自分の名前で勝負できる弁護士になるために
相原健吾先生
経歴 2012年 関西学院大学高等部卒業
2015年 関西学院大学法学部卒業
2015年 関西学院大学法科大学院修了
司法試験合格
2019年 神戸合同法律事務所入所
※先生の所属事務所等プロフィールは、取材時のものです。
相原健吾弁護士インタビュー動画 ~法律家を志す皆さんへ向けて~
弁護士、司法試験を目指そうと思ったきっかけですが、大学2年生の時に、公務員になろうか一般企業に就職しようか資格を取ろうかと迷っていた時に、キャリアガイダンスというところで弁護士の方が講演をしてくださる機会がありました。女性の弁護士だったのですが、気さくな方で「こういう弁護士像もあるのか」と感じました。それまで弁護士というと、「堅苦しい」「少し怖い、難しい話ばかりしている」といった印象があったのですが、話を聞いてイメージが崩れましたね。そこで、資格をとって弁護士になるのもいいかなぁと思い始めたのがきっかけです。その弁護士の先生のお話で、「お金を貰い、かつ『ありがとう』と言ってもらえる仕事はそんなに多くはない」というのが印象に残っています。法律は難しいですが、最終的に解決した時の依頼者の顔つきや、「ありがとう」という言葉が一番の報酬だという話をされていて、それに心を打たれました。
高校生の頃はスポーツ少年でした。サッカーを小さい頃からやっていたので、本当に勉強はそこそこでスポーツ中心の人でした。法律にはそこまで興味もなかったです。大学に入って興味を持ちました。受験指導校選びの際、伊藤塾を選んだ理由として、長い期間しっかり教育をしている大手というのもありますが、やはり伊藤真先生の話を聞いたのが大きいです。大学など色々なところで講演に行っていると思うのですが、その時の伊藤先生の言葉がかなり胸に響きました。「やればできる、必ずできる」と何度か励まして頂きました。
司法試験に合格した後、就職先を考える際、まずは色々な事件を取り扱っている事務所に入りたいなと思っていました。特に私の在籍する神戸合同法律事務所は人権活動、社会的に意義のある活動にも力を入れているということで、色々な事件を担当することができるというのと、そういった社会貢献活動もできるという基準で今の事務所を選びました。
現在の仕事内容ですが、基本的には交渉であったり、訴訟であったりの事件を担当することが多いかなぁというところです。事件の種類としては一般民事で、個人のお客さんが多いです。離婚や相続、労働者側の労働問題や交通事故の被害者側など、色々な事件を担当しています。
先程お伝えした人権活動についてですが、興味を持った大きなきっかけとしては、大学時代、「現代の人権」という授業がありました。現役の弁護士が毎回講演に来てくれる授業だったのですが、特に過労死問題についての授業を受けた際、遺族の方の声を生で聞いて、「これは法律家がなんとかしなければならない問題だ」と感じ、人権活動をやってみたいなと思いました。
したがいまして、過労死に関する弁護活動や、過労死110番というのも今担当しています。
弁護士の仕事と言えば法律を扱うことが中心になるのですが、特に過労死に関する問題というのは遺族の方による「過労死を考える家族の会」という団体もあったり、社労士たちが関わる分野というところもあります。自分の職業以外の方と話をしたりする中でなかなか法律だけではない、感情面や気持ちのところを弁護士として寄り添っていかなければいけないと日々実感していて、非常に勉強になっています。その際、まずは傾聴を心がけています。どんな話でも聞くというところは意識しています。中には法律的には解決できないとか、難しいという場合もあります。もちろん「できません」とはっきりいうのも大事だとは思うのですが、まずは話を聞くようにしています。目の前にいる方が何に困っていて、どういう問題があるのかというところをまずは聞くように心がけています。どうしたらいいかわからないということで困っていて来られる方が多いので、次にどういう行動をするのかを示すようにしています。例えば「手紙を送ってみたらどうですか?」「こういうところに電話をしてみたらどうですか?」とか、或いは裁判をするのであれば流れを説明して、判断してもらったりしています。
相談ひとつとっても感謝の言葉を依頼者からいただくことは多いのですが、弁護士になってから印象に残っていることとしては、裁判では負けてしまった事件があったのですが、弁護士がつく前は相手方が全然動かず、裁判をして事実が明らかになって事態が動いたということがありました。結果としては負けたということなのですが、依頼者の方から「自分で納得がいった、ありがとう」と言葉をいただいて、それがすごく印象に残っています。
