実務に就いた今も、戻る場所は伊藤塾テキスト
後藤亜由夢先生
経歴 2001年 弘前高等学校卒業 2007年 早稲田大学商学部卒業
2007年 公認会計士試験合格 有限責任監査法人トーマツ入所
2016年 早稲田大学大学院法務研究科修了
2017年 司法試験合格(租税法選択)
2018年 弁護士登録(東京弁護士会) / 都内法律事務所入所
2019年 東京スタートアップ法律事務所入所
※先生の所属事務所等プロフィールは、取材時のものです。
後藤亜由夢弁護士インタビュー動画 ~法律家を志す皆さんへ向けて~
私はもともと出身学部も法学部でなく商学部だったのですが、最初は公認会計士から社会人としてのキャリアを始めました。大学を卒業して、公認会計士として監査法人で4.5年働いたのですが、「仕事の幅を広げたい」という思いが強くなったのが、弁護士を目指した最初のきっかけです。やはり会計とか税務とかバックオフィスに対してサービスを提供する仕事というのは、必ず最後で法律にぶつかることになります。 監査をやっていても、例えば監査基準とか会計基準は分かるのですが、金融商品取引法などは会計士ですと分からないので、「弁護士に聞いてください」というように、会社の人にお伝えすることになってしまっていました。そのような事例はたくさんあって、法律の壁にぶつかっていくと、「これ自分で法律を勉強した方が早いのではないか」と思ったことがありました。
当時は20代後半ではありましたが、「法律を学べば会社に対してワンストップで色々なサービスを提供できるのではないか」。「法律も分かり、税務も分かり、会計も分かれば、1人の専門家として全て解決できるのではないか」。
「そうであるならば弁護士資格を取ろう」といった具合に思いが進み、法曹を目指したことになります。
あともう一つは単純に勉強が好きだったということもあります。元々会計士を目指したのも、会計の勉強が好きでやっていましたので、何かしらの取り柄が人間にはあると思うのですが、私の場合は何長時間勉強していても全く苦ではありませんし、むしろ楽しいと思えるような性格であります。ですので、テレビゲームをやっているような感覚で、会計士の受験勉強をすることができ、司法試験の勉強もおそらく楽しいだろうなと思いスタートしました。実際楽しかったです。
したがいまして、仕事の幅を広げたかったということと、単純に法律の勉強したかった、という二つが法曹を目指したきっかけということになります。
弁護士から会計士を目指すとなると会計士の科目が免除になるので、結構目指す人が多いのですが、会計士から弁護士を目指すとなると、科目免除が無いので大変なやり方ではあります。ロースクールができてから、公認会計士とか、税理士、弁理士などのキャリアをお持ちの方がロースクールにはいたので、法律の専門家とは異なる実務家が法曹に入ってきやすい体制はできつつあるのではないかなと思います。
司法試験の勉強をスタートするにあたり、不安はありませんでした。さきほどの話にもなりますが、受験勉強が得意で、国家試験なども結局はノウハウが重なる部分もあって「これ多分大丈夫だな」と勉強を開始する段階で思えました。全て終わった今考えてもそう思っています。ですが、どのような人であっても長時間勉強しないと取れない資格なので、勉強が好きだという点は、受験勉強を進めるうえで、かなり助かった部分です。
司法試験を目指すにあたり、働きながら勉強するといった兼業はおそらく無理だなと思い、受験に専念する環境を整えました。自分は勉強に没頭する性格からも仕事をしながらでは難しいだろうなということと、あともう一つは試験の難易度からして兼業では無理だなと思ったのでスパッとやめて、専業受験生として伊藤塾に毎日通っていました。
勉強が好きという部分について少しお伝えしますと、真剣に勉強をし始めたのは高校受験からでした。小学生中学生とスポーツをやっていまして、自転車競技をやっていました。青森が出身なのですが、近くには競輪場があり、ロードレースなどをやっていて、小中まではそのスポーツをずっとやっていました。高校もスポーツ推薦の形で進学することになりました。小中は全く勉強をしておらず、クラスでは最下位ほどの成績であったのですが、高校にはスポーツ推薦で進学しました。ですが、怪我をしてしまい高校を辞めることになってしまい、16歳のときにフリーターになってしまいました。その時、「中卒、そしてフリーターのままならこの先厳しいな」と思い、高校受験のための予備校に通うことにしました。そこで初めて勉強というものに触れたのですが、とても楽しく、今まで全く勉強してこなかったこともあり、物を知るとか、本読むとか、知ったことを吐き出して点数を褒められるとか、自分にとってとても新鮮なことであり、その時に「勉強は楽しいな」と思えた体験の影響が強いと思います。
大学受験も頑張って勉強して、自分の中では無事に合格できたので、勉強自体の楽しさと、その成功体験があったことから、おそらく司法試験にもスムーズに入れて、やり遂げられたという気はしています。
