起業、相続など、人生の様々な場面で生じる戸籍や登記などの手続を通じて、国民一人ひとりの権利と財産を守ります。
● 税関【財務省】
密輸阻止、適正・公平な関税徴収、貿易の円滑化(通関手続)が税関の役割の3本柱です。私たちの身近な空港の手荷物検査から、輸入貨物の書類審査、違法薬物密輸摘発のための捜査など、仕事は多岐にわたります。
● 地方整備局【国土交通省】
河川や道路、港湾などの維持管理やまちづくりを通じて、安全で快適な国土を守るのが地方整備局の役割。技官が多いですが、事務官も用地取得や補償手続、入札・契約、許認可業務など多様な業務に携わります。
国家一般職は「国家公務員」でありながら、地元エリアで働くことができるというのも大きな特長です。一般職は、試験区分「行政」で受験する場合、9つに分けられた地域(ブロック)ごとに採用され、基本的に地域をまたぐ転勤はありません。
9つとは、北海道、東北、関東甲信越、東海北陸、近畿、中国、四国、九州、沖縄です。どの地域で受験しても、霞が関にある本府省勤務を志望することはできます。
● 国家一般職から拡がる可能性
国家一般職のうち、主に検察事務官が対象となりますが、3年以上の勤務を経て内部試験に合格すると「副検事」になることができます。さらに副検事として3年以上のキャリアを積むと「特任検事」への道が開かれます。特任検事は司法試験に合格した検察官と同じ仕事を行うことができます。
また、検察事務官のほか裁判所事務官や裁判所書記官、法務事務官として10年以上の勤務をすれば、特認制度によって司法書士の資格を得ることもできます。専門性の高い法律事務に携わる公務員をファーストキャリアとして選択すれば、その勤務経験を活かして次のステップへと進むことができるのです。
国家一般職の魅力【まとめ】
- ・行政事務のスペシャリスト
- ・公正・確実に行政サービスを国民に届ける役割を担う
- ・本府省や出先機関など勤務先の選択肢が多い
- ・地元など希望のエリアで働ける
- ・転居をともなう転勤は少なくライフプランを立てやすい
● 国家一般職になるには
国家公務員一般職も総合職と同様に①試験合格→②官庁訪問で内々定という2ステップを経て採用されます。
ただし、総合職と一般職とでは官庁訪問のタイミングが異なります。総合職の官庁訪問が最終合格発表後からはじまるのに対し、一般職の官庁訪問は1次合格発表後、第2次試験前にスタートします。
国家公務員専門職
国家専門職は特定分野のスペシャリストとして働く国家公務員です。いくつかの職種がありますが志願者が多い主なものは、国税専門官、財務専門官、労働基準監督官です。これら人事院が採用試験を行う職種のほかに、外務省・防衛省ではそれぞれ独自に専門職員を採用しています。
● 国税専門官の仕事内容・なり方
国税専門官は、国税局や税務署などに勤務する国家公務員であり、税のプロフェッショナルです。納税申告について調査・指導を行う「国税調査官」、税金の督促や滞納処分を行う「国税徴収官」、脱税に関する強制調査・告発を行う「国税査察官」の業務を担当します。
国税庁には本庁のほか、全国に12の国税局があります(札幌、仙台、関東信越、東京、金沢、名古屋、大阪、広島、高松、福岡、熊本、沖縄)。採用は国税局ごとに行われ、転勤も管轄地域内に限定されます。
国税専門官になるには、人事院が行う国税専門官採用試験を受験します。試験区分は法文系の「国税専門A」と、理工デジタル系の「国税専門B」があります。A区分では商法や会計学など、他の公務員試験ではあまり出題されない科目の準備が必要です。
● 財務専門官の仕事内容・なり方
財務専門官は、財務局に勤務する国家公務員であり、財政・金融のプロフェッショナルです。国の予算が無駄なく使われているかチェックする予算執行調査、国有財産の管理、金融機関の検査・監督など幅広い業務に取り組みます。
