自分の責任、自分の名前で仕事がしたく、弁護士になることを決意
神尾陽一先生
経歴 2004年 福岡県立城南高等学校卒業
2009年 中央大学法学部(法律学科)卒業
2009年 株式会社みずほ銀行 入行
2010年 株式会社みずほ銀行 退行
2014年 中央大学法科大学院(未修課程)卒業
2014年 司法試験合格
2014年 最高裁判所司法研修所司法修習生(第68期)
2015年 第二東京弁護士会に弁護士登録
2015年 西澤綜合法律事務所に入所
2016年 中央大学法科大学院実務講師
※先生の所属事務所等プロフィールは、取材時のものです。
神尾陽一弁護士インタビュー動画 ~法律家を志す皆さんへ向けて~
子供の頃からテレビのドラマや映画などで弁護士という職業をなんとなく知っていて、そのような仕事があるというのは分かっていたのですが、具体的に意識するようになったのは高校時代でした。その頃「切れる17歳」というのが当時話題になった時代でして、少年事件をきっかけに弁護士に興味を持ったというのが最初でした。大学は法学部に入ったものの、最初のうちはもう少し広い世界を見たいということもあり、銀行に就職をすることにしました。ですが、組織で大きなことをやるというのもやりがいはあったのですが、自分でやれる範囲には限界があり、もう少し自分の責任で自分の名前で仕事をしたいと思うようになり、昔、志していた弁護士という職業に再度チャレンジしてみようかと思い、ロースクールに入学したという経緯です。
大学に入学した当時はあまり真面目には勉強できていなかったのですが、本格的に勉強したのはロースクールに入る前と入ってからです。
銀行に入行してから転進をしたわけになるのですが、銀行は長く居るところではないという気がしたので、1年程で退職を決意しました。そして「司法試験に向け勉強するのであれば、若いうちにスタートし、30歳までには弁護士になっていたい」との思いがあり、逆算した際、再び1から勉強し直して、司法試験受け、司法修習に行くとなると、30歳までに弁護士になるには間に合わないかもしれないと思い、早めに切り替え本格的に勉強をスターとしたという形です。
私の所属する西澤綜合法律事務所の紹介をさせて頂きますと、規模としてはそれほど大きくなく、日本の事務所には所長を含め3名なのですが、面白いのがタイにもオフィスがあり、現地にはタイ人の弁護士が在籍しているという事務所です。タイにおいては弁護士制度が日本とは異なるので、どこから弁護士と呼ぶかというところで変わってくるのですが、日本の事務所と比べてタイの事務所のほうが弁護士の数が人数的には多いです。よって、タイ関係の仕事と日本関係の仕事が半分位の割合となっています。日本の中でも顧問企業様の法務周りを中心としながら訴訟もやりますし、家事事件など、どのような事件でも対応する事務所です。当初は国内向けに働こうと思っていたのですが、ロースクールに入学して多くの教授や友人達と接している内に、みなさん色々なバックグラウンドをお持ちで、海外で活躍している方の姿を見たりしていると、「自分も海外で仕事ができる人間になりたい」と考えるようになりました。そして、就職活動につきまして、少し変わっているのですが、司法試験を受けた後、合格発表前にお金を貯め、一ヶ月半ほど東南アジアに行きました。その際、現地にある日本の法律事務所が出しているオフィスを自分の足で回り訪問をし、どういった業務をされているのかなど、仕事の様子を自分の目で拝見し、その内、訪問した先の1つが今の事務所でした。海外オフィスで日本人弁護士が何をされているのか具体的に見えてこなかったということもあり、実際に行って弁護士をされている人に直接聞いてみようと思ったわけです。したがいまして、所長である西澤との最初の面接はバンコクで行いました。現地で初めてお会いし、日本に戻り、再びお会いして入所することになったという経緯です。東南アジアの中ではベトナムとタイとカンボジアに行きましたが、どこも英語が通じる国ではありませんが、身振り手振りのやりとりで何とかしました。現地の法律事務所においては日本人弁護士の先生がいらっしゃるので、そこのコミュニケーションは問題なかったです。
