能力がどれだけ高くても、依頼者が理解できなければ「満足」には繋がらない
有木健人先生
経歴 2011年 慶應義塾志木高校卒業
2015年 慶応義塾大学法学部卒業
2017年 慶應義塾大学法科大学院修了
2019年 弁護士登録
LM総合法律事務所入所
※先生の所属事務所等プロフィールは、取材時のものです。
有木健人弁護士インタビュー動画 ~法律家を志す皆さんへ向けて~
大学に入学してから「弁護士を目指そう!」と思ったきっかけがありました。入学したときに、周りの人たちは漠然と「どこの業界で働きたい」だとか、「どこの会社に就職したい」というビジョンがあったのですが、私の中では「結局実際に働いてみないと何をしたいか分からないじゃないか」という考えを持っていました。そういった考えで全くビジョンが定まっていない中、企業法務の弁護士の方が講演会にいらしてくださったことがありました。そこで企業法務の業務内容を聞いていく中で、色々な業種業界と接点を持つことができるというお話を聞いて、自分に向いている仕事かもしれないと思ったのが弁護士を目指し始めたきっかけです。それは大学の授業でゲスト講師としていらっしゃったという感じです。大学の授業の中の一部ですね。そのお話の中で、扱っている業界としてはメーカーだったり、ちょっと特殊なエンタメ系の会社さんの企業法務をやっていますよという話があったりしました。一つの会社に就職するとなると、そこの業界のことを深く知れる良さはある反面、他の業界に携わることが少なくなってしまうのではないかということをぼんやりと感じていました。そこで企業法務のその先生が色々な業種の顧問をされている先生で、そういう働き方をすれば様々な業種のことを知れて、その中で自分のやりたいことっていうのが見出せるのではないかと考え弁護士を志望したということです。
私が所属するLM総合法律事務所は業務内容につき何か一つに特化しているというわけではなく、中小企業法務がメインではありますが、一般民事でも離婚、相続、交通事故、破産、それから刑事事件も含めて多種多様な業務をやっております。中小企業法務も各々の弁護士が色々な業種業界の顧問先を持っていることから、それこそ企業の業種業界に特化することなくさまざまな会社の顧問業務をしているというような感じです。自分に向いているものとか自分がやりたいことが一点に特化するというよりも、色々なことに携わっていく中で自己形成ではないですけれど、自分自身の仕事に対するスタンスが作られていくのではないかなと思いますね。将来的には何かに専門特化していくというのも頭の片隅にはあるのですが、ある程度ユーティリティ性を持って色々なことができるような弁護士になるというのが当面の目標とはなっています。
最近増えてきているのが、労働系のお仕事です。残業代だとか、コロナ禍の時期ということもありますから整理解雇とか、企業側の弁護に回ることもあれば労働者側の弁護に回ることもあるという感じです。労働系の訴訟でも資料が膨大になりますので、それを読み解く作業ですとか実務上の取り扱いがどうなっているのかというリサーチ作業での業務量的負担はかなり大きくそこが大変ですね。使用者側は苦しい立場に立たされることが多いので特に大変です。その辺りはどうディフェンスしていくか考えるのも大変さを感じています。
弁護士を目指し始めてから思っていたことなのですが、そもそもこの業界の頭の使い方が自分の性にあっていたと思います。いかに相手を説得させるような文章を作っていくかということを突き詰める、その学習が自分の肌に合っていて、それは実務家になった後も変わらないです。例えば訴状に限らずですが、原理原則から考えたときにはおおよそ難しいだろうという見通しの中で色々突き詰めて調べたり、頭を働かせる中で一つの糸口が見え、それによって依頼者の利益になるような解決方法を提示することができたときに弁護士としてやりがいを感じます。
伊藤塾で学んだことにつき、もちろんアウトプットの面で言えば、論文の書き方というのは直接的に訴訟における準備や訴状作成だとか、そういうものの起案の場合には直結していると思います。インプットの面でも、結局実務に出た後も依頼者の方が持ってくる案件によっては自分の知らない法分野が問題になってくる場面というのが多々あります。そうなってくると、日々知識のアップデートをしていかなければいけないと。そして、その知識のアップデートの仕方として学習の仕方、着眼点というのを受験生時代に伊藤塾で学べたことが、実務に就いて新たに法律を学ぶ上においても役に立っています。
民法は最近大幅に改正されてしまったのですが、反面変わってない部分もありますので、そういうところは伊藤塾の情報シートはよく重宝させてもらっていますね。
弁護士に求められる力ですが、基本的な法律知識とか論理的な思考力というのは前提になってくるのですが、結局クライアント、依頼者ありきの仕事になってくる以上、相手方の立場になって物事を考えられる力というのが一番求められると思います。法律の要望っていうのは一般人の観点から日本語とは思えないような難しいものが沢山あると思うのですが、それをそのまま依頼者に伝えてコミュニケーションをとって業務を進めていたとしても、多分依頼者は一切満足することはできないだろうと思いますね。その弁護士の能力がどれだけ高くてどれだけいい結果を出せても、それを依頼者が理解できなければ依頼者の満足に繋げることはできないので、やはり依頼者の方にどれだけ理解していただけるか、法律用語をどれだけ噛み砕いて分かりやすく説明できるかというところが依頼者や場合によっては交渉の相手方の立場に立って納得しやすいような形にすることを心がけることができる、そういう能力が一番大切なんじゃないかなと思います。
弁護士は自由なのが一番魅力的なポイントかなと私自身は思っています。それは先ほど申し上げた仕事の内容の幅広さだけではなく、働き方もそうです。反面、弁護士業務だけでいいというわけではなくて、会社に勤められている方々でいう営業活動とか、或いはマーケティングとしてどうやったら受任に繋がるかとか、そういうことも網羅的に考えてという意味では大変さもあります。反面、業務の広さに伴う面白さですとか自由度、或いは法律業務特有のやりがいもあるのでそのような意味では私自身弁護士になってよかったなというところです。