憲法の理念を必要とする司法書士、高まる期待、役割の重要性を実感する日々
【岡山県】 司法書士 水島敏裕事務所 水島敏裕 先生 (司法書士)
■Profile
2006年 司法書士試験合格
2007年 岡山県真庭市にて「司法書士水島敏裕事務所」開設
司法書士を目指した理由
年齢を重ねるにつれて、自分の家の資産管理を手掛けるようになり、不動産、有価証券といったものを調べていたら、亡くなっている祖父母や曾祖父母名義のままで残っているものがかなりありました。当時、大学で法律を学んでいましたし、このような名義書換をはじめとした資産管理をするうえで、法律の知識を活かせる司法書士という職業に魅力を感じていました。登記という実務についてもある程度知っていたので、同じような問題を抱えている人たちを通じて社会に貢献できるのではないかと思い、司法書士を目指しました。
伊藤塾に入塾したきっかけ
東京の私立大学に在学していた時に、大学の生協で伊藤塾のスタッフの方々が配布していたパンフレットを見る機会がありました。当時、受験指導校というものをあまり知りませんでしたが、パンフレットで司法書士試験の難しさをある程度理解できた(?)ので、司法書士試験に合格するには受験指導校で学んだほうがよいと考えました。そして、「司法書士入門講座」を受講することにしたのです。
大学在籍中は通信教育課程で法律を勉強していたので、独学で勉強することが多く、理解するのに一苦労していましたから、入門講座を受講して体系的に法律を学ぶことができて、「なんて分かりやすいんだろう」と思いました。
現在の主な業務内容
私の事務所は、岡山の田舎にあるのですが、冒頭でも述べたように、不動産を故人名義のままにされているお客さんがかなりいらっしゃいます。したがって、相続登記の案件が中心になっているというのが現状です。その次に売買登記、贈与登記、担保権抹消登記といった感じでしょうか。被担保債権(担保がある債権のこと)を弁済したにもかかわらず、担保権抹消登記をせずそのまま何年も放置している案件が見受けられます。いずれにしろ不動産登記の案件が中心です。
社会に奉仕する精神の重要性
登記業務、供託業務が本来の仕事の中心であることは言うまでもありませんが、そうした業務を通じて、日常の小さな法律問題について相談にのることが司法書士の仕事として大切であり、司法書士の本来の仕事ではないかと思います。私は開業して1ヶ月余りしか経っていませんが、登記業務のほかに成年後見、離婚、相続といった問題について相談を受けました。報酬にならないこともありますし、まだ、知識が乏しいので、十分な回答ができないこともありますが、自分が今持っている知識をフルに活用してできるかぎりの回答はしているつもりです。司法書士は煩雑な登記・供託業務やそれを取り巻く法律問題に携わっていかなければなりませんが、司法書士をはじめとした法律実務家は法律問題を通じて社会に奉仕する精神をある程度持っていなかったら、自らの職務をまっとうすることはできないと思います。私の事務所のある地域は都市偏在型である弁護士がまったくいない状況であり、こうした仕事での司法書士への需要、社会に対する役割は今後より大きくなると思います。司法書士に対する簡裁訴訟代理権の付与も大きいと思います。
やりがいを感じる瞬間
例えば、開業日に大阪に在住の方から山林の贈与による登記手続を依頼されたのですが、手続が終わって書類を郵送しましたら、書類の受領書とともに「この暑い時期に面倒な仕事をしていただいて、大変助かりました」と書かれたお礼の手紙をいただきました。
また、高知のご出身で私の事務所の近所にお住まいの方からは、「被補助人になっている高知のおばの財産管理の件で身元引受人になっている母が困っているのだが、どうすればよいか。」という成年後見関連のご相談を受けたました。私が、「被補助人、補助人、被補助人の入院している病院関係者、そして被補助人の身元引受人との間で、具体的な話合いをして、補助人の権限内容など相互の役割を再確認されておいたほうがよいのではないか」といったアドバイスをしたところ、1週間ぐらい経って、その方から、 「おかげさまで、おばも母も日常生活が順調にいくようになりました。ありがとうございました」とお礼の言葉をいただきました。
些細なことかもしれませんが、こうした一言が次の仕事に対するやる気を一層引き起こしてくれます。本当にありがたいことです。
ますます高まる司法書士への期待
私が事務所を開業している場所は、岡山県の北部の人口5万人程の真庭市という所です。この北部には弁護士が7人しかいません。岡山県の場合、弁護士は岡山市と倉敷市の2つの都市に集中していて、私の住む真庭市には、弁護士が1人もいません。したがって、身近な法律問題についての相談を弁護士に代わって司法書士が受けることが、これから一層多くなると思いますし、そうした司法書士の役割に対する期待もますます大きくなると思います。また、弁護士は敷居が高いという意識が弁護士、依頼者双方にあり、身近な法律問題を遠慮なく相談できるのは司法書士だと考える方が多いようです。こうした話を聞きますと、真庭市のように弁護士がいない地域だけでなく、弁護士が偏在する都市部でも司法書士に対する役割はますます大きくなるのではないかと思います。
