次にやる仕事は、人にためになる仕事がしたいと考えるようになりました。
山本裕將司法書士事務所 山本 裕將先生
■Profile
1956年 石川県生まれ
1980年 工学部電子工学科卒業
2008年 司法書士試験勉強開始
2013年 司法書士試験合格
2014年9月 簡易裁判所訴訟代理権取得。
2014年11月 石川県野々市市にて開業
いつから「セカンドキャリア」について考えるようになりましたか?そのきっかけは何ですか?
リストラの嵐が吹き始めた頃、会社から、今退社すると下記金額が退職金として割り増し支給します、との通知が一定年齢以上の社員に届いたときです。
なんだ。自分の会社での価値は、こんな数字で表せるのか、と空しくなりました。
技術者としてのやり甲斐、楽しさを感じていただけに、残念でした。
仕事への情熱がその後、急速に失われていきました。
次にやる仕事は、人にためになる仕事がしたいと考えるようになりました。
「セカンドキャリア」の中で、司法書士を選んだのはなぜですか?
会社を退職した人から、司法書士試験の勉強をしているとの近況報告があり、その方の会話で「試験問題を解く」と話されたのに、引っかかりを感じました。私は、生粋の技術者であり、数学の方程式を解く、ならわかります。しかし文系の試験で、問題を解くとはどうゆうことなのか?不思議に思ったのが、司法書士への関心のはじまりです。
司法書士が登記を代理する人であり、後見業務を行っており、簡裁訴訟代理権と言うのがある、とその後知りました。
会社の退職をし、その後の人生をどうするか考えたとき、地元へ戻って実家の両親の側でできる仕事、となると職種は自ずと制限されてしまいます。その中で、資格として司法書士をとることで、自分の納得できる仕事もできるのではないかと考えました(父は一回目の受験直前の4月、交通事故で亡くなりましたが)。
これまでのキャリアから司法書士試験受験へとシフトチェンジするにあたってどのような気持ちの切り替えがありましたか?
これまで培ってきた、物理、化学、数学等の知識がまったく役に立たない世界であり、法律の勉強などやったことがないわけですから、新しい世界へ飛び出していく新社会人と同じです。わくわくした気分と、どのような世界なのかの不安の中で司法書士試験受験生活をスタートしました。
これまでのご自身の経験や専門能力が司法書士の業務に活かされていると感じるのはどのようなときですか?
技術者として働いてきて役に立っていることは、PCに詳しいことです。その頃、苦手だった、現場の監督者との交渉等の経験は、お客様対応で役に立っているかなと思うことがあります。
受験勉強期間の母の大けが(父の死亡自動車事故で同乗)、その後の入院、介護認定、リハビリ病院選定、ケアマネジャー選び、介護計画の作成協力、デイサービスの施設訪問と選定、自宅療養等の様々な経験は、後見業務で役にたっています。
試験勉強において年の功で有利と思ったのは、憲法の過去の判例等を新聞で読んだ記憶があると言う程度です。過去の知識の蓄積が試験に有利になることは、残念ながらほとんどありませんでした。たぶん記憶力では圧倒的に10代~20代の人が有利ですし、この試験は、ハンディキャップレースだなとうらめしくさえ思いました。
ただ、自分にはこの試練(もう無理と諦める気持ち)をなんとか乗り切れる、と言う自信だけはありました。まったく根拠のないものであることは自分でも十分自覚しています。しかし、それは、30年近く技術の仕事をしてきたこと、その間、トラブルや困難に対して決して逃げ出さなかったし、一生懸命取り組んできたという、自負であり、自信を背景にしたものです。これまでやってこられたのだから、この程度のことは出来るはず、という信念から生まれたものです。
たぶん10代~20代の自分には無く、今の自分にあるのはこの自信であり、合格まで頑張ってこられた原動力です。別の見方をすると、私が合格できたのは、自分にはできるはず、という中年おじさんの一途な思い込みの結果だったのかもしれません。
セカンドキャリアとして司法書士を目指そうと考えている方へのアドバイスをお願いします。
司法書士試験を一通り勉強すると、世の中の仕組みがわかってきます。例えば、ローンを組んで抵当権を付けた土地。この仕組みを理解するには、民法であり不動産登記法が必要です。このローンを返せないと、民事訴訟法、民事執行法の出番であり、民事保全法、供託法が関係する場合もでてきます。ローンを組む相手方が会社なら会社法、商業登記法が関与します。このように民事の事件の概要が司法書士試験勉強で一通り勉強できます。
また、これから私たちの年齢で直面する、親の世代の、相続や後見の問題の法律的側面も勉強できます。
司法書士試験の科目は、試験合格のためだけの勉強ではなく、実務に直結したよく考えられた試験科目である(蛭町講師談)と私も思いますし、この試験勉強が今後の人生に無駄になることはないと思います。
試験勉強について話します。
入門講座を受け始めた当初は、講義内容に対して謙虚に耳を傾けるのですが、勉強方法のアドバイスは、ほとんど無視していました。学生時代の勉強方法である、講義内容をノートにとりこれを暗記していくという、復習方法で勉強を進めました。これは、若い講師(山村講師)に勉強方法の指導まではしてもらう必要はない、というプライドからだった思います。しかし、この学習方法では、講義の理解の効率が悪く、とても講義のスピードに復習理解が追いつかず、勉強方法の変更が必要と判断するのに、さほど時間がかかりませんでした。その後は、この若い講師の勉強方法の全面採用で、ようやく講義について行くことが出来ました。
これは、私のように年齢を重ねた者が陥りやすい、経験にもとづく自信と表裏一体の、頑固さという、性格の弊害だなとは、後になって、反省したものです。
まずは受け入れて従ってみるという、謙虚さ。中年おじさんにはなかなか難しいのですが、この謙虚さがこの勉強には必要かと思います。
私が、伊藤塾で山村講師はじめ多くの方々から学んだ勉強方法を具体的に示します。
・蛍光ペンを使って、教科書を見やすく作り上げる
・索引を机の前にはって、今どこの講義が常に意識する
・復習は、過去問を解いてからテキストに戻り確認する
・リンクを張る(比較を意識する)
・ペンキ塗り(とにかく繰り返すこと)
・テキストと過去問の往復
・絞り込みと繰り返し
・鮮明な記憶、鮮やかな知識
・ゴールからの発想
これらは、私が実際に勉強方法として取り入れた項目です。司法書士に合格するための講義とともに、どのような勉強方法で試験勉強を乗り切っていくかも教えていただいたことに、心から感謝しています。私のようにまったく法律を勉強したことがないのもが合格出来たのは、これらの勉強方法を知り、実践できたからだと思います。
セカンドキャリアを見据えた場合の、今からすべきことは何ですか?
1年間続く伊藤塾入門講座について行くことさえ、大変な努力が必要ですし、簡単に合格できる試験ではありません。相当の覚悟と勉強が必要ですし、ご家族の協力は不可欠です。
セカンドキャリアとして何を望むのかをよく考えて、ご家族とともに、その目標をめざして、進んでください。
私が今考えているセカンドキャリアの目標です。
司法書士のキャッチフレーズは「町の法律家」です。悩み事を気楽に相談できる人です。わたしがイメージするのが、落語によくでてくる
「世間の事を人よりちょっと知っている、もめ事をうまく解決する、世話好きなご隠居」さんです。もちろん、ちょっと知っているぐらいでは、プロとして失格ですから、司法書士になっても、勉強は続けていますが、このような司法書士になりたいと思います。
夢に向かって進んでいくことは、つらいことも多かったですが、それだけで幸せなことだと今、思っています。