正解は決してひとつではない。結果は気にしすぎず、
置かれた場所で頑張ること、それ自体が素晴らしいこと。
文部科学省 B・Tさん
早稲田大学 国際教養学部
◆ 最終合格 : 国家総合職 教養区分
◆ 民間内定 : ITサービス業、コンサルティング業界
※プロフィールは、2021年8月時点のものです。
公務員を目指したきっかけ
大学2年の3月に急遽留学が中断になり、コロナ禍もあり進路について考える時間が増える中で、前々から感じていた「公のために働きたい」という思いに従って進路選択をするべきではないかという考えに至った。「公のために働きたい」という思いを抱いたのは、自分が恵まれて育った分、恵まれない人を含めてこれからは人のために人生を捧げたいと漠然と思っていたからだと思う。
そして、やはり公務員なら国全体、国民全体を相手にできる国家公務員に魅力を感じた。調べるうちに大学3年の秋に受験できる教養区分の存在を知り、大学3年の4月から勉強をはじめた。
学習スタートのタイミング
試験の受験を考えはじめたのも、入塾を決めたのも大学3年の4月。大学3年の秋に受験できる教養区分の存在を知り、早めに対策すべきだという考えから受験指導校への入塾を決めた。
公務員試験に関する情報を十分に持っておらず、独学が不安だったこと、コロナ禍で時間があったことなどが受験指導校利用の決め手となった。
伊藤塾への入塾の決め手は、知名度が高く、プログラムがしっかりしていそうだったことと、教養区分対策のコースが他のコースに比べて安かったことが挙げられる。
伊藤塾のここが良かった!
昨年の内定者による省庁研究ゼミや内定者カウンセリングなどにより、最近で公務員試験や官庁訪問を経験して評価を受けた方から直接内定獲得のアドバイスや官庁訪問カードのアドバイスをしていただいたこと。
内定者ならではの視点をたくさん学び、自分が官庁訪問カードを書いたり、政策の勉強をする際にその視点を意識していたことで内定に近づいたのかなと思う。また、1次試験対策の問題集の問題も非常に豊富で、練習問題に事欠くことがなかったのもよかった点だと思う。
私がとった勉強法
基礎能力試験(多肢選択式)・教養試験(択一式)について
<知能分野>
文章理解について。ここはそこまで時間をかけなかった。伊藤塾の講義を聴いて問題の種類や傾向を掴んだうえで、伊藤塾のテキストと使用教材の「スーパー過去問ゼミ(スー過去)」を使い、一日1問解いていた。大学受験で国語を勉強していればそこまで難しいものではないと思う。問題を解いて、間違えたものに関しては原因を確認することくらいにとどめていた。
数的処理について。中学受験をしておらず、大学受験でも数学で苦戦した私にとっては本当に苦手な分野だった。はじめに伊藤塾の講義を全て聴いたうえで、テキストの講義で扱わなかった問題→「これ完」の基礎力養成編→「これ完」の演習編の順にそれぞれ1周した(資料解釈については伊藤塾で「スー過去」が配られたのでそれも追加でやった)。それでも正答率は50%を大きく下回り、過去問でも3~7点の間をさまよっていた。苦手な人は、その中でもまだましな分野(私は論理関係や表を埋めるタイプの問題だった)を重点的にやり、本番で落とさないようにする手段をとってもいいと思う。
ただ、本番で解けない可能性もあるのでやはり全分野どんな問題が出るか、自分はどれくらいできるのかは把握したおいた方がいい。また、伊藤塾の講師曰く、確率と図形はパターン化されていて比較的簡単な問題が多いのでやっておかないともったいないらしい(私はやったがあまりできなかった)。そんな私だったが本番ではまぐれが2問当たって8/16点取ることができた。こういうこともあるので、苦手でも腐らず、より多くの問題に触れて頑張ってほしい。
<知識分野>
全体としては、いきなり「これ完」で問題をどんどん解いていき、解いた問題の単元を高校の教科書や伊藤塾のテキストで確認していく、という手段を取っていた。暗記が必要な科目については、直前期にノートにまとめるなどして覚えた(時間がかかるので、問題を解いていく中で暗記もしていくのが理想)。また、捨て科目を作るかどうかの判断もとても大事になる。個人的には、大学受験で使っておらず、覚える量が膨大な科目や苦手な理系科目は捨てるべきだと思った。
人文科学について。大学受験で使った世界史と地理に加え、興味があった思想を勉強した(日本史と文化・芸術は捨てた)。どんどん問題を解いていき、足りない知識を補っていった。受験で使った世界史と地理はそれで十分だった。思想は直前期に、学派、人物、その人物の中心思想、著作をまとめた表を作ったが、時間がかかったので、表を作らず伊藤塾のテキストの重要な部分に線を引いて覚えるのでもいいと思った。
