実務の場で使う「思考法」は、伊藤塾で養った「思考法」そのもの
武藤慶先生
経歴 2010年 埼玉県立 春日部高等学校卒業
2014年 慶應義塾大学 法学部 法律学科 卒業
2016年 慶應義塾大学大学院 法務研究科 修了
2017年 弁護士登録(70期)
2017年 千代田中央法律事務所 入所
2020年 奥・片山・佐藤法律事務所 入所
※先生の所属事務所等プロフィールは、取材時のものです。
私が弁護士を目指したきっかけについてですが、正直あまりはっきりしたものはありません。ただ、曽祖父くらいまで辿れば法律関係の仕事をしていた人もいたので、なんとなく子供の時から憧れのようなものはありました。テレビでも弁護士という職業をよく見かけてはいましたし、漠然とした憧れのようなものは元々持っていたように思います。慶應大学の法学部に入ってみると、みな意識が高いといいますか、内部進学生のネットワークがあるからか、1年生の時から伊藤塾に通っている人たちも多くいて、周りから刺激を受けやすい環境に居ました。私の場合は一般受験で大学に入ったので、そのあとすぐに勉強する気にはならなかったことから、しばらくしてから伊藤塾に通い始めました。あともう一つ、この道で行こうと思ったきっかけとしては大学生の時なのですが、祖母が振り込め詐欺に遭いそうになりました。幸いぎりぎりのところで未遂には終わりましたが、「理不尽なことがあるな」という思いがあり、弁護士という職業はそういう困っている人を助ける仕事だと思うので、その出来事も目指すきっかけの後押しになったかなと思います。
今合格してから活動していることとして、民事介入暴力対策というのがあります。これは所属先事務所とは関係なく、私個人として弁護士会の委員会の中で活動しています。例えば、特殊詐欺に関連して暴力団の組長に訴訟を提起する等、チームで動きますので、色々な外部の先生方とも連携しながら活動しています。最近ニュースでもそのような話題を見かけることが増えたかもしれません。現状、私の関与案件にはありませんが、実際にそのような訴訟を通じ、何億円単位のお金を暴力団から取り戻したりなどという成果も上がっています。このように、当時の思いが実際に今の活動にも繋がっているところがあります。
弁護士を目指すにあたり、具体的に司法試験を意識したのは高校生か大学生くらいの頃だと思います。元々文系だったということもありますが、法学部に行くと決める程度に漠然とした憧れは持っていました。大学の進路を決めるときも最高峰の資格である司法試験は挑戦のしがいがあるなと思っていました。高校のクラスにも当時、弁護士を目指そうとしていた友人が2人いて、実際にその友人達も今は弁護士をやっています。周りに仲間がいたことも、具体的に司法試験を意識し始めたきっかけになっているかなと思います。
また、大学1年生の頃、慶應大学の小林節教授の第1回目の憲法の講義を受けていたところ、伊藤真先生が授業を担当され、「かっこいい先生が来たな」と思って見ていました。2010年の頃です。
私が伊藤塾に通いだしたのは2年生の秋だったのですが、その辺りからそろそろ勉強しないとロースクールには行くのに間に合わないと思い始めたと思います。1年生の頃は普通にサークルをしたりバイトをしたりしていました。高校の時は部活一色になっていた部分があって、大学に入学した後は、大学生っぽい生活に憧れていたのかもしれません(笑)。
弊所の紹介をさせて頂きます。案件としては、比較的色々な分野を扱っています。名前を見て頂いて分かる通り3つの事務所が合わさっており、2018年に合併してできた事務所です。奥綜合法律事務所は、ファイナンスや労働法務、各種企業の顧問業務をやっており、片山総合法律事務所は医療法人の顧問業務やM&Aなどを扱うことが多い事務所でした。石澤・神・佐藤法律事務所は元々渉外系案件の走りのような事務所で、古くからあり、企業法務全般を取り扱っています。
