文学部卒、航空会社からの転身!難民申請者を目の当たりにして。
平田佳広先生
経歴 2002年 東京都立戸山高等学校卒業
2007年 早稲田大学第一文学部総合人文学科西洋史学専修卒業
(株式会社JALスカイでの勤務を経て)
2014年 千葉大学大学院専門法務研究科修了
2017年 司法試験合格
2018年12月 最高裁判所司法研修所 司法修習修了
2018年12月 弁護士登録
※先生の所属事務所等プロフィールは、取材時のものです。
平田佳広弁護士インタビュー動画 ~法律家を志す皆さんへ向けて~
私は、弁護士になる前は、航空会社の旅客系総合職として、成田国際空港で仕事をしていました。空港内の色々な部署で仕事をする機会があったのですが、その中でも入国審査の近くで旅客の対応をすることもありました。旅客には様々な背景を抱えた人たちがいました。観光やビジネス目的でやってくる人が大半でしたが、なかには母国での政情不安等によって身の危険を感じ、日本に難民申請をしに逃れてくる人もいました。そのような人たちは、着の身着のままで来ていますし、日本の法律もほとんどわからない状態でしょうから、難民申請の手続をうまく行うことができない場合が多かったようにみえました。そして、難民申請の手続を行うことができずに、そのまま送り返されてしまう場面も目の当たりにしました。私は、あくまで民間の航空会社に所属する者にすぎませんでしたので、できることといえば、難民申請しようとした人たちを帰国便の飛行機に乗せる手続をする程度で、更に一歩踏み込んで手助けするといったことはかないませんでした。このような現実に直面する中で、困っている人を法律によって支援することの重要性を実感し、弁護士になることを決意しました。
私が弁護士になることを決意した当時は、ちょうど予備試験の第1回目が実施された時期で、予備試験制度の今後の展望などが明らかではありませんでした。ですので、私の場合は、仕事を辞めて法科大学院に進学することにしました。かなりリスクのある挑戦ではありましたが、弁護士の友人がいて、とても親身にアドバイスをしてくれたのが、大きな支えになりました。具体的には、その友人から、伊藤塾の講義はとてもわかりやすいというアドバイスを受けたので、さっそく伊藤塾の講義を受講することにしました。それに、友人が私の起案を丁寧に添削してくれたので、安心して勉強を進めることができました。また、友人からは、法科大学院の未修者コースよりも既修者コースに入学した方が、司法試験の合格率が高いのではないかというアドバイスももらいました。ですので、法律に関する予備知識が全くない状態から勉強をスタートしたものの、1年間で2年分の講義内容を早回しで受講して、法科大学院の既修者コースになんとか入学できることになりました。
私が現在所属しているのは、弁護士法人TKY法律事務所横浜オフィスです。弊所のモットーは、良質の法律サービスをリーズナブルに迅速に提供すること、相談者にとって身近な法律事務所であることです。私は、弁護士の接客業としての側面にも魅力を感じていましたので、より良い法律サービスをより身近にするという、弊所のモットーに共感し、入所しました。事務所の所在地は、横浜駅のすぐ近くです。横浜駅はたくさんの路線が乗り入れている、日本でも有数のターミナル駅ですので、相談者や依頼者も各地からお越しになります。具体的には、神奈川県全域はもちろんのこと、東京都や関東近郊のほかの県からもお越しになります。
取り扱っている案件は多岐にわたりますが、なかでもいわゆる一般民事の仕事が多いと思います。具体的には、債務整理、離婚、相続といった、個人の方を対象とした業務です。相談には、老若男女問わず色々な人が来ますので、航空会社の仕事で培った接客のスキルを、存分に活かせていると思います。
今後は、社会的に弱い立場に立たされている人たちの、力になれるような仕事もしていきたいと考えています。具体的には、高齢者・障害者の権利に関する委員会に所属していますので、高齢者の成年後見人としての業務等を行っていきたいと考えています。また、日本にやってくる外国の方々のために、出入国に関する申請取次等の業務も、行っていきたいと考えています。ゆくゆくは、日本への難民申請者の支援につき、プロボノ活動も行っていきたいと考えています。
弁護士業務の魅力のひとつとして、依頼者と直接かかわって感謝していただけることが挙げられると思います。弁護士に依頼するような方々は、法的トラブルに困り果てて、最終手段として法律事務所までお越しになっていることが多いと思います。依頼者の方々は、それだけ大きな悩みを抱えているのですから、仕事をするに当たっては気を引き締めて、責任を持って臨まなくてはいけないと思っています。そのような依頼者のトラブルを解決することで、普通に生活していたら言われないような感謝の言葉をいただくこともあります。「このご恩は一生忘れません」といった感謝の言葉をいただけることもあって、とてもやりがいを感じます。
弁護士業務で大変なことのひとつとして、法的問題の解決と依頼者の感情面への配慮のバランスをとる必要があることが挙げられると思います。法律の専門家である以上、依頼者の抱える問題を法的に解決することは大切です。ただ、一方で、依頼者の感情面にも配慮し、納得感・満足感をもって解決することも大切だと考えます。例えば、離婚事件の場合、法律的には、財産を分与して、未成年の子どもがいれば親権者を定めて、離婚するということになります。他方で、離婚するくらいですから、夫婦間で相応の感情的対立もあるわけです。そのような、感情的対立をどのように解決していくか、それも大事だと考えています。もっとも、依頼者の感情面の解決ばかりを考えていると、法的な解決を図ることも困難になるおそれがあります。このように、法的問題の解決を図りつつ、依頼者の感情面への配慮をすることも求められますから、そのバランスをとるのがなかなか大変ではあります。
私は、大学生の時は文学部の西洋史学専修に所属していて、法律の講義を受けたことはありませんでしたので、法律的な考え方も全く知りませんでした。そういった法律的な考え方も含めて、伊藤塾の講義を受講し身に付けることができました。例えば、一般的な規範に具体的な事実を当てはめて結論を導くといった、法的三段論法は、伊藤塾の講義を通じて初めて知って叩き込まれたのですが、それは司法試験のみならず、司法修習や今の仕事にも、まさに活きていることだと思います。法的三段論法をはじめとする作法は、弁護士に限らず法曹三者に共通するものですから、例えば訴訟での主張書面を作るときにも、作法にのっとったほうが読みやすく伝わりやすくなると思います。そのような作法についても、伊藤塾で勉強したことが活かせていると思います。
先ほどもお話ししたとおり、法律の専門家として正確な法律の知識に基づいて問題解決を図るのは大事な力だと思うのですが、併せて依頼者の感情面の問題を解決できる力を磨いていくことも重要だと思います。例えば、依頼者と円滑な意思疎通を図るためのコミュニケーション能力や、依頼者の悩みに寄り添えるような共感力といったものが、依頼者の感情面の問題解決に必要だと思っています。コミュニケーションや共感を通じて、依頼者との信頼関係を築くことで、感情面の解決にもつながると思います。信頼関係は、時間をかけて築いていくものだと思いますが、弁護士と依頼者の信頼関係は、まずは依頼者が相談者として相談にきて依頼するか決めるところが出発点です。相談者の方からしても、相談した弁護士が信頼できるかどうかを考えていると思います。あまり信頼できないと思ったらそもそも依頼しないと思うので、初回の相談の時点から、コミュニケーションや共感を通じて、相談者との信頼関係を築くことが大事だと思います。そして、相談者が依頼するに至った時点で、信頼関係を築ける素地はあるのではないかなと感じます。
この仕事は、法律知識のみならず、コミュニケーション能力など色々な力が問われるやりがいのある仕事だと思います。既に法律家を目指そうと思われている方は、現在も法律の勉強をしていると思うのですが、それ以外にも日常において人と関わること、例えば家族ですとか友人ですとか、そういった人との関係性も大事にしてコミュニケーション能力などを磨きつつ、備えたらよいのではないかなと思います。