大学在学中に試験合格後、実務の世界へ、誰かのために自然と努力したくなる仕事です

2009年7月掲載

【神奈川県】 椎野正己司法書士法人 三井 由利先生 (司法書士)

■Profile
2005年 司法書士試験合格
2007年 神奈川県平塚市「椎野正己司法書士法人」入所

司法書士を目指した理由

大学2年の冬に、翌年の就職活動をどうするか考えていた時に、企業の中の一人としてではなく、自分にしかできない仕事をしたいと思い、資格をとろうと決めました。司法書士を選んだのは、身近な法律家として人の役に立つことができると感じたのと、短期間での資格取得が可能だと思ったからです。

合格後、勤務までの経緯

2005年に司法書士試験に合格後、新人研修★・関東ブロック研修★・特別研修★を受講後、2006年4月に藤沢市にある司法書士事務所に就職しました。 2007年11月まで補助者として勤務しましたが退職、翌月より現在の事務所に就職し、2008年1月に司法書士登録※をして現在に至ります。

現在の主な業務内容

不動産登記業務を中心に、商業登記業務、債務整理業務も扱っています。事務所に来た依頼をそれぞれ司法書士が担当し、業務を進めています。私も、特定の業務に限らず、全般的に仕事を受けています。

仕事に取り組む時に気を付けていること

依頼者の話をよく聞くこと、小さなこと細かいことでもとことん確認すること、慎重であること…どの仕事に対しても共通することなのですが、結局は「司法書士として恥ずかしくない仕事をすること」につながっていると思います。特に登記に関しては実体を忠実に反映させる必要がありますが、例えば「この不動産の名義を変えたいのですが…」という依頼があった時に、所有権が移転するに至った原因は何だったのか、最初の話だと「あげる」ということだったけれども実際はお金が動いているので「売買」なのか?それとも別の原因なのか?このような判断が必要なことが多々あります。書類が揃いさえすれば登記はできてしまいますが、実体上何が起きていたのかを私たちがきちんと確認し、登記手続きにのせていかなければなりません。あらゆる案件おいて、司法書士として何が求められているのかを真剣に考えて仕事をしなければいけないと感じています。

個人の権利を守る「憲法の理念」について

不動産登記・商業登記にしろ、債務整理等裁判事務にしろ、誰かの権利を守るという側面が必ずあり、その部分に私たちはこの資格を持って関与することができます。普段こなすことに懸命になりがちな「仕事」の根底にはこのような意味があり、私たちはそれを忘れず、依頼者が何を求めているのか、私たちには司法書士として何をすることで責任を果たしたといえるのか、ということを常に考えなければいけないと思っています。

これから拡がる司法書士の職域・業務内容

2009年3月11日に、伊藤塾東京校で
実務の魅力についてお話いただきました

司法書士に簡裁訴訟代理権が与えられて数年経ち、現在司法書士が代理人として訴訟に関わっている件数もかなり多くなっているようですが、この訴訟のかなりの率を不当利得返還請求訴訟、つまり過払い金の返還請求が占めているそうです。今後過払い金返還訴訟が減少するとともに、司法書士の訴訟関与率が下がることも指摘されています。
簡裁では一般の方も簡単に訴訟手続きが利用できるように書式なども準備されていますが、やはり「裁判」となると構えてしまうものだと思います。それを解消するためには、 司法書士が依頼者のサポートをして、裁判手続きをより利用しやすいものに変えることが必要なのではないでしょうか。“身近な法律家・司法書士”にしかできない、一つの大きな役割だと思っています。

 今後のビジョン

依頼者が何を望んでいるのか、どうすることで問題を解決することができるのか、問題を抱えている依頼者を助けることができるのか、まずそれを第一に考え、実現するその課程は私たちの「仕事」でありますが、形式的にそれをこなして良しとするのではなく、常に「自分が依頼者であったら」という気持ちを忘れてはならないと思っています。
司法書士としての自分を信頼してくださってこそ依頼があるわけですから、その期待に添えるよう、責任感をもって仕事をし、そして「この人に頼んでよかった」と思ってもらえるような司法書士になることが私の目標です。