また、成年後見制度における司法書士の役割も大きくなってくると思います。新しい成年後見制度が発足して日が浅く、社会に浸透しているとは言えませんが、少子高齢化の速度をますます速める日本社会において、成年後見制度の重要性は大きくなるでしょう。
プロフェッショナリズムの核となるもの
事務所を開業した当初、分からないことがあれば、配属研修先でお世話になった先生にFAXや電話で質問をしていました。しかし、何回めかにFAXをしたとき、その先生から、「一つのことを自分で考え、 あらゆる書物を調査して、初めてそれは自分のためになるものだ。 真のプロとは何か。司法書士の誇りとは何か。決して安直にならず、 あとは自分のために自分で考えなさい」とお叱りをうけました。
蛭町先生もおっしゃっていたように、答えのない問題を自分自身で考えて解答していかなければならないのです。そのためには実務で分からないことや難しい事案があれば、まず自分で文献にあたって考えて処理をするという姿勢を、絶えず持ち続けていかなければならないでしょう。研修先の先生のお言葉は、私の実務に対する安易な姿勢を戒めてくれました。私は日頃から六法、判例、登記研究の法務省民事 局の質疑応答や登記先例といった文献にあたっていますが、その中には、司法書士試験受験時代に使用した伊藤塾のテキストや問 題集も含まれています。伊藤塾の教材は実務に入ってからもとて も役に立っています。
また、同期の合格者、研修生との間でメールのやりとりをして、実務について色々と意見をぶつけあっています。
精神の支柱にある「憲法の理念」
私は県司法書士会の青年協議会に入会させていただいているのですが、生活保護や多重債務者に関する問題について触れる機会がありました。中央新人研修でも、憲法の講義で「路上の憲法学」というタイトルで生活保護に関する問題を取り上げていました。多重債務者問題では、グレーゾーン金利が撤廃されされましたが、金融業者による貸し渋りがおきています。生活保護問題では、行政側の相変わらずの対応のまずさで死人が出るなどの事件がマスコミで取り上げられています。
人間が生まれながらにして持っている権利(人権)とは何か、人 権を守るため国家権力である行政の横暴をいかにして食い止めな ければならないかを考えさせられる場面です。そして、社会に奉 仕する精神を必要とする司法書士として、常にこの問いを自分に 投げかけていきたいと思っています。
講師が合格祝賀会の席で、「伊藤塾の沖縄スタディツアーに毎年参加するたびに、自分の人間としての小ささを実感させられる」とおっしゃっておられました。
憲法改正が叫ばれるなか、沖縄スタディツアーは法律実務に携わる者として、法律と人権の結びつきについて再確認する絶好の機会だと思うので、近い将来ぜひ参加したいと思っています。
伊藤塾で得たもの
伊藤塾では、基本事項、重要論点を反復して学習してきたので、実務で実体判断、手続判断がとてもスムーズにできていると思います。中には難しい事案もありますが、前述したように、そのような時でも伊藤塾の教材を使って知識を再確認しています。それから、伊藤塾で仕事と両立しながら一生懸命勉強してきたので、仕事のスケジュールがきつくてもまったく苦になりません。勉強だけでなく、精神的に も肉体的にも伊藤塾で鍛えてもらったおかげだと思っています。
これからのビジョンと受験生へメッセージ
誰からも信頼される、誰からも気軽に依頼される司法書士を目指して頑張っていきたいと思います。事務所を開業して間がなく、仕事が軌道に乗るまで大変だとは思いますが、一つひとつの仕事をきちんとこなしながら人々の信頼を得て、さらに邁進していきたいと思います。
司法書士という職業は、これからますますその職責と役割が増していきます。仕事の範囲もますます拡がっていくことは間違いありません。司法書士試験は難しい試験です。辛くて苦しいことがあるかもしれませんが、負けることなく合格を勝ち取ってほしいと思います。司法書士試験受験時代に培った経験は、実務に携わってからもきっと皆さんの糧となることでしょう。
それから、受験時代から「考える」習慣を身につけておいてください。実務に携わってからは、常に自分で「考えて」事案を処理していかなければならないのです。皆さんが憲法の理念を大切にした司法書士として私達の仲間になる日を心から待ち望んでおります。
(2007年8月・記)
老舗商店の様な馴染み易い事務所外観
■業務内容
不動産登記(相続登記、売買登記、贈与登記、担保権抹消登記)、商業登記、成年後見、法律相談など
■住所
〒717-0013
岡山県真庭市勝山179番地
■現在の「ある一日のスケジュール」
7:30 起床、柔軟体操
8:00 TV鑑賞、朝食
8:30 会計処理
9:00 事務所開店
9:10 申請書類作成、整理後法務局へ
9:20 法務局で書類取寄せ
11:00 事務所に戻り、書類の整理。
11:30 金融機関に登記申請の書類交付要請書郵送
12:00 昼食
13:00 市役所で書類取寄せ
14:20 不動産現地調査
16:30 事務所へ帰宅
17:00 学習塾の用意
18:00~ 学習塾
21:00 帰宅