その使命のひとつとして「地域貢献」が掲げられています。財務省・金融庁で決まった施策を地域において広報・実施し、また地域の実情・ニーズを把握して本省に伝えます。財務省・金融庁と地域のつなぎ役として地域発展に寄与するのが財務専門官です。
財務専門官になるには、人事院が行う財務専門官試験を受験します。出題される専門科目のうち必須問題とされるのは、憲法・行政法、経済学・財政学・経済事情です。国税専門官の商法や会計学のようなマイナー科目は含まれないため、比較的対策しやすいといえるでしょう。
● 労働基準監督官の仕事内容・なり方
労働基準監督官は、労働基準監督署などに勤務する労務管理のプロフェッショナルです。民間企業で働く人々の労働環境を守ることを任務とし、法令に基づく立ち入り検査と指導、悪質なケースについての捜査・送検、労災補償業務などを行います。
労働基準監督官も人事院が行う専門職試験である労働基準監督官試験を受験します。労働法と労働事情が必須科目とされているほか、記述式試験も課されるのが特徴です。
なお、国税専門官、財務専門官、労働基準監督官は第1次試験が同日に行われるため、いずれかひとつしか受験できません。
裁判所事務官
国家公務員の最後に、司法機関で働く国家公務員である裁判所事務官についてもご紹介しておきましょう。
● 裁判所職員の種類
法曹資格が必要な裁判官を除くと、裁判所ではたらく公務員には大きく3つの職種があります。①裁判所事務官、②裁判所書記官、③家庭裁判所調査官の3種類で、その主な役割は次のとおりです。
●①裁判所事務官
裁判を円滑に進めるのに必要な事務(裁判部門)や総務・人事・会計など裁判所を機能させるのに必要な業務(司法行政部門)を行います。
●②裁判所書記官
裁判に立ち合い調書を作成するなど、固有の権限を持つ法律の専門家です。事務官として一定期間勤務した後、試験・研修を経て任官されます。
●③家庭裁判所調査官
家族関係に関する家事事件や少年事件について、裁判官が判断を下すために必要な調査を行います。家庭裁判所調査官補として採用された後、研修を経て調査官となります。
● 裁判所事務官の仕事内容
裁判所事務官には「総合職」と「一般職」があり、それぞれ別の試験を受験します。採用人数が多いのは一般職です。
裁判所事務官は、裁判関係者への手続説明といった法廷事務、必要書類を発送する郵便事務、窓口・電話対応などを行います。現在、日本の裁判制度はデジタル化が急ピッチで進められており、裁判所事務官の仕事も今後変化していくことでしょう。
● 裁判所事務官(一般職)のなり方
裁判所事務官一般職になるには、まず裁判所職員採用試験に合格しなければなりません。
合格すると『採用候補者名簿』に高得点順に名前が掲載されます。名簿は8つある高等裁判所の管轄区域ごとに作成され、それぞれ実際に採用する候補者に内々定の連絡がくる、という流れです。
多くの事務官が目指す「裁判所書記官」とは▼
裁判所事務官は「裁判所書記官」のもとで仕事を行います。
「裁判所書記官」になると、【法律の専門家】として法廷立会や調書作成、訴訟上の事項に関する証明など固有の権限が与えられ、活躍のフィールドが飛躍的に拡大します。
「裁判所書記官」になるには▼
事務官として一定期間働いたのち、裁判所職員総合研修所の入所試験に合格し、1~2年の研修を修了することが必要です。仕事と併行して入所試験や研修の準備をするには相当大変。事務官試験の対策として法律科目を身につけておけば、書記官試験の対策としても役立ちます。
地方公務員の仕事となり方
地方公務員とは、都道府県および市区町村で働く公務員です。それぞれ自治体ごとに行われる試験によって採用されます。地方自治体は国と主従関係にあるわけではなく、それぞれが独立して県政・市政を担っています。
地方自治体のうち、都道府県は「広域自治体」、市区町村は「基礎自治体」とも呼ばれます。それぞれ携わる業務が異なります。