社会科学について。大学受験で使った科目はなかったが、ゴリゴリの暗記でもないし、総合論文やその後の官庁訪問でも役立つ知識も多いと思ったので、捨て科目を作らず全てやった。これも、知識はなくとも先に問題を解き、問題の解説や高校の教科書、伊藤塾のテキストで後から知識を入れていく、という手法を取った。経済に関しては、春試験で経済を選択するつもりだったのでミクロ・マクロの参考書を買ってやった。問題を解く中で重要だと思った部分に線を引いていき、直前期には、テキストの線が引いてある部分だけを読んで最終確認をした。
自然科学について。大学受験で生物基礎と化学基礎を選択したので、生物と科学と数学を勉強した(物理と地学は捨てた)。まずは「スー過去」の知識まとめ欄で知識を確認し、「スー過去」の問題を解き、間違えた問題の解説や高校の教科書を使ってさらに知識を確認した。あらかた頭に入ったら、「これ完」の問題を解き、同じようにして知識を定着させた。ただ、基礎ではなく応用の内容も入っているので、ある程度までやったらそれ以上深追いはしないことも大事だと思った。これも暗記がものを言うので、できるだけ早くはじめて曖昧な知識を少しでも確実な知識にして試験に臨みたい(私は知識が曖昧だったので、せっかく覚えたところも本番で間違えてしまった)。
時事について。これは伊藤塾のテキストを読み、重要なところに線を引き、線が引かれた部分を直前期に読み返すことをやった。これで本番は時事問題満点を取れた。ただ、伊藤塾のテキストは細かく、全部覚える時間はないので、先に時事の講義を聴き、重要なポイントを把握したうえでテキストを読むといいと思う。
総合論文試験、一般論文試験、教養論文試験などの記述式について
伊藤塾の講義を聴いて書き方のパターンを理解し、あとは添削対象の論文課題を実際に書いて添削してもらう、ということをやっていた。全部で6つの論文を添削していただいたが、評価はB+からC-の間に収まっていた。添削の中で指摘された点、留意しなければならないと思った点をいくつか挙げたいと思う。
・資料はあくまで参考程度にとどめるべきだが、資料であまり強調されていない視点にのみフォーカスして論文を書く際には、なぜそれだけなのか、説得力を持って説明できなければ高い評価は得られない。そういう意味で、ある程度資料の内容に沿った方が安全ではある。
・政治思想が論文に反映される場合は、どんな人が読んでも過激な表現だと思われないように気をつける(移民の話で保守的な主張をする場合など)。
・接続詞の前と後が正しくつながっているか、適切な接続詞が使われているか逐一確かめる。
・提案する施策がどのような効果を発揮しうるかについても分析する。
・抽象的な表現はなるべく具体的にする(強い、輝き、など)。
また、自分の論述のバックアップのために、既存の政策や時事問題への知識は持っていた方がいい。私は伊藤塾のアドバイスを元に、日経新聞を読んだり、興味がある分野の白書を読んだりして知識を入れていたが、基礎能力試験の対策に追われたため十分にはできなかった。ただ、基礎能力試験対策として行う社会科学や時事問題の勉強も論文のための知識になると思うので、まずは基礎能力試験に向けての勉強を優先し、余裕があれば新聞を読むなどして引き出しを増やしていきたい。
企画提案試験・政策課題討議・面接・集団討論などの人物試験について
<企画提案試験>
まず白書を一通り読んだうえで伊藤塾の講義を聴き、問題で出されそうなトピック(今年の場合は4つ)を把握したうえで、インターネットでさらに細かく調べ、それぞれについて小論文を1つずつ用意して本番に臨んだ。
白書の読み込みは遅くとも10月中には終わらせておきたい。私は1次試験の合格通知からうまく2次試験対策に切り替えられず、白書を読み終わらないまま11月前半の伊藤塾の模擬企画提案に臨んで失敗した。その後の準備もかなり追い込まれたので、早めに取りかかることを強くおすすめする。
企画提案は、どれだけそのトピックについてリサーチしたかが評価を分けると言っていいと思う。私は協力的な母親の力も借り、どのような課題が現実にあるのか、すでにどのような政策が行われているのか、その政策の影響を受けている国民の声なども幅広く調べ、まだ取り組まれていない政策をなんとか見つけ出して小論文を構成した(取り組まれていない政策を取り上げなければいけないわけではない)。今年のテーマは障害者雇用ということで、障害者を雇用する企業の現状もわかっていた方が望ましい。そういう意味で、学生には限界があるので、実際に社会で働いている大人の助けを借りることが大事だと思った。来年も労働関係のテーマになる可能性もあるので、頼れる大人は積極的に頼っていきたい。