上記のように色々な事務所が合わさっていて、しかも私は合併後に入所していますので、様々な先生から仕事を振っていただいています。もちろん弁護士ごとに仕事の傾向が異なりますし、それぞれの先生から色々な仕事をいただくことから、あまりこれという専門分野はありません。ただ、企業法務では、とても大きな会社の顧問先もありますし、小さい会社もあります。ですので、そういった企業向けの業務とそれらの従業員の方々を含む個人の方の相続案件等それなりの数経験できているかなと思います。私自身の個人案件では、労働者側の労働事件もやっていますし、先ほどお話した民暴案件等、事務所外の活動もやっています。また、国選などの刑事事件についても担当が回ってくればやります。最近だと裁判所からの打診をいただき破産管財人の仕事もやっています。あとは事務所の仕事としては、それなりの規模の破産事件の管財人代理の仕事もしています。どのようなジャンルの仕事も伊藤塾で教えて頂いたように、考え方は基本的に一緒です。新しい法律を見なければいけないとか、扱ったことのない法律を見なければいけないことは多々ありますが、趣旨から考える、という解釈の仕方は基本的に一緒だからです。
委員会についてお話します。弁護士会の中に民暴委員会という組織があります。もちろん、それ以外にもいろいろな種類の委員会があるのですが、個人の興味に応じてそこに希望を出すんです。委員会には労働関係の委員会や憲法とか人権系の委員会もあり、色々と自分の興味に応じた分野を選んでそこに所属することになります。それで私の場合は民暴を一年目から選んだ、という感じです。
委員会等の事務所外の活動を通じ、弁護士同士の知り合いも増えますし、横のつながりやフットワークが広がるので、そういう意味でも何か一つは事務所外の活動をやっているといいのではないかなと思います。
仕事のやりがいについては、ありがちな回答ですけど、やはりお客様にお礼を言ってもらえた時は嬉しいです。特に個人のお客様で本当に困っている方を助けたときにお礼を言ってもらえたり、直接感謝してもらえたりするとやりがいを感じます。あとは弁護士という資格を持っているだけで色々なところで話を聞いてもらいやすいところが、この資格を持っていると違ってくる部分かなと思います。例えば、私の場合、警察と連携したり、他の役所等も話を聞かせてもらえている経験があるので、色々なところに飛び込んでいけるというのはありますね。
受験生時代、伊藤塾で趣旨から考えるという基本について学ばせて頂いたことは大きかったと思います。実務の現場では未知の分野が多いといいますか、自分が全然知らない法律についてクライアントから聞かれ、それについて時間内に調べてきちんとした回答をしなければいけないことが多々あります。そのような場面で、伊藤塾で教えて頂いた思考法のベースは実務の現場にも直結しているのかなといいますか、ほぼそこに尽きると思っています。その思考方法を伊藤塾で教えて頂いたことは実務に役立っていると思います。
法曹の仕事は、裁判官でも検察官でも弁護士でも、かなり地道に膨大な資料を読み解き、膨大な情報を整理していくということが普段の仕事の中で一番多い作業です。したがいまして、法曹に向いている人は、膨大な資料をひたすら読み続けられるような、その辺りを厭わず粘り強くできる能力をお持ちの方は向いていると思います。あとは時間を守ることも大事だと思います。時間内で資料を読み解いて書き切る能力を試験では問われていると思いますが、結局のところ試験でやっているのと同じことを実務に出てからも日々やっている気がします。その辺のところを厭わずというかマメにできる能力というのが必要であると思います。
さきほども言ったことではあるのですが、いろいろなところに飛び込んでいけるとか何でもできるということが法律家の最大の魅力だと思います。正直資格を取るまでは大変だと思います。また、資格を取ってからも基本的には苦労が絶えない仕事ではあるのですが、一方でそれに見合うだけのやりがいある仕事だとも思います。したがいまして、法律家になってやりたいことがある皆さんは頑張りがいがあると思うのでぜひ一生懸命やってもらえればと思います。