基礎自治体単位では対応が難しい広域的行政を担当
住民に最も近い窓口として日常生活に密着した行政サービスを提供
基礎自治体のうち、人口が50万人以上で政令により指定された「政令指定都市」(以下、政令市)は、権限が大きく、都道府県に準じた役割を担っています。都道府県と政令市の採用試験を合わせて「地方上級」試験と呼ぶこともあります。
地方分権推進の流れを受けて、国から地方公共団体へと、意志決定の権限や業務が移管されています。地方公務員が取り組むことのできる仕事のスケールは大きくなり、やりがいも増しているといえるでしょう。
また、住民の顔を見ながら地元や愛着のある地域のために働くことができる、という点も地方公務員の大きな魅力です。都道府県内、市区町村内に異動の範囲が限定されるため、自身のライフプランも立てやすくなります。
都道府県職員(地方上級)
● 都道府県職員の仕事内容
都道府県の職員は、市区町村の区域を越えて広域的行政や連絡調整事務を行います。市区町村単体では対応しきれない業務や、当道府県全体で統一的に行うべき業務を担当します。
●広域にわたる仕事
・道路・河川・公共施設の管理
・都市計画区域の設定や市街地開発事業の認可
●市町村では取り組みにくい規模の大きな仕事
・高校・特別支援学校・大学などの設置・管理
・農林水産業・商工業の振興
●都道府県全体が同じ基準で行うべき仕事
・警察
・義務教育・社会福祉の水準維持
・各種認可・許可・検査
● 市町村への協力と連絡事務
都道府県職員は携わる業務の幅が広いため、特定分野のスペシャリストというよりは、ゼネラリストとしての成長が求められます。市区町村の職員にくらべ、直接住民と接する機会はそれほど多くありません。
● 都道府県職員になるには
地方公務員は、自治体ごとに行われる試験によって採用されるのが原則です。例えば、東京都の場合、主に大卒者(卒業見込を含む)を対象とした「Ⅰ類B」試験を毎年4月下旬に実施しています。実施時期、試験内容ともに都庁オリジナルです。
一方、同一日に試験を行う自治体が多いのも地方上級の特徴です。2024年の場合、6月16日(日)が統一試験日で、例年6月中旬に行われています。
試験日が重なれば併願受験はできません。統一試験日よりも前倒しで第1次試験を行う自治体も増えていますが、第2次試験が統一試験日と重なり、結局どちらかしか受験できないというケースもあり注意が必要です。
試験内容は自治体により異なりますが、一般的には、以下のような試験種目で行われるのが一般的です。
●第1次試験 :教養試験<択一>、専門試験<択一>
●第2次試験 :教養論文試験、面接など人物試験
出題科目などは、それぞれの自治体の採用案内Webページで確認してみましょう。
市町村・特別区(東京23区)職員
● 市町村・東京特別区職員の仕事内容
市役所、町・村役場および東京23区の区役所は、総合的な行政サービスを住民に最も近い立場から行います。各種証明の発行からまちづくりまで、その業務は多岐にわたります。
● 住民のくらしに関わる仕事
・住民票や戸籍の事務
・各種証明書の発行
● 健康福祉に関わる仕事
・予防接種·健康診断など健康増進業務
・子育て·障がい者支援
・生活保護
● 環境・まちづくりに関わる仕事
・ごみ処理
・上下水道の管理
・公園の整備
・小中学校など公共施設の運営管理
いずれも地域住民の生活に直結するサービスです。住民と直接接し、その要望に応えるのが基礎自治体職員の仕事です。住民のために働いていることを実感しやすく、大きなやりがいがあるといえます。
● 市町村・東京特別区職員になるには
採用試験は、3月から11月頃にかけて自治体ごとに行われます。特に試験日が集中する日程をA~D日程と呼ぶこともあります。
・A日程:6月(2024年は6月16日)
・B日程:7月
・C日程:9月
・D日程:10月