東京スタートアップ法律事務所は、文字通りスタートアップやベンチャー企業に特化していて、私の仕事はまさにスタートアップ企業の顧問業務が仕事の8割9割ぐらいです。残りの1割ぐらいが紛争、訴訟などをやっているので、ほとんど業務はスタートアップ企業に対するアドバイスや業務の提供です。具体的に言いますと、最近はスタートアップという言葉もメジャーになってきていると思うのですが、要はITを使って何か新しいことやりますという企業を指し、そのような方がとても多いです。例えば、最近流行りのマッチングサイト、働きたい人と雇いたい人をマッチングするサイトを、アプリを用い繋げるプロダクトを作るとか、男女の出会い系アプリを作りたいとか、ECサイトを作り、物をネット上で売りたいなどのなどのニーズが高まっております。携帯アプリとウェブを使ったプロダクトを作って、そこで何かイノベーションを起こしたいというスタートアップに対しての相談や顧問業務などが私の仕事となります。
IT系に関する知識などは元々ありました。というのも、監査法人のときに、まさにIPOを目指す企業を支援する部署にいまして、その当時からIT業界についての理解や、ITでのプロダクトとはどのようなものであるかの知識があり、ビジネスの側面を理解できておりました。スタートアップ企業は最終的にIPOを目指したりすることがメインとなるのですが、IPOに向かっていく道筋も把握しておりましたので、ITベンチャーに対して、IPOを目指す支援が今の業務でも主力になっているところです。
仕事のやりがいを感じる時ですが、勉強してきたことが活かせたときです。もともと司法試験の勉強を始めた動機や、法曹資格をとりたい動機が、頭を使って何か解決したい、勉強してきた知識を使って問題を解決したいというところがメインでしたので、今まで伊藤塾で勉強してきたことでしたり、ロースクールで勉強したこと、司法修習で勉強したことなどが、お客様の問題解決に繋がったときに、「勉強してきてよかったな」とか、「弁護士のような頭を使う仕事でよかったな」などと思います。
月並みではありますけど、そのうえ感謝してもらうと喜びは更に倍になります。
受験生時代、勉強してきたことは、今の仕事に直接繋がっていることはほぼ全てであると言えます。伊藤塾で基礎をしっかりと仕上げましたが、やはり基礎があやふやであると仕事も積み上がっていきません。我々専門家と一般の方の一番の違いは、基礎から法律問題を考えられるかということだと思っています。今はネットで情報が氾濫していて、一般の方でもインターネットでそれなりの情報を得ることができます。しかし、それは一事例に関しての情報であり、少しずらした場合、応用した場合などは、しっかりとした基礎がないと、実際の自分の事例に適用できなかったりします。法曹は主旨でしたり、条文の設計でしたり、そもそもの制度主旨を理解できており、そこから法律理解をし、事例に当てはめるということを、伊藤塾時代からロースクール時代にかけトレーニングしてきているので、そこが専門家と一般の方の違いだと思っています。そういう意味では伊藤塾で培った基礎知識というのは、実務の現場でほぼ全て活きています。
基礎マスターで使ったテキストは事務所の本棚にあり、今でもそこに戻ります。自分の知識のプラットフォームが伊藤塾のテキストなので、そこから色々と発展的な思考をした方が正確ですし早いので、知識のプラットフォームである伊藤塾テキストは、今でもおそらく3日に1回は見ています。
法律家に向いている人は。勉強を続けることを苦にしない人と、人の役に立ちたいと思う人だと思います。両方あれば尚良しです。裁判官などは最新の勉強をしっかりしているので、現行の法律をきちんと勉強し、主張書面がしっかりしている方を正確に評価してくれます。したがいまして、常に知識のアップデートをしなければならないことから、我々の仕事は勉強し続けなければいけないので、やはり勉強が苦にならない人というのは必須だと思います。
もう一つは、人の役に立ちたいと思う人であると思います。特に刑事事件や家事事件などをやっている先生ですと困っている人に寄り添い救いたいという気持ちが強くないと、やれないという部分もあるので、人の役に立ち社会のためになりたい気持ちを持つということも、法曹に向いていることの条件の一つなのかなとは思います。
最後になりますが、楽しく勉強やりましょうという事と、受験生である時間を大事にして欲しいという事を伝えたいです。受験勉強は大変だったり、壁もあったりしましたが、私は勉強自体が好きでしたので楽しむことができました。好きであるとインプットも入ってきますし、受験生活そのものを楽しく過ごせると思います。弁護士になるための犠牲の時間ではなく、受験生時代の勉強それ自体が楽しいと思えれば、受験もそれほどつらくないのかなと思います。
あともう一つは、受験生である時間を大事にして欲しいということです。というのも、弁護士ではない時間の方が人生において短くなると思います。おそらく今の試験制度ですと、きちんと伊藤塾のカリキュラムに沿って勉強すれば、それほど難しい試験ではないので、弁護士になりたい人のほとんどは弁護士になれると思います。そうすると人生において弁護士という身分でいる時間の方が長くなることになります。弁護士ではない期間はあまりなく、何者でもない時の自分を弁護士になった今思い返してみると、ただ弁護士になる夢に向かって突き進む自分でした。ですが、今思い返すと本当にかけがえのない時間であったと思います。その受験生である時間を純粋に楽しんで頂き、そして充実させてもらいたいです。