その裁判は労働事件で未払い賃金の話だったのですが、本来の就業時間より早く職場に行って、そこで掃除をしたりするルーティーンがあるというご相談でした。そのような「ありがとう」という依頼者さんの言葉に私は強くやりがいを感じます。「ありがとう」と言ってもらえることも多いのですが、それ以上に最初に相談に来られた時、悲しそうな、困ったような顔をしていて、「なんとかお願いします」と言っていた方が解決した時に心が晴れたのか、明るく穏やかで、笑顔が戻ってきている様子を見ると嬉しいです。最後無事に終わって挨拶に来ていただいたりした時の表情を見ると、法律の問題だけでなく気持ちの面でも解決できてよかったなぁと思います。
心に残る言葉として、「未来とは他者である。」という言葉があります。大学時代の先生からいただいた言葉です。今大学時代を振り返ってみると、大学入学当時は、まさか自分が数年後弁護士になって働いているというイメージは全くなかったので、過去の自分からしたら将来の自分というのは「他者」だなぁと。自分ではない人のようだと感じます。弁護士をしていて思うところですが、相談に来られた方が、「亡くなったお父さんに借金があってどうしたらいいでしょう?」というようなことがあります。要は相続放棄をすればいいだけなのですが、一般の方はそういうことをご存知でない方もいまして、それを一言伝えただけで「救われました」ということになり、気持ちが変わっていきます。相談ひとつ行くか行かないかで、未来が変わってくるというところで、やはり「未来とは他者」だなぁと思うところです。「未来とは他者である」という言葉が非常に心に残っています。
受験生時代の基礎マスターというテキストは私のバイブル的なものになっています。もちろん実務では実務の本や基本書を引きますが、わからないところを基礎からテキストを読んで復習することもあります。憲法とかの話になりますが、各講師の方が「世の中にこういう問題があって、憲法的に考えると…」ということを授業の中で話していたことを「あの時言っていたのはこういうことだったんだ」と思ったこともあります。
当時は刑法が得意で行政法が苦手でしたね。刑法は論理的な要素が強いので、説と説の対立があって、相手のことを知れば自分のことがわかります。自説を知るために他説を勉強して、より自分の説の学習が深まるというところが自分に合っていたのかなぁと思います。その考え方が民法の問題や、司法試験での自分側と相手からの反論を考えたりする時に活かされました。
法律家に求められることとして、依頼者に寄り添えることが大事だと思います。我々の仕事は依頼を受けなければ始まらないというところはあるので、依頼をまずしてもらえるような方であるかというところと、依頼を受けた後、ある程度の付き合いになるので、依頼者の言い分をしっかり聞いてそれを主張し、法律的な文章にできるかという能力がまず必要です。あとは粘り強く続けられるかというところですね。司法試験の勉強というのはそれだけの時間と量がかかりますので、粘り強くできるかというところはありますし、もちろん実務においてもたくさんの証拠が出てきて、その中から何か見つけられないか考えるといった作業があります。非常に地味と言ったらよくないですが、受験生が思っている以上に地味な作業は多いので、そんな中で粘り強く挑むことができるかというのも法曹に求められていると思います。
私自身小さい頃から勉強ばかりしていたわけではなく、小さい頃はスポーツとかをしていましたし、受験生時代もただ勉強していたというわけではなくて、サッカーをしたり、色々な交流の場に行ったりしていたので、本を読むという勉強だけに囚われずに色々なところに足を実際に運ぶのがいいのかなと思います。学生時代に知り合いの弁護士さんがいたので、事務所訪問に伺ったりしたり、裁判の傍聴をしたりもしました。実務がどう進んでいるのかを間近でみられたのは大きいと思います。私が傍聴したのは刑事事件の裁判だったのですが殺人未遂で、被告人質問のところで弁護人のストーリーを聞いていて、当時被告人はこういった感情でこういうことをしたんだなぁ…ということが分かって、文面だったらただ「人を殺そうとした」というだけかも知れませんが、彼の中にはこんなストーリーがあったのだと。そういったストーリーを裁判官にわからせるのが弁護士の仕事だと傍聴を通じ分かったこととして、非常に印象として残っています。
今後についてですが、今は10人くらいが在籍する弁護士事務所なので、うちの事務所の名前で依頼を受けることが多いのですが、基本的には弁護士個人の戦いというか、専門職なので、自分の名前で「あの弁護士だったら大丈夫だ」と思っていただけるような弁護士になっていきたいです。以前依頼された方より、「あの弁護士ならなんとかしてもらえる」と他の方に紹介してもらえるなど、自分の名前で勝負できる弁護士になりたいと思っています。
弁護士を目指すとなるとそれなりに大変だとは思うのですが、今非常に色々な弁護士がいますし、人間性が問われているところです。自分が向いているか向いていないか考えると思うのですが、そうではなく、弁護士になった後に特色として自分の良さを出していければと思うので迷っているのであれば是非勉強を始めてみて欲しいかなぁと思います。
神戸合同法律事務所
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