A日程では主に県庁所在市など、規模の大きな自治体の試験が行われます。A日程は地方上級と同一日。残念ながら府県庁と併願できないことが多いといえます。
最も多くの市役所試験が行われるのがC日程(9月)です。試験内容は、教養試験と人物試験のみで専門試験は課されない、というのが一般的です。面接やグループディスカッションなど、人物試験の比重が高くなりますので十分な対策が必要です。
政令市職員の仕事(地方上級)
● 政令市職員の仕事内容
現在、20都市が政令市に指定されています。札幌、仙台、さいたま、千葉、川崎、横浜、相模原、新潟、静岡、浜松、名古屋、京都、大阪、堺、神戸、広島、北九州、福岡の各市で、いずれもエリアの中枢をなす大都市です。
人口が多く財政規模も大きいことから、都市計画の策定など都道府県に準じた役割を担います。一方で、基礎地自体として福祉・まちづくり・ごみ処理・義務教育・消防なども担当しています。
広域自治体と基礎自治体、両方の仕事に携わることができるのが政令市職員の魅力です。
政令市職員になるには
政令市の採用試験も多くの場合、府県庁と同じ6月中旬の統一試験日に行われます。試験内容も、教養試験と人物試験に加えて、法律系・行政系・経済系といった専門試験も課されるのが一般的です。
もっとも政令市においても、6月試験のほかに、4~5月に前倒しで行う早期選考、10~11月に第2回試験として実施する秋季選考、専門科目を課さない試験、SPIを活用する試験など試験日程・形式が多様化しています。
これにともない併願のチャンスも増えています。国家公務員を含めて、「どんな仕事に携わりたいか」「学習負担はどうか(科目が増えすぎないか)」「試験日程」などを吟味して確実に結果を出せる併願戦略を立てるのがポイントです。
公務員試験の概要と対策
公務員になるまでの流れ
公務員試験の内容は実施主体により、様々ですが、一般的には次のような流れで行われます。
地方公務員は多くの場合、試験に合格すれば採用決定です。一方、国家公務員の場合は「試験合格=合格」ではない、という点に注意が必要。試験合格後、働きたい機関を訪問して面接などを受ける『官庁訪問』を経て内定を獲得する必要があります。
基本となる5つの対策
公務員試験対策は 5つの分野に大別できます。国家・地方いずれの試験も、その 5つの分野を組み合わせて実施されますが、配点比率が異なるため 重点的に準備すべき分野は志望先によって変わります。
より楽に、しかも より確実に合格・内定を獲得するには、きちんと 戦略を立てて試験に臨む必要があります。
01基礎能力試験対策・・・効率よく学習し「守る」べき分野
ただし、学習範囲が膨大であるわりに、配点が低いことも多いため、かけるべき労力を慎重に見定める メリハリづけが何より重要です。
02専門試験対策・・・得点源とすべき分野
受験先によっては科目数が非常に多く、中にはマスターするのに時間がかかる科目も。併願戦略をふまえ、 科目の重要度を正しく把握したうえで、 重要知識を繰り返し学習すれば、 確実な得点源にできます。
03面接対策・・・時間をかけて準備すべき分野
公務員試験の面接では 「コンピテンシー評価」がなされています。明るい、物静か、などの性格はあまり関係がありません。項目ごとに、高い評価が得られる エピソードを具体的に準備しておくことが大切です。
04GW・GD対策・・・1人ではできず友人同士では効果が薄い対策困難な分野
人物試験の中でも、 特に増えている試験形式がこの分野。議論の過程をみることで、 現場で求められるコミュニケーション力や 協働力を判断できるからです。繰り返し 練習を積み、習熟する必要があります。
※GW…グループワーク、GD…グループディスカッション
05論文対策・・・準備次第で差をつけられる分野
論文・作文は苦手意識をもつ受講生が多い試験形式。その分、 苦手を克服すれば周りに差をつけられます。専門科目記述を除き、学習すべき 対象は人物試験と共通しています。
