LL.M.とは
LL.M.(Master of Laws)プログラムとは米国ロースクールの留学生向け課程です
米国ロースクールの大半は,J.D.(Juris Doctor,3年)コースとLL.M.(Master of Laws,約9か月)コースの2つの課程を備えています。
LL.M.コースはJ.D.修了生あるいはJ.D.相当の法学教育を外国で受けた方を対象とした,主に専門性を高めるためのコースです。日本人留学生の多くはLL.M.に留学します。
J.D.との違い
・ J.D.とは、アメリカの学生などが法曹資格の取得を目指して通う、通常のロースクールのコースのことです。
・ロースクールでは 3年間学ぶことになります。
・主な対象者は、アメリカの 4年制大学の学部卒業生です。
・ 1-2年生の間に、各州の司法試験科目(憲法・契約法・不法行為法・不動産法・民事訴訟法・刑法・刑事訴訟法・証拠法)などを中心に学びます。
・ J.D.を修了すれば、原則として各州の司法試験の受験資格を得ることができます。
・ LL.M.は、約 1年間のロースクールのコースのことです。
・主な対象者は日本人などの外国人ですが、 J.D.修了後、税法や知的財産法などの専門性を身につけるために入学する人もいます。
・ LL.M.では、基本的には応用科目を学ぶことになります。
・日本人など外国人の場合は、 LL.M.を修了しただけでは各州司法試験の受験資格が得られるわけではなく、母国での法律学位が必要とされています。
母国での法律学位を取得し LL.M.を修了することで、ニューヨーク州やカリフォルニア州の司法試験の受験資格を得ることができるようになります(「米国弁護士資格について」参照)。
LL.M.で学ぶ学生
日本人を含め、アジアの学生の多くは、米国の弁護士資格を取得しようとする方々です。
日本人の場合は、大手渉外法律事務所の弁護士に加え、裁判官、検察官、企業の法務部員、大学の法学研究者などです。
なお、米国の弁護士資格を取得するためではなく、専門性を磨くためにLL.M.で学ぶことも十分に考えられます。
LL.M.出願手続
法科大学院を修了している | 〇 | |
法科大学院を修了していない | 法学部卒業 | △ ※1 |
法学部以外の学部卒業 | × ※2 |
※1 2011年以降に法学部を卒業された方は、出願資格の有無につき各ロースクールに確認する必要があります。
※2 法学の学位を有していない方は、出願資格の有無につき各ロースクールに確認することが必要です。
LL.M.の入学者選考では、法律知識等を問う試験は課されません。
成績証明書・推薦状・パーソナルステートメントなどの出願書類をもとに審査が行われます。
■ 出願準備
・ TOEFLのスコア取得
出願の際に求められるスコアは、トップ・ロースクールの場合、 TOEFL iBTで 100点程度です。また、 GPAはロースクールにもよりますが、 3.0以上必要であると思われます。ただ、これら基準を満たさなければ入学が認められないということではなく、推薦状やパーソナル・ステートメントなど他の資料との総合評価によるようです。
・出願ロースクールの選択
各州の司法試験の受験を考えている場合は、 LL.M.を修了して司法試験に合格後、弁護士としての登録要件を満たせるかが重要な要素となります。その他の基準としては、ランキング※、立地条件、専門性を身につけたい科目の授業が充実しているか、 1学年の人数、学費・諸経費などを挙げることができます。
※ U.S. Best Law Schools
https://www.usnews.com/best-graduate-schools/top-law-schools
* 学費・諸経費
ランキングでトップ10に入るロースクールの場合、1年間で700万円程度かかります。その他、滞在中の生活費などが必要となります。
ロースクール | 学費・諸経費(単位:ドル) |
Yale University | 69,433 |
Stanford University | 66,396 |
University of Chicago | 72,081 |
Columbia University | 76,088 |
Harvard University | 68,962 |
University of Pennsylvania | 70,042 |
New York University | 73,414 |
・奨学金の申請
奨学金は各ロースクールが提供するものとそれ以外のものがあります。各ロースクールが提供する奨学金については、留学する前年の秋頃まで(出願と同時期)に申請をするのが一般的です。それ以外の奨学金についての情報は、留学関連ウェブサイトで一覧になっているものを参照してみてください。どちらの種類でも、奨学金の審査は競争が激しいのが現状です。英語力や GPA等の客観的な数値、奨学金を申請する機関に提出する書類のほか、面接などで評価されるため、しっかりと準備をする必要があります。
・成績証明書、卒業・修了証明書などの準備
■ 出願
・アプリケーション
氏名、住所、生年月日、学歴など出願者の基本情報を入力するものです。オンラインで提出する場合は、出願校ホームページもしくはLSACのホームページ上で予め登録をしてアプリケーションフォームを入手する必要があります。
・推薦状
合計2通の提出を要件とするロースクールが多いです。実際に指導を受けたことのある、法学部や法科大学院の教授の推薦状が推奨されますが、職場の上司などの推薦状を受け付けるロースクールもあります。
・パーソナル・ステートメントの作成
学歴や職歴などを踏まえた志望理由をまとめた書類です。LL.M.の学位が必要な理由、興味ある学問分野と将来のキャリアとの関係などを、一定の字数で記載します。
・レジュメの作成
大学での学習経験、企業などにおける業務について、パーソナル・ステートメントや推薦状などとリンクするように記載します。
・ LSACへ登録、出願
米国ロースクールへの出願には、LSAC(Law School Admission Council)という出願書類の提出代行機関を利用する方法があります。出願手続を簡素化し、郵送によるトラブルを避けられるというメリットがあるため、多くのロースクールがLSACの利用を推奨しています。なかには、LSACを通した出願しか認めないところもあります。
■ 留学準備・渡米
・ビザ
・留学保険
・銀行口座の開設
・寮やアパートの申込み
・航空券の手配 など
■ LL.M.プログラム合格通知
LL.M.プログラムでは、出願書類が到着したものから順次審査を開始し、合格者を決めていくという方法(ローリング・アドミッション)が採用されていることが多いため、早めの出願が有利であると言われています。
■ サマースクール
サマースクールとは、米国ロースクールが提供する1か月程度の夏季プログラムで、LL.M.修了に必要な単位に充当することができます。LL.M.プログラムが始まる前に一定の単位を取得することで、LL.M.の学習に余裕をもって臨むことができます。また、サマースクールは、現地の環境に慣れ、生活リズムを掴む手段としても有効です。
ロースクールの授業
アメリカでは判例法が法体系の基礎であるため、ロースクールでは過去のリーディングケースの射程がどこまで及ぶのかを学び、そこから目の前の具体的な事案に対して適用可能な法論理を導き出すことを学習します。
そのため、ロースクールでは、判例を集めたケースブックを使用して授業が進められます。学生は毎回、あらかじめケースブックの指定された箇所(20~30頁程度)を読み込んで授業に臨むことになります。
難解で、しかも英語で書かれた判例を読み込むのは、かなり時間がかかる大変な作業です。授業の進め方は、教授によって異なり、講義形式のものもあれば、教授と学生との間で問答形式で行われる双方向形式のもの(ソクラティック・メソッド)もあります。
学生たちからは、積極的に議論に参加することで判例の理解を深めようという強い意気込みが感じられます。
クラスの規模も、20人程度の少規模のものから200人近くの大規模なものまで様々です。
ロースクールによっては、J.D.の学生と同じ授業を受けることもあります。