提案する施策の根拠は実際の試験でも確実に聞かれるので、答えられるようにしておく。また、参照するリソースも、まとめサイトのようなものではなく、できる限りしっかりとした機関が出しているものにしておいた方がいい。私はそこの部分で少し減点されてしまったかなと思う。もちろん、あらゆるリソースを使った方がいいと思うが、自分の提案の核となる部分については、しっかり信頼できるリソースに基づいて提案したことを主張することで、説得力はさらに増すと思う。
企画提案は、調べれば調べるほどすでに行われている政策が見つかったり、自分の提案のキズに気づくなど、かなり過酷な準備になる。まだ社会のことを知らない学生がその道のプロである官僚を前にして施策を提案すること自体かなりの無理難題なので、割り切りも大切だと思う。どんなにやっても完璧な施策など提案できないので、本番に試験官に詰め寄られたときも、仕方がないと考えて、学ぶ姿勢も大切に、そしてそのとき自分が言えることを精一杯言おうとすることを忘れないでほしい。自ずと評価はついてくると思う。
<政策課題討議>
伊藤塾の模擬を1回、そのときに同じ班のメンバーだった受講生たちのグループの練習会にも参加させてもらい、合計2回模擬をやって本番に臨んだ。
正直メンバーによってもかなり左右され、運要素も大きい。そんなに何回も練習できるわけではないので、得意ではない人は、高評価を狙おうとするより、悪い印象を与えないことに全力を尽くすべきだと思った。私はもともとディスカッションが大の苦手なので、とりあえず何もしゃべらないということがないようにしよう、くらいの心意気で臨んでいた。
話すのが苦手であまりたくさん発言できる自信がない人は、発言の内容が大切になる。そのためには、資料があるとは言っても、テーマについて何が議論の争点なのか、自分はどう考えるのか事前に知っておくに超したことはない。私は時間がなくてできなかったが、ネットでディベートのよくあるテーマを引っ張り出し、それについて自分はどう思うか考える、ということも、意見の引き出しを増やすための訓練としては意味があると思う。ただ、本番でそれが出る確証もないので、現実的には難しいだろう。また、政治的な思想(保守、リベラル)が討議のテーマへの立場に影響する場合もあるので、政治に関心を持ち、政治的なトピックについて自分の考えを持っておくことも大事だと思う。私はコロナ禍で政治に関心を持ち、SNSやネットニュースのコメントで政治的なトピックについて多くの意見に触れることで自ずと自分の思想の軸みたいなものができあがっていき、試験本番でもそのおかげで他の人にはない視点を言えたと思う。議論の技術以外にも、そういう準備もできるので、議論に自信がない人は特にやっていて損はないと思う。
<面接>
早いうちから伊藤塾の面接カード添削を利用し、カードを完成させた。そのうえで、私は文章を書くのが得意な母親にさらに添削してもらい、カードの精度を高めた。面接カードは、面接に臨むうえでの軸になるものなので、1次試験の勉強で忙しくても、夏休み中には質問項目を自分で埋めてみて添削に出すといいと思う。
また、私の場合母親が協力的で、直前に想定問答集を作ってくれたので、それを見ながら自分で話す練習をしたり、頭でイメージトレーニングしたりしていた。
伊藤塾の模擬面接も計2回利用した。1回目でB評価をいただいていたが、自分の中でしっくりこなかったのでもう一度お願いしたところ、今度はC評価だった。自分に特に変化がなくても、模擬面接でされる質問によって評価が変わったりもするので、余裕があれば複数回模擬面接を受けるのをおすすめする。想定質問のレパートリーを広げることにもつながり、本番で思わぬ質問に動揺することも防げると思う。
官庁訪問について
政策についての考えを深めるため、新聞を読んだり、Webを漁ったりして、志望省庁の政策トピックそれぞれについて現状と課題、それについての自分の考え、(あれば)追加の政策案をそれぞれWordにまとめていった。また、その省庁が相手にする現場(私の場合は学校現場)でボランティア活動を行い、現場の視点を学んでそれを政策を考える際に活かしていた。また、教育について、親や学校現場にいる大人と話すことで、大人との会話に慣れること、教育の視点を深めることができた。伊藤塾では官庁訪問の模擬面接を行ってもらい、自分の話す際の癖や欠点を指摘してもらい、それを意識して官庁訪問の面接に臨むことができた。
普段の生活と試験対策について
私は公務員という進路が定まったのが大学3年の春と割と遅かった。2年の夏まではサークルとバイトに全力で取り組んでおり、2年の夏からは1年間の予定でドイツに留学した。コロナで帰国が半年早まり、3月下旬に帰国した際に公務員という選択肢ができあがっており、すぐに4月に伊藤塾に入塾する、という感じだった。
留学経験が直接公務員の志望につながったわけではないが、留学中、日本にいるときより自由な時間が長かったことで、自分が何をやりたいのか考える時間が増え、その結果公務員に向かっていったように思う。日本では自粛生活だったので逆に勉強する時間が取れた。ただ大学でのオンライン授業が始まってからは課題に追われ、真剣に教養区分1次試験の勉強ができたのは8・9月の2ヶ月だった。ただその2ヶ月はバイトもせず、サークルもほとんど活動していなかったのでほぼずっと試験勉強をしていた。
また、大学3年の12月から小学校でボランティア活動をはじめたが、そこの校長先生からお聞きしたことを、官庁訪問カードの政策提言の欄に活かすことができた。公務員は現場との距離が遠いとしばしば批判の材料にもなる中、現場を経験し、現場の人間と話したことを面接でアピールするのはやはり効果があると思った。志望省庁が対象としている現場での活動は、試験勉強の息抜きもかねてぜひやってみるといいと思う。
▲所属するサークルの引退演奏会での一枚です。
モチベーションの維持の図り方
試験勉強や官庁訪問対策は正直しんどいことの方が多く、特に周りの友達の民間就活が終了する頃になると、精神的にもかなりきつくなる。そんなときは、自分が公務員を目指そうと思った原点を思い出し、自分のためだけではなく、自分が救おうとしている人たちのために頑張るんだ、と言い聞かせることでモチベーションを保っていた。
気分転換は、趣味の中でも自分の努力が必要ないものに没頭して公務員関連のことを忘れる時間を作るようにしていた。具体的には、野球観戦(スタジアムに行かない場合はYouTubeで映像を見る)、好きな音楽を聴いて風呂場で歌う、などである。
民間企業の就職活動について
やはり公務員一本に絞るとだめだったときの逃げ道がないというのと、面接の場数を踏めるというのと、本当に公務員が適しているのかは民間を見たうえでないとわからないというのがある。ある省庁の説明会で職員の方が言っていたが、公務員だけが社会貢献をしているわけではなく、民間もそれぞれの立場で人助け、社会貢献をしている。だから、社会に貢献したいからという理由で公務員に絞っているとしたら、それは少しずれている。余裕があるのであれば、自分の就職活動における軸を明確化する意味でも、民間就活はした方がいいと思う。
私はコンサル業界を軸に就活をした。公務員対策で業界研究、企業研究に時間が割けないので、とりあえず直接人の役に立っている実感がつかめそうな感じがするコンサルに絞ってやることにした。
公務員試験対策と民間就活が相互に直接活きた点はあまりないが、やはり民間就活をしておくと面接慣れできる点は大きいと思う。また、官庁訪問の前に民間の内定をもらっていたことで、「公務員がだめでも行く先はある」と思うことが気持ちを楽にし、過度な緊張をせずに官庁訪問を乗り切れたと思う。
最後に
常に国民の顔を思い浮かべながら仕事ができる公務員になっていたい。日々の仕事が忙しいと、つい当初抱いていた思いを忘れがちになったり、仕事の先にいる国民の存在を忘れがちになったりしてしまうことがあるかもしれないが、そうではなく、どんな状況でも、自分の仕事によって国民はどういう影響を受けるのか、どういう風に生活がよくなるのかなどに敏感でありたい。
進路を決めるうえでは、自分の半生を振りかえって自分という人間を形成してきた軸をもう一度思い起こすといいと思う。私も大学3年になるまでやりたいことがわからなかったが、その軸が公務員と一致していたため公務員を目指すことになった。また、目指していた場所から内定をもらえるとやっぱり嬉しいが、その道に進むことだけが正解ではない。正解は決してひとつではない。だから、自分の目標に向かってできることを精一杯やり、あとの結果は気にしすぎず、置かれた場所でまた社会人として頑張っていければ、それはそれで素晴らしいことだと思う。私も落ちたらどうしようと不安だらけだったが、あまり気負いすぎず頑張っていただきたい。
伊藤塾講師・スタッフの方、たくさんサポートしてくださりありがとうございました。今後は内定者として、未来の受験生へのサポートを全力で行っていきます。よろしくお願いしします。