専門科目は「法律」中心の戦略
専門試験対策は、民間就活にはない、公務員試験特有の準備といえるでしょう。
公務員の仕事は「法律・条令を駆使し、国や地方を動かしていく」こと。法律の基本的な知識や法的な思考が不可欠です。そのため試験で課される専門科目の中でも法律科目の出題数は多く、配点も高くふられます。
法律科目をしっかりと学んでおくことは合格につながるだけでなく、実務に出てからのアドバンテージともなります。
公務員と民間企業
公務員と民間企業、どちらを選択するか迷う方もいらっしゃるでしょう。ですが「仕事の選択」という点からは、どちらか一方に決めてしまうのではなく、両方に対応できる準備をしていく中で、「自分のやりたい仕事」がどちらにあるかを見極めていけばよいだけです。
もちろん、はじめからどちらかに決まっている場合は、両方を準備する必要はありません。
公務員が民間企業と違う点
「公」のために働く
目の前の利益にとらわれず、日本の現在と将来のために、介護・子育て環境の向上や道路・河川の整備といった、 社会の基盤づくりに貢献することができます。「公共のために仕事ができる」ということが、国家公務員の志望動機として最も多く挙げられています。
これは、純粋に他者(国民)の利益のために働きたいと考えている方が、公務員を志望されていることを意味するものと言えるでしょう。
収入・身分の安定が保障されている
公務員の仕事はやりがいも大きいぶん、重責を伴う仕事です。そのため、公務員の身分は厚く保障されています。公務員自身の生活が保障されなければ、国民や住民のための職責が全うされないおそれがあるためです。
「安定」「福利厚生」が協調されがちな公務員ですが、図2を見ると、実は待遇も厚いことがわかります。
※大企業:従業員数5000人以上の企業とする
※参考:「平成29年分 民間給与実態統計調査」(国税庁)、「国家公務員給与等実態調査結果 平成29年」(人事院)
「平成29年6月期の期末・勤勉手当を国家公務員に支給」(内閣人事局)、「平成29年12月期の期末・勤勉手当を国家公務員に支給」(内閣人事局)
公平・公正な試験制度
選考基準も採用基準も一般的には非公開である民間企業と異なり、公務員は「競争試験」によって採用されることが法律で定められています(国家公務員法・地方公務員法)。
公務員は公平・公正な基準で採用すること、またその採用プロセスを明らかにすることが決められているのです。民間企業のように、「エントリーシート」によってふるいにかけられることはなく、出願すれば必ず試験を受けることができ、誰にでも同じように合格・内定のチャンスがあります。
なお、試験の内容や合格基準については、試験実施団体のWebサイト等で公開されています。
公務員と民間企業の併願
併願は当たり前。ただし、早い動き出しがおすすめ。
「公務員」と「民間」の併願は当たり前のことですが、選択肢が多いほど、やることが多いのも当然。しっかりとした準備で就活に臨みたければ、最も大切なのは「早くから将来について考え、動き始める」こと。
自己分析やニュースや新聞から世の中を知ること、人前で話すことのトレーニングなど、時間をかけて取り組むことで、公務員でも民間でも、負担や不安が軽減されることは数多くあります。また、「ガクチカ」など、面接で語れる経験づくりは、時間があってこそのもの。将来を意識した大学生活を送るかどうかは、就活との関係では決定的に大事です。
仕事選びを通して「本当にやりたいこと」が見えてくる
自分が目指す仕事が、社会の中でどのような役割を果たしているのか。
公務員であれば「省庁・自治体研究」、民間であれば「業界研究」や「企業研究」と呼ばれるもので、「自分のやりたいこととの関係」で深めていくことが、内定につながる志望動機に直結します。
民間と公務員(行政)の両方を見て比較することの相乗効果を、伊藤塾で学んだ先輩たちも実感しています。