やりがいを感じる瞬間は月並みですけど、お客様が喜んでいる姿というのが一番やりがいを感じる時だと思います。法律事務所ですので、前向きなビジネスのお話もたくさんありますが、基本的には揉め事でしたり、紛争状態でしたり、「ここどうしたらいいのだろう。わからない」といった状態、つまりは困った状態でいらっしゃるお客様がほとんどですので、それを解決してあげて喜んで頂けるというのが最もやりがいを感じる時かなと思います。
今まで担当してきた中で、現在担当している案件が最も歯ごたえのあるものなのですが、大規模な刑事事件の弁護団に携わっていまして、それはなかなかタフな仕事だなぁと思います。刑事事件の弁護団はロースクール時代の同級生から手伝ってくれとお誘いを頂いたということもあり、色々なチャネルからお仕事を頂いています。
受験生時代は基礎マスターを中心に勉強させて頂きましたが、実務をこなすうえで基本が分かっていないとどうしようもないことが多々あります。なかなかロースクールの授業は特に私の時には発展的なことを先にやってしまうこともありましたし、基礎をおさえないまま、授業が始まってしまうクラスも多かったので、そのような意味では基礎マスターできちんと基礎を理解した上で授業を受けられたというのは、ロースクールの授業を身に付けるという意味でも役に立ったかなと思います。
あとは、実務と言う観点からですと、説がいくつもあるというのを初めて知ったのは伊藤塾の講義でした。通説というものがあり、有力説と言われるものがあって、それぞれ考え方が違いますが、各々の考え方に従うと、こういう結論になるという考え方を知ったのは伊藤塾の基礎マスターでした。それは今の価値観のベース、考え方の基礎となっています。勉強するにあたり、「有力説であり通説ではない」という理由でないがしろにはしないで欲しいと思います。というのも、色々な見方をするというのは、実務家として大事なところですし、自分に有利な事実ばかりが揃っている事はあまりないので、不利になった際、その法律構成から考え直すとか、こういう見方もあるのではないかなどと視点を変え検討することは大事なことだと思います。このような点は受験生の頃に意識をしながら勉強していたと思います。色々な書籍も読みましたし、伊藤塾の講義についても基礎マスターだけで終わることを前提とされてないと思うので、そこから発展して自分で調べたりするということを大切にし、勉強していくことが大事かなと思います。
法律家として働くために必要な力の前提として、法的な思考力、きちんと論理的に考えられる力というのは大事であると思います。その上で事実をきちんと把握できる力、要は事実認定の力、この2つの力が両輪として大切になってくると思います。ですが、最終的には明確に勝ち負けで決着つけることがそれほど多いわけではなく、和解や合意など交渉に持ち込むことも多々ありますので、その辺のバランス感覚というのは我々実務家にとって必要であると最近感じています。自分は未だ経験が浅いと思っているのですが、一人よがりにならないという意味では経験はそれほど関係ないかなと思います。ベテランの先生でも交渉していて、自分の主張ばかりを繰り返される先生もいらっしゃるので、経験というよりも意識の問題であるという感じがしています。先程の話も近いと思うのですが有力説と通説があった時、通説だけ分かっていればいいという考えの人は、なかなかバランス感覚というものは身につかないかなと思います。反対側の意見にも耳を傾ける姿勢を持ち続けることができれば、交渉相手の話にも耳を傾け「そうだなと」思うことに関しては、自分のクライアントに対して説得することもありますし、「ここはどう考えても相手の言うことがおかしい」となれば、むしろバランスをとるのではなく、押し返すというのがバランスだと思っています。必ずしも相手の話を全部受け入れるとか、真ん中を取るというのがバランスという意味ではなく、何がこの事案として最後にあるべき形なのかと考えられる力というのがバランス感覚のような気がしています。
色々と暗いニュースが多い中、例えば合格者の減少や、収入の減少など囁かれることもありますが、きちんと弁護士として働いている友人たちは皆イキイキと仕事をしています。やりがい自体は間違いなくある職業ですので、世間で言われていることを鵜呑みにするのではなく、色々な実務家先生に会い、話を聞いて頂きたいと思います。そうすれば、様々なタイプの弁護士がいることを知り、必然的に面白い仕事だと感じると思いますので、是非皆様には頑張ってもらいたいです。