地村篤さん
2007年 関西大学法学部卒業。 大学卒業後、一般企業に就職。
2019年 司法書士試験合格。
2020年 簡裁訴訟代理権等能力認定考査合格。
学生のころからの想い「私の知識やスキルで悩める方の不安を解消」を司法書士として実現したい
なぜ司法書士試験を目指したのですか。
大学時代に法律相談所というクラブに所属し、月に1回一般の方を対象に法律相談をしていました。相談内容は、刑事、税務、係争中の案件以外なら、と幅広く、離婚の相談なども受けていました。顧問の弁護士、教授や司法書士の助言の元で対応しましたが、自分の知識、そして言葉の一言一言が相談者の方の人生を変える、明るい方向にアドバイスできる、ということを実感しました。それまでは法律家になることは意識していませんでしたが、ここでの経験を通じて法律家の仕事にあこがれを感じました。
では大学卒業後はすぐに受験を始めたのですか。
卒業後は、民間企業に就職しました。法律関係ではないのですが、職場はやりがいもあり、楽しい毎日でした。しかし30歳を近くに、転換期を感じました。そして法律相談をしていたころの思い出がよみがえり、あの経験を仕事にしたいと、会社を退職してもう一度法律の道を目指すことにしました。弁護士はこの年齢からだとハードルが高く感じ、職域も重なる司法書士の勉強を始めました。
どのような勉強から始めましたか。
書籍を見て、その受験指導校で学習を始めました。はじめは良かったのですが、時間だけが過ぎ、なかなか合格点が越えられない時期が続きました。あるとき友人が、伊藤塾の講座を受講していて、「山村講師がわかりやすいよ」と聞き、この停滞の殻を破るために受験指導校を変えてみようと伊藤塾の講座を受講してみました。伊藤塾では山村講師の講義がたいへんわかりやすかったのですが、それ以上に宇津木講師の教え方が私に合っていました。一般論ですが、たいていの講師は、大事なことを示してはくれますが、線を引く、マーカーを引くという指示が曖昧ですが、宇津木講師の講義は、受験生が行うべき指示がとても明確でした。このメリハリの徹底された講義で私は合格することができたのだと思います。また伊藤塾は“合格後を考える”ということを示し、実務家の講演会など合格後のイメージを考えるきっかけを与えてくれて、司法書士実務の認識と責任を明確にしてくれました。
合格後の就職活動はいかがでしたか。
私は、ある程度規模の大きい法人で働きたいと考えていました。そのような基準から数ある事務所の中から、3つの法人に面接を申し込みました。最初は「私は30歳も超えているので厳しいかな」と思っていましたが、実際就職活動はかなり好印象で、運よく自分でどの事務所に就職するかを決めることができました。なので就職活動に困ったという思いはなく、採用も充実していたので合格者にとってはウェルカムな業界だと感じました。
どうして大規模な法人に、そして今の事務所に入所を決めたのですか。
民間企業に勤めていたころは、海外も含め全国に支社があったので、みんなでワイワイと議論しあいながら仕事を進めていくのが好きでした。同じ目標に向かって、同じ組織の人間が切磋琢磨しながら業務を進めていく、こんな職場を楽しく感じました。また、私は実務経験が無かったので、多くの仲間とさまざまな種類の仕事ができる職場がいいと、規模の大きな事務所を探しました。その中でも今の事務所に決めたのは、担当していただいた司法書士とのフィーリングが合ったこと、そして事務所の仕事が、不動産登記だけでなく、商業登記、相続など幅広く多岐にわたっていたことが理由です。
就職してみていかがでいたか。
入所するとしばらくは補助者が担当するような業務をみっちりと勉強しました。仕事を初歩の初歩から、銀行に書類を取りにいく、登記後の書類をお客様にお渡しに行く、細かい記載のチェック、登記が完了した謄本を取りに行く、本当に細かい仕事を毎日こなしました。もちろん、その前段階の、コピーをとる、荷物を梱包するという、いわゆる“雑用”を担当しました。同期の仲間と話をすると「俺はこんな仕事をした、俺はもうすぐ独立をする」など、司法書士として生き生きと活躍する現実を聞き、「私だけこのままでいいのかな・・」と悩んだ時期もありました。しかし、本当に雑用的なところからみっちりやることで、業務手続の準備から当日の手順など、一連の流れを、裏側の業務も含め学ぶことができたので、お客様の前でも恥をかくことはないレベルまで仕事を把握することができました。今思えばたいへん貴重な経験ができました。
実際に司法書士として仕事をして、受験時代のイメージと変わりましたか。
あらためて司法書士は手続きのプロフェッショナルだと感じました。登記に関しては不動産売買だけでなく、船舶など幅広い業務を行っていますが、それぞれとても細かい手続きを正確にこなす必要があります。たとえば“本人確認”、受験時代にも勉強していましたが、実際の実務ではこれがとても重要です。特に私の事務所では本人確認のレベルがとても高く求められています。この時期、いろいろな理由をつけられて、お客様と実際にお会いすることが難しいのですが、手続きの期限は決まっているので、それまでに確実な本人確認を行う必要があります。たいへん苦労する業務ですが、本人確認は司法書士の職責の中でも一番重要な手続きです。このことは合格して実務で働いて実感しました。
仕事の面白さ、何か印象に残っている案件はありましたか。
遺言の公正証書作成の依頼を受けました。お客様に事務所におこしいただき、ご要望をお聴きする中で、その方のご要望をかなえるために一番最適な方法で手続きできるようアドバイスを重ねていきました。このようなやり取りの中で、頼りにされている、役に立っていると感じます。最後には「先生、よろしくお願いいいたします」と言われたときには、感謝されているのだと満足感を覚えました。私の知識や助言、アドバイスで、お客様の不安な点が少しずつ消えていき、安心に繋がる、これは私が法律家の道を目指す出発点でした。原点を思い出し、とても印象に残っています。
今後どのような司法書士を目指していきますか。
後見業務を積極的に行いたいです。後見業務や家族信託を通じてシニアや障害を持つ方のサポートに特化した業務を行うのが私の夢です。自治体のボランティア活動に参加したことがあるのですが、その時にシニアの方からさまざまな悩みや、困っていることをお聴きしました。このような案件は司法書士の立場でも解決できることがあると思います。まだまだ司法書士には法律判断に対する制限があり、活動が行いにくい環境がありますが、逆に司法書士だからできることもたくさんあると思います。職域の制限が見直されて、本当の意味での“街の法律家”“市民のための法律家”の活動が積極的にできる環境を掴み取っていきたいです。やはりこれが私の法律家の出発点ですから・・・
最後に学習している方へのメッセージをお願いします。
司法書士試験は、あきらめなければ合格できる試験です。あきらめるかあきらめないか、継続するかやめるか、その尽きると思います。やればできる、私もそうでした。本試験でも最後の5分、いや1分まであきらめずにがんばって、合格を勝ち取ってください。応援しています。