40歳を超えてキャビンアテンダントからの大転進!~大川朗子先生の転進ヒストリー~
大川法律事務所 大川 朗子 先生
【大川先生のキャリア ヒストリー】
1978年 京都女子大学短期学部英文科卒業。
同年、大手航空会社に客室乗務員として入社。
1997年 結婚、出産を経験しながらも、フライト時間1万時間を達成。
1998年 20年勤め上げた航空会社を退社。
夫の開業した大川法律事務所で事務員として勤務を開始。
2006年 司法書士試験合格。
司法書士登録。
2008年 簡易裁判所代理等能力認定考査合格。
現在、大川法律事務所にて司法書士として活躍。
大阪司法書士北支部理事、社会福祉法人よつば福祉理事法テラス対応委員会委員などを務める。
『航空業界の花形、キャビンアテンダント時代 その1』
客室乗務員時代は、働きながらの結婚、出産、子育てを経験しました。
キャビンアテンダントというと、一見華やかな仕事と思われがちですが、実は体力勝負のきつい仕事です。
子育てと仕事を両立できるか不安でしたが「働き続けたい」という気持ちが勝っていたし、家族の応援もあって、続けることができました。楽しいこともたくさんありましたが、辛い経験もしました。長男出産後、仕事に復帰した頃、会社は労使問題で揺れていて、職場もギクシャクしていました。
そんな中で、私は労働組合のお役を引き受けることになり、会社は同僚の態度は一変してしまいました。
『航空業界の花形、キャビンアテンダント時代 その2』
かつてキャビンアテンダントは若年退職制、妊娠退職制の定めがあり、働きたくても働き続けることができない仕事でした。それが、労働運動のおかげで、育児休暇をとって職場復帰ができる制度になり、私はその恩恵にあずかっていたんですね。だから組合活動を手伝ってと頼まれたとき、無下には断れなかったんです。
出勤しても挨拶さえしてもらえない、外泊の時、皆で一緒にいく食事も誘われない、そんなことが10年続いて、あるとき、体調を崩して入院しました。退職の前年のことです。
その時の私は精神的にも肉体的にも限界で、お客様をお迎えするのにふさわしい、“華”を維持する自信がなくなってきていました。この時、ちょうど40歳。
弁護士である夫の独立も決まっていたし、キリがいいということで、「しばらく夫の法律事務所を手伝いながら、新しい仕事を考えよう」と、退職を決意しました。
『司法書士への転進-苦難の受験時代』
夫の事務所で働きだしてからは大変でした。デスクワークをしたこともなかったし、法律用語も分からないし。一生懸命調べながら、あっという間に2年が過ぎました。
そうやって働くうちに、法律というものは自分を守ってくれるものなんだ、ということを実感しました。「法律事務所に相談しに来て、法的救済が受けられた」という人を日常的に見ているうちに、自分も法の力を借りて、人の生活や人生をサポートする仕事をしてみたい、 と思えたんです。
そして、どんな資格がよいか調べ、学歴に関係なく受けられる司法書士試験を目指すことにしました。
当時は本当に忙しく、やるべきことがたくさんある中で勉強していたので、とにかく使える時間は使おうと思っていましたね。台所に立ったら講義のテープを聴いて、お風呂でテキストを読んで。
私は、7回目の受験で合格したのですが、「言い訳はしない」と腹を決めた年に受かりましたね。 どんな人でも100%受験に打ちこめるわけではない。「毎日10時間勉強できる人はいいな」って言ったって、自分の持っている時間の中でやるしかないんですよね。
『人間としての、真価が問われる仕事』
法律家は、法律に長けているということはもちろん必要なのですが、自分自身の真価を問われる深みのある仕事だと思うんです。
法律家の仕事は、依頼者の思うように解決できない場合もあります。解決できた場合はたいていの依頼者は感謝してくれますが、そうでない場合にも、「よく頑張ってもらいました」と言ってもらえるかどうか。法律だけではなく、自分という人間そのものが問われる仕事なんです。
先日、司法書士になりたての頃に受任した依頼者の方から、お手紙をいただきました。
病に倒れた連れ合いの方の債務整理、その方がお亡くなりになった後の相続放棄の手続きといった事件でした。
当時、ご依頼者は、いろいろと心労も重なっていらしたようでしたが、いただいた手紙には「法的な力のすごさを目の当たりにし、今は静かに平安な日々を過ごしています」とつづられていました。
私にとっては受任事件の一つにすぎなくても、依頼者の方にとっては人生の一大事であることが少なくありません。法の力で自らの人生を切り拓くお手伝いをさせていただけるこの仕事に、私は誇りと大きな責任を感じています。
『人生経験を活かして、依頼者の思いに応える』
大学卒業後すぐに士業を始める人たちを否定するわけではもちろんありませんが、人生経験を積んでいることは、必ずプラスに働くと思っています。
例えば、私は子育ても経験しているし、夫の両親と同居してきたので、同じような境遇の方がどれくらい大変かがわかる。
人の気持ちがわかる、立場を思いやれるという面で、人生経験が活かせるんです。
打合せは、法律の話ばかりするわけではないんです。
依頼者は、何が法的に必要なことかがわからないまま話し続ける方も多い。でもそれはご自身にとっては重要なことなんですね。そこで、辛抱強く聴けるかどうか。
司法書士によっては「それはもういいですから、関係ないですから」と遮ってしまい、依頼者を怒らせてしまったり、がっかりさせてしまったりする。
むしろ、ふとしたときにどれくらい世間話をすることができるかが大事なんです。
依頼者も親近感を持ってくださるし、話しやすい司法書士だと感じたら、こちらを思って話してくれたりもする。
そうした言葉のキャッチボールをするというのは、やはり人間としての経験がものをいうと思うんですよね。
『ライフスタイルに合わせた業務が可能』
司法書士はライフスタイルに合わせて働くことのできる仕事だと思います。
最近、独立して仕事を行っていた司法書士の友達が、出産を控えいったん事務所をたたんだんです。育児の方に力点を置きたいということで。そして今は自宅を事務所に登録して、無理のない程度に仕事を請けています。そういう働き方もできるんですよね。
企業で働いている場合は、自分で勝手に仕事を少なくしたり、今日は子どもの学校行事を優先して、といったことはなかなかできません。法律家は仕事量を調整しながら、子育てもやっていける。特に司法書士の場合は自宅を事務所にしている方も多くて、事務員がいなく
てもひとりで行うことが可能です。
女性の場合、「結婚、子育てと仕事が両立できるんだろうか」って必ず考える
と思うんです。その点司法書士というのは、両立がしやすいと思います。仕事をする以上は、我慢しなくてはいけないこともあるし、無理しなくてはならないことは当然出てくるけれども、それを自分の裁量でできるということですよね。
よくあるのは、不動産取引などで日にちが重なること。こういったときに、他の司法
書士に頼むことができる。弁護士だと、裁判の期日にその日は別の弁護士、というわけにはいかない。でも司法書士だと、仕事の性質上、代打を頼める場合が多いんです。
先の友達が出産する時にも「私ができなかったらお願いしていい?」って言われたりしましたね。そうやって仕事の量を自分で調整できる、裁量が大きい仕事です。
『大川先生のある一日』
今回は、大川先生のある1日をご紹介します。
司法書士の1日がどんな1日かをお知りになるきっかけになると思います。
9:30 事務所に出勤。まずはメールチェック、業務確認を行う。
・大川先生のコメント
朝は起きてから朝食を作ったり、食事をします。
出勤時間は早くはありませんが、そのぶん遅くまで業務に就きます。
10:30 不動産取引決済
12:30 申請を済ます
・解説
不動産関係業務は、司法書士の業務の中心的分野。
司法書士は、不動産売買の代金決済の場に立会い、代理人として
登記申請を行います。
不動産には素人ではわからない複雑な権利関係が生じていたりす
るもの。不動産取引のプロである司法書士の立会により、依頼者は
安心して所有権を譲渡、取得できます。
13:00 昼食
・大川先生のコメント
外食は量が多くなってしまうので、普段はお弁当が多いです。
この日は特別…。
14:00 法律相談。書類の整理・作成など
・解説
裁判所に提出する書類の作成も、司法書士の中心的業務のひとつ。
様々な書類を作成します。また、認定考査試験に合格すると簡易裁
判所の訴訟代理を行うことができます。
・大川先生コメント
大川法律事務所では労働事件を多く扱っているため、依頼者との打
合せが18時以降になることが多く、20時から21時まではたいていの
場合は事務所にいます。
20:00 例会、研修会、飲み会、など
・大川先生コメント
今は時間があれば社交ダンスに行っていますね。
息子に勧められて、スクールに通っています。
22:00 帰宅
今回は、以上となります。
『司法書士の職域は拡大している』
かつて、司法書士の業務はほとんど登記だったと思います。今は登記以外の仕事の方が多いという先生側もおられ、業務の幅は本当に広がっています。
高齢化社会を迎え、親子・親族関係が希薄になる風潮もあり今後、成年後見の制度を利用される方もますます増えることでしょう。成年貢献業務において司法書士が果たす役割、期待は今後ますます大きくなっていくと思います。
また、私は月に一度、法テラスの情報提供職員としてご相談者の電話を受けていますが、法的知識はもとより法律家へのアクセスがなくて困っていらっしゃる方が、本当にたくさんいらっしゃることを実感します。
弁護士は、大都市や裁判所近くに集中する傾向がありますが、司法書士は街の法律家として、予防的司法の役割を含め、役に立っていける仕事だと思います。
『これからの法律家に必要なこと』
弁護士の就職難、などといわれていますが、司法書士も今、過渡期だと思います。
資格を取ったからといって食べていける時代は、弁護士も司法書士も、終わったのではないでしょうか。
結局は「人」なんです。
やる気がある、明るい、話しやすいなど、要するに総合的な人間力がないと、どんな仕事だって成果を上げることは難しいですよね。
基本的なことを言えば、目を見て話せない人は駄目。得ばかりしようと思う人も駄目です。
自分が損な役回りをしたなというときでも、どこかで埋め合わせは来る。そういう考えを持たないと士業に限らず、食べていける基盤はつくれません。
また、素直に「ごめんなさい」と言えるかどうか。夫いわく、「わからないことをその場で、わかりませせんと言えるかどうか。次までに調べてきます、と素直に言えるようになってようやく一人前」。わからないことを恥ずかしいからと隠したり、間違ったことを言ったりするほうが罪が大きいんですね。
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■ 事務所プロフィール
大川法律事務所
大阪府大阪市