椛山貴子さん

関西大学 商学部 卒業 2014年 行政書士試験合格
2019年 司法書士試験合格
2020年 簡裁訴訟代理権等能力認定考査合格
 
大阪司法書士会 第4939号
簡裁訴訟代理等関係業務認定会員 第1901220号
公益社団法人成年後見リーガルサポート 正会員

10年先も“この仕事でよかった”と思えるように・・
社会で本当に困っている方の安心した笑顔を目指して生きる

司法書士試験を目指したきっかけを教えてください。

離婚を経験し、家を売却する際に女性の司法書士にお世話になりました。気遣いを忘れずてきぱきと手続きを進める姿に憧れを持ち「こんな仕事だったら一人でも子供を養いながら生きていくこともできる」と考えました。法律の知識もなく、悔しい思いを経験したこともあったので、法律の専門家になりたくて、まずは行政書士、その後は司法書士にチャレンジしました。

伊藤塾を選択したのはなぜですか。

もともと行政書士は書籍だけの講座で勉強したのですが、あるきっかけで伊藤塾の模試を受験すると、法律に対する本気度がまったく違いました。そこで伊藤塾の講座を受講し、合格することができました。司法書士でも同じようにわかりやすい講義だと期待し選択しました。勉強してみると司法書士の学習は行政書士と比べて奥深さを感じ、あらためて資格の重みを実感しました。

お子さんをかかえた受験勉強はたいへんでしたね。

受験勉強のスタイルは身についていたのでもう少し量と質、スピードを上げました。思うように時間がとれないので、早起きして朝の時間帯に講義を聴きました。忙しい生活でしたが朝は時間もとれて毎日のルーティンにすることができます。司法書士の勉強を始めた時、息子は小学生で娘は幼稚園でしたがとても応援してくれ、合格したときは私以上によろこんでくれました。講義を受講していると、苦しくて逃げ出したくなり勉強部屋を見るのもいやなときがありました。そんな時、子育てしながら合格された先輩司法書士が「子供に逃げる姿を見せたらアカン!逃げたら子供らは言う事をきいてくれなくなるよ、うちらは合格しか道がないんや、逃げる道はないんやで」とアドバイスしてくれました。“母は強し”です。この言葉は今でも忘れられません。

合格後、就職はどのように考えていましたか。

発表のころに体調を崩して入院し、出遅れたので就職は合格後の研修が終わったあとでいいと思っていました。しかし、研修の際にお世話になった先生は大学が同期で、その縁から、短期間、時短で働くことを容認していただき、お世話になりました。その後も名刺交換をした研修の先生がきっかけで、地元で開業している先生を紹介していただき、現在の事務所に就職しました。伊藤塾との出会いもそうでしたが、何かと運命的な出会いというか“ご縁”に恵まれています。

きっかけを手がかりにご自身で掴み取ったイメージですが昔から積極的でしたか。

ぜんぜん、そんなことはありません。ただ何事にも必死に挑んできました、受験勉強も合格に対しても・・。大阪では、伊藤塾の講師が来るたびに、会いに行き質問やアドバイスを受けました。とにかくチャンスがあれば、行動に移すようにしました。合格発表の翌日にも、いきなり新幹線で東京まで行って、講師に挨拶に行きました。合格したら、報告会で講師にお礼をしたい、これが私の目標だったので、何があっても行くと決めていました。
 

現在の事務所について教えてください。

研修でご紹介いただいた地元の事務所で働いています。まだ子育ても忙しくてフルタイムでの勤務が難しかったので、先生と相談して、事務所で勤務はしていますが、事務所業務のサポートを行う分は時給で勤務、そのほか実際に自分で対応した案件については一定の報酬をいただく、このような半独立のイメージで働いています。事務所の先生のお仕事をお手伝いすることで時給をいただきながら仕事を学ばせていただき、その他は自分の仕事として対応するという、私としてはたいへんありがたい契約形態です。事務所に所属する司法書士ですが、自身の感覚では開業しているという覚悟で臨んでいます。知人をはじめ、知り合ったさまざまな方に名刺をお渡しし、自分を知っていただくことから始めましたが、最近では“自分の名前“で仕事をいただく件数も増えています。

具体的にはどのようなお仕事をしているのですか。

債務整理や裁判業務を対応することが多くなりました。債務整理は、その案件を対応するだけなら、すぐに仕事は終了します。しかし、依頼者は何か特別な事情をかかえて債務整理までの状況に至っているので、同じような経験を繰り返してしまうのが現状です。たとえばギャンブルなどの依存症の場合ですね。そうすると単にその債務を整理するだけでなく、依存症の解消、その方の心の病の治療まで対応する必要があると考えています。ですから時間はかかりますが、それが法律家としてのあるべき姿だと考えています。

すばらしい考え方ですが、どのようにその考え方を身につけたのですか。

私自身シングルマザーですから、離婚などで社会のシステムからこぼれ落ちてしまった方のサポートをしたいと思っていました。しかし、現在は司法書士に家事事件の代理権はなく、直接的なサポートがしづらい状況です。そんなとき、現在の事務所を紹介して頂いた司法書士の先生とお会いして「いちょうの会」という、クレサラ・貧困被害をなくす活動をしているグループの存在を知りました。ヤミ金融や消費者金融、ギャンブル依存、障がい者や高齢者、路上生活者など、生活困窮者に対して幅広いサポートを扱っているのですが、このグループに参加すれば、私の“本当にやりたかったこと”に近づけると考えました。この活動や勉強会などでの経験にはとても刺激を受けています。

登記業務なども大事な手続きですが、これは法律家が本来対応すべき業務ですね。

私もそのように考えています。これらの業務はたいへん時間がかかる上に、濃厚な業務です。その方の人生というか“生き死に”に大きくかかわる業務です。しかし、依頼者は生活保護など困窮している方が多く、報酬が発生しにくい業務ばかりです。実際問題として考えると、私たちも収入を得なければいけない、でもこのような方たちの人権を守り、生活を助けたい、大きなジレンマになっています。何か収入が確保できる仕組みがあれば、もっとこの活動に多くの方が参加してくれると思っています。しかし、司法書士になりたての私が、このような業務に携われることはたいへん貴重な経験であり、これからの人生の大きな糧になると思っています。

司法書士の仕事の面白さは何ですか。

実際の実務は、試験問題とは違い、案件毎に内容を実際に調査して精査し、手続きの行使には、相手方との微妙なやり取り、根回しなど、かなりの手順があります。しかしそれを自分で調べて発見し対応する、そしてその提案をお客様に喜んでいただくことは、たいへん嬉しいですし、やりがいを感じます。責任は大きいのですが、それでお客様を救えることになるので達成感が大きいです。離婚したのが10年前ですが、そこで私の人生は180度変わりました。ですからこのあとの10年もさらに人生に磨きをかけて、「10年後も今の仕事でよかったな」と思えるように勉強していきたいです。

最後に勉強している方へのメッセージをお願いします。

勉強して早く資格をとってほしいです。勉強はつらいので、後回しを考えることもあるかと思いますが、合格すればすばらしい世界が待っています。早く合格して経験を積んで、ともに働く仲間になってほしいと思います。