弁護士だからこそ得られる「スキル」「経験」「出会い」は、資格価値そのもの

田島佑規先生

経歴  2008年 洛南高等学校卒業     2013年 神戸大学法学部卒業
    2015年 京都大学法科大学院修了
    2016年 弁護士登録(大阪弁護士会・69期)
    2017年 弁護士法人 淀屋橋・山上合同入所
    2020年 骨董通り法律事務所加入(第二東京弁護士会)



※先生の所属事務所等プロフィールは、取材時のものです。

田島佑規弁護士インタビュー動画 ~法律家を志す皆さんへ向けて~

 高校を卒業し、大学受験予備校に通っていた頃、「将来どのような仕事をしようか」「そもそも大学で何を勉強しようか」ということを決められずに過ごしていました。そうしたところ、その予備校で伊藤塾長の講演会があることを知り、「せっかくそのような機会があれば聴いてみようかな」と気軽な気持ちで参加しました。その講演では「法律家の仕事とは?」「憲法とは?」「法律とは?」といったお話があり、そこで憲法や法律に興味をもったのが弁護士になろうと考え始めた最初のきっかけでした。
 高校時代はバスケットボール部に所属し部活を一生懸命やりつつ、好きな映画やドラマなどのエンタメの世界も楽しみながら、勉強はやや疎かにしながら…といった高校生活だったように思います。
 先ほど塾長の講演を聴いて法律に興味を持ったとお話しましたが、今までやってきた勉強の中で一番自分の感覚に合っているかなと思いましたし、憲法や法律を勉強しておくことは、今後の人生に大いに役に立つのではないかなという直感のようなものがあって、大学では法律というものを勉強してみようと思ったしだいです。

 少し私の所属する骨董通り法律事務所の紹介をさせて頂きますと、法律家としての活動を通じて様々な芸術活動を支援する法律事務所として2003年に設立された事務所でアート、メディア、エンターテイメント業界のクライアントに対する法務サポートを中心に扱う事務所といえるかと思います。業界ではブティック型の法律事務所などといわれたりもしますが、おそらく事務所全体の案件のうち9割以上はアート、メディア、エンタメ業界のクライアントになろうかと思います。
 私自身も演劇をはじめとするライブイベントや、出版・漫画、番組・映像制作、音楽、ゲーム、あとはアート・デザインなどにまつわる分野において活躍されている会社や個人の方などを広くサポートさせて頂いております。

 やはりアートやエンタメ業界のクライアントをサポートしているということもあって、現在そうした業界をリードしているような企業や個人の方と仕事をさせて頂くことや、またこれから業界内で存在感を発揮していくだろうなという若き才能ある方々などと仕事をさせて頂くことそのものが、私にとってのやりがいであると感じています。そういった方々と日々プロジェクトや作品づくり、または契約関係などについて、共に悩み、そしてアドバイスをさせて頂きながら、少しでも世の中に作品を送り出していくお手伝いができていると感じられる瞬間もまたやりがいを感じる部分です。
 コロナ禍においてエンタメ業界は大きな影響を受けていますが、特に演劇をはじめとするライブイベント業界は多大な危機に晒されているといっても過言ではないと思います。2020年の2月に突如として政府から名指しされるような形で自粛要請がなされ、多くのイベントが延期や中止を余儀なくされました。そこで生じた損害というのは、ただならぬものになっています。というのも構造上、ライブイベントというのは、イベントの実施までに多くの時間とコストをかけて準備を重ね、イベント開催をもってようやくコストを回収できるというビジネスモデルです。したがって、「イベントを2週間やらないでね」ということになったとしても、純粋にそこに該当する2週間の売上が無くなるだけでなく、それまでかけてきた時間とコストが全て赤字に変わる瞬間となりえます。ライブイベントの主催者は、おそらく皆様がよく知っているような名だたる企業であったとしても、従業員数としては数十名から数百名程度のいわゆる中小企業といわれるような規模のところも多いです。そうした企業が、突如として何億という赤字を一気に抱えることになるわけで、業界そのものの存続が危ぶまれるほど危機的な状況でした。今もオミクロンということで、一難去ってまた一難という状況が続いておりますが、私もこうしたコロナ禍における業界の危機を受け立ち上がった緊急事態舞台芸術ネットワークの事務局として活動したり、様々な文化庁の支援事業に携わったりと、色々なサポートに尽力しながら、何とかコロナ禍における危機的状況を乗り越え、これからも文化芸術が続いていけるよう、この2年間一生懸命にやってきたかなと思います。
 そのような状況下において、ファンの方々の熱い声を聞いたり、ときには不十分であるというような厳しい声が在りながらも、国や行政のほうでも何とか文化芸術をサポートしようとする動きがあったり、社会の皆様が文化芸術やエンターテイメントを決して不要不急と思っているわけではなく、それが如何に人生の支えになっているかというような声を多数聞くことができ、それは私にとっても活動の支えになりましたし、なによりも現場で苦しんできたみなさんがそのような声を支えに頑張り続けてこられたといえるのではないかと思います。

 普段私が扱う分野は、広く一般的なジャンルというよりかは、これまでお伝えしたとおり、アートやメディア、エンタメ業界のものが多く、扱う法分野としては、やはり著作権をはじめとする知的財産関係や契約まわりのものが多いとはいえます。しかし、一つのエンタメ企業であったとしても、事業活動を行う以上は当然多数の法分野が関わってきますし、弁護士としてこうした業界をサポートする上でも多数の法分野における幅広い知識というのは欠かせません。特定の業界やジャンルを扱う場合でもやはり法律家として活動する以上、いわゆる司法試験科目として存在する選択科目を含めた8法は法律知識の基礎中の基礎であり、全ての法分野はその基礎の上に成り立っていると日々感じています。したがって、ブティック型の法律事務所で活動する私にとっても、法律の磐石な基礎を伊藤塾で学んだことは重要なことだったなと思っていますし、日々の業務の中でとても役立っていると思います。 
 当時、何度も何度も繰り返し基礎マスターを聞き、そこから論文マスターなど発展的な学習もしましたが、もちろん内容によっては受験勉強以来、目にしていない論点などもあり、すぐには思い出せないものもあるとは思います。ですが、やはり繰り返しやっていた内容というのは、骨身にしみて理解していることもあって、実務をやりながら、ふとその関連を聞かれたりとか、そのような問題になりそうなときに、「当時繰り返しやった基礎マスターのあそこの部分だな」と、直感的に分かり、そこから考えクライアントに説明したりすることもあります。こうした伊藤塾での勉強が役立っていると実感する機会は一度や二度ではなく、毎年何度もあることなので、そのような意味では基礎マスターなどで繰り返し勉強をすることができたというのは大きな財産かなと思います。
 憲法というのは普段はあまり正面から使うことは少ないですが、重要局面においては、やはり憲法的な視点、特にエンタメ業界などにおいては表現する価値というのは重要な観点でもあるため、憲法的価値を踏まえながら最終的にアドバイスしたり、検討を深めたりすることもあるので、そういった点でも憲法の基礎は役に立っていると思います。

 私自身が果たして法律家に向いているかどうかは分からないですし、弁護士になって6年目なので、まだまだどういう法律家がよいのかを全く評価できる立場にはないのですが、私自身が「こういう人に法律家になって欲しい」という国民目線で言わせてもらえば、「バランス感覚がある」ことが重要かなと思います。もちろん弁護士はクライアントのために仕事をするわけですが、目の前のことだけでなくもっと先を見たときに、どのような解決が真にクライアントのために良いのかとか、相手や関わっている方々にとって、その人生やその先において、どのような形を目指すのが良いのかなどを日々幅広い視点で考え決断しながら仕事をしていくことが重要かと思いますし、そうしたことを考えていく中で、やはり大事なのはバランス感覚なのかