簡裁代理権を積極的に活用 法廷活動で厚いサポートを実践
鈴木奈加子 先生 (司法書士)
■Profile
2004年 司法書士試験合格
2005年 簡易裁判所訴訟代理関係業務認定
現在独立・開業し、認定司法書士として都内の事務所にて奮闘中
簡裁代理権を取得しようと決めたきっかけは、どんなことですか?
司法書士試験に合格した後、何かの機会に、簡易裁判所の被告側となる人のほとんどは代理人の付かない本人訴訟で、民法などの法律知識や欠席した場合の扱いなどの裁判手続の理解が乏しいため、不利な状況のまま裁判が行われていると伺い、自分が簡裁代理権を取得することにより、少しでも、そのような方の役に立てるのではないかと思ったからです。
簡裁代理権を取得しておくと、どのようなことができるようになりますか?
簡易裁判所において、弁護士同様に、訴訟代理人として、弁論、証人尋問、和解等の法廷活動を行うことができます。
特に、多重債務事件については、代理権の有無が大きいと思います。と申しますのは、簡易裁判所の訴訟代理権を持つ司法書士が、消費者金融などの業者に対し、これから債務整理を行う旨の介入通知という書類を送付し、受領されると、その後、それら業者は、本人に対する問い合わせや督促手続などをしてはならないということが法律で決められています。多重債務を抱える方は、月々の支払いの方へ全て心を奪われ、冷静になって物事を考えることができません。そのような依頼者にとって、この介入通知が送付され、業者からの問い合わせや取立てが止まると、冷静になってもう一度、今の自分や今の生活、これからの生き方等を見直す機会ができ、問題解決への第一歩を踏み出すことができるからです。
簡裁代理権を実際に活用された案件について、教えてください。
ある時、法律扶助協会(現在は、法テラス)のパンフレットを見たという女性からお電話をいただきました。この方は、60歳を超えていて、周りには相談する親族等もおらず途方にくれていらしたようです。内容を伺うと、全くの言いがかりで、急に損害倍書を請求され訴えられているけれど、どうしたらよいかわからないということでした。
裁判では、訴えられた被告側は、答弁書(訴えに応じて被告側が最初に提出する書面)を裁判所に提出せずに、第1回の口頭弁論(裁判期日)に欠席した場合、たとえ、その訴えが言いがかりであっても、訴えどおりの請求が認容されてしまいます。
今回の事件では、第1回の口頭弁論(裁判期日)も迫っており、答弁書の提出期限も後3日という時期でした。そこで、まず、依頼者と面談により詳しく事情を聞き、相手側から送付されてきた書類を預かり、本件について代理人となる契約を結びました。その後、すぐに、裁判所に代理人の届けを提出し、提出書類については期限の猶予を得て、そして、第1回口頭弁論当日には、訴訟代理人として法廷に立ちました。
最終的には、原告の訴えは全く受け入れられないだけでなく、二度と同様の訴えができない旨を和解という形で決着をはかりました。この和解条項についての交渉は、全て訴訟代理人である私と相手方及び司法委員で行いました。
今回の事件において、依頼者の方からご相談をいただき、また、事件を解決でき、本当に良かったと思います。
簡裁代理権を取得していて、良かったなと思うときはどんなときですか?
上記Q2のような多重債務を抱えられた方やQ3のように裁判でどのようにしてよいか分からなく困っている方の問題を解決でき、多少なりともその方たちの助けになっているというのが、取得してよかったと思うときです。
今後、簡裁代理権をどのように活かしていきたいですか?
司法改革により、これから、弁護士が増員されることに伴い、簡易裁判所でも、弁護士が代理人として登場する機会が増えていくのではないかと思います。
しかしながら、世間一般の方は、コミュニケーションや相談料などの問題から、弁護士に相談に行くのは敷居が高いと感じている方が多くいます。そういう多くの方が、気軽に相談・アクセスすることができる「場」として、機能できればと思っています。