法学部以外で学んだバックグラウンドは自分の個性そのもの
田中一軌先生
経歴 早稲田大学 第一文学部卒業
東京大学法学政治学研究科法曹養成専攻修了
泉総合法律事務所錦糸町支店入所
※先生の所属事務所等プロフィールは、取材時のものです。
田中一軌弁護士インタビュー動画 ~法律家を志す皆さんへ向けて~
弁護士を目指したきっかけですが、あまり大した理由ではないのですが、親が家族の面倒を見ながら生活していたのですね。親がその面倒を見るために会社を辞めて、それで仕事と家の両立で苦労していました。私は、将来的に家族を自分で持った時に不規則なというか、ある程度自由が利いて且つ収入が安定している職業を考えた時に弁護士というのは自由が利くと伺っていたものですから、そういう仕事を目指してみようかなと考えたのが、きっかけですね。実際に働いてみて、今のところすごく忙しくはあるのですが、ある程度メリハリというか自由が利く仕事ではありますので、そこは柔軟に働かせていただいております。
大学に入学するタイミングで、法学部に入ろうかあるいはその他の学部に入ろうかというところで、問題意識を持っていました。当時は、司法制度改革で様々な人が法曹界に飛び込んで欲しいという方向性がありました。そのような中、法学部には合格していたのですが、「異色の人になりたい」と若気の至りで思い立ちまして文学部を選択しました。学科は、物書きになるコースです。小説家ですとか、雑誌編集者のようなそういうものになる学科でした。司法試験とは無縁のところを選んで、自由に好きなものを勉強していたという感じですね。
他学部から司法試験を目指すにあたって、自分で基本書を読んでもよく分からず、いくら読んでも活字が頭の中に入ってこないので時間の無駄かなと思いました。そこで、効率よく勉強できるところがないかと思って、伊藤塾への入塾を決めました。
在学中に法律以外の勉強をしていたことは、とても役に立っています。もっと言うと、役に立たせないといけないと思っていまして、法学部出身の方と全く違うバックグラウンドがせっかくあるわけですから、それを活かせるような仕事ですよね。それを自分なりに見つけなくてはいけませんし、そこは自分の個性として打ち出していく部分だと思います。
当事務所は、弁護士の数が大体40人強おりまして、中規模クラスになるかと思います。扱っている分野としては、民事事件、刑事事件などほぼ全てです。入所していきなり全ての分野をやってくださいとはならずに、たとえば一年目の頃はまず借金問題だけやってみてくださいとなり、ある程度できるようになると交通事故ですとか、少しずつ自分のできる範囲を広げていくような事務所になります。
弁護士のやりがいを感じるのは、最近ですと、交通事故の案件です。交通事故って最近自動でブレーキがかかる機能がついたりしているので、全体の件数は減ってはいます。そうはいっても、まだバイクなどはそのような機能が付いていないので、車と違って身を投げ出されてしまうこともあり、結構大きな怪我を負われたりすることが多いです。そうすると、体を強く打ってしまって治療しても完治せず後遺症が残ってしまう方が時々いらっしゃいまして、そうすると深刻です。これからの生活がどうなるのかというのもありますし、加害者側の保険会社さんが色々と主張してきて、それでも話がまとまらないと調停や裁判にもなります。当然ぶつけてしまった側も色々話を聞きますし、こちら側も言うべきことはたくさん言うのですが、2年越し3年越しでようやく被害者側の主張が認められたときは金額も大変なことになりました。お客様の安心感というか、「やっと生活の見通しがたちました」とほっとされた表情を見て、「本当に頑張ってよかったなぁ」と思いましたね。泣くほど嬉しかったです。
交通事故の場合、後遺症は治療が終わった後に出てくるケースもあります。怪我をしていない側の腕などが、患部を庇っていたら傷んできたり、身体全体のバランスを崩して別の所まで痛くなったりするケースもあります。そうすると結構ややこしくて、交通事故が原因でどこまで痛みが発生したのかというのも、法律上の議論になったりしてきます。被害者側としては、「事故が起こらなければ、こんなことにはならなかったのだ」という主張ですが、加害者側もお医者様を味方につけて意見書等を出してきたりもします。加害者側から、「交通事故と当該症状との間に、原因結果の関係はないのだ」という書面が出てくると、被害者側としては、こちらの言い分に沿ったことを仰っていただけるようなお医者様を探して一筆お願いするみたいな感じですね。そうすると、すごく長引きますよね。
受験生時代に学んだことは、当然のことながら実務に直結し役に立ちます。特に、民法ですかね。毎日の実務で、日々試されているようなものですから。たとえば、借金問題で多重債務に陥ってしまった方が、相談にいらっしゃったりすると。クレジットカードの契約をしていて、そのカード会社は保証会社を付けたりします。そこで弁護士が介入して「お支払いできません」という連絡をすると、保証会社さんがクレジットカード会社さんの代金分を弁済します。債務は一旦消滅するのですが、債権債務関係自体が動くのでそこを理解していないと大変です。自分の勉強したことが日々試されている、というような感じですね。
実務に就いてからも、当時のテキストは今も飾ってあります。
私は、何にでも興味を持つタイプの方が法律家には向いていると思います。というのも、法律家をやっていると日々相談にくる方がいらっしゃって、興味を何事にも持つタイプの方であれば自分では最初よく分からないような法律問題であっても調べたりなどし、自分なりに解決方法を模索できる法律家になると思いますので。そうすると、法律家の醍醐味というか、法的な解決という目的を達成するのが法律家だと思うので、何事にも興味を持って調べようとする姿勢を持てる方が法律家に向いていると思います。
未知の分野は調べるしかないので、たとえば、事務所に入所した後で、不動産会社さんの顧問案件を任されているのですが、最初は私自身、不動産を買ったことがないので分からないことが多かったです。何が何だか分からない中からスタートして、修習中に知り合った方で、不動産の宅建業の方ですとか、あとは不動産鑑定士さんですとかに色々聞いて教えてもらったりしました。そういった形で、業界のルールなどを学んでいく、そこは日々勉強ですね。
法学部出身でない方であっても、しっかりと真面目に目の前の教材を信じて勉強を重ねれば、必ず試験には合格できます。それは、私でも合格できたので、断言できます。未修既修で合格率の差があることは私も重々承知していますが、未修で合格した人は相対的に数が少ないです。その分、自分しか経験していないことを実務で役に立たせることができますので、そういう意味での合格後の需要は、かなり大きいです。今お話ししたことではありますが、目の前の教材を信じることが、特に未修の方には大切だと思っていて、本屋さんに行くと色々な教材が並んでいて、どれを買ったらいいか分からないとは思うのですが、まずは自分の目の前にある一冊を信じていただいて、そこに注力していただくと。それを日々重ねていけば、必ず合格することはできますので、そこは強い意志を持って頑張ってもらえればと思います。