これから合格を目指す方へ

私もこの世界で仕事を始めて早3年目ですが、慣れた部分もあるとはいえ、毎日新しい仕事が入り、やったこともない登記の依頼がきたりと、日々新鮮な驚きがあります。また、以前いらしたお客様が別件の仕事を依頼してくれたり、紹介されてきたというお客様がいらした時は、自分の仕事が評価されたような気がしてとてもうれしくなります。もちろん私もまだまだ修行中で、分からないことも課題も山積みですが、もっと勉強して少しでも誰かの役に立ちたいと思える、そういう仕事ができる資格だと思います。勉強量も少なくない試験ですが、うまく受験指導校を利用して試験をクリアし、この仕事のやりがいをたくさん見つけてほしいと思います。
 
(2008年8月・記)
 

※司法書士登録
司法書士試験に合格したら、即司法書士としての業務が行なえるわけではありません。
司法書士試験合格者(司法書士となる資格を有する者)が「司法書士」となるためには、司法書士法所定の手続きにより、日本司法書士会連合会に備える司法書士名簿に登録を行なう必要があります(司法書士法8条)。
なお、司法書士には事務所設置義務があり、司法書士の登録が完了した場合は、晴れて自らの事務所を立ち上げることができることになります。


★CLOSE UP:合格後の研修にはどのようなものがありますか?
【研修のスケジュール】
  最終合格発表 11月上旬
  中央新人研修 1月下旬
  特別研修     2月
   ブロック研修  3月上旬
司法書士試験に合格すると、合格証書の交付とともに、研修の案内が配布されます。代表的なものとして中央新人研修、特別研修、ブロック研修がある。平成17年度からは、中央新人研
修とブロック研修の間に、認定考査の前提となる特別研修が組み込まれたため、2ヶ月ほど研修が続くことになります。
 
【中央新人研修】
中央新人研修は、全国の合格者が集まり、実務に最低限必要な知識についての研修が行なわれる。中央新人研修は、司法書士の倫理についての話や、特別研修の前段階としての裁判業務についての話が多くなされます。研修会場では、大量の名刺交換会の始まるため、200枚程度の名刺を作成しておくことが必須となる。中央新人研修は、1週間程度であり、講義を聞くというスタイルで行われるのがほとんどですが、受講生一人一人を指名して答えさせる講義もあります。 2008年度の中央新人研修では、伊藤塾長が憲法に関する講義を担当しました。
 
【ブロック研修】
関東ブロック、近畿ブロック、東北ブロックなど、地域ごとに行われる研修です。ここでは、不動産登記の実務や、不動産競売に関する実務の話など、より実務的な内容についての研修が行われます。登記立会実務研修においては、実際に不動産の買主や売主、不動産会社や銀行の人など配役を設定し、司法書士として実演で研修が行われます。
 
【特別研修】
特別研修とは、司法書士が簡裁訴訟等代理関係業務を行うにあたって必要な能力を習得することを目的とする研修です。この研修は、100時間かけて行われるので「100時間研修」等と呼ばれることもあります。研修は、起案・模擬裁判のためのグループ研修、弁護士による講義のゼミナール研修、裁判官の講義の実務研修、実際に裁判所で見学する法廷傍聴等があります。弁護士によるゼミナール研修は、主に起案した訴状・答弁書の講評や、実務についての実践的な話を聞くことができます。模擬裁判のためのグループ研修では、訴状と答弁書を各自起案したり、準備書面の作成や、証人尋問、尋問事項書の作成、証拠申出書・証拠説明書の作成など、実際に簡易裁判所での裁判で司法書士が行うような手続をグループ単位で行なう。模擬裁判は2グループで原告・被告に分かれて裁判で争うことになります。基本的に遅刻は厳禁であり、1日でも遅刻をすると特別研修の修了認定が得られない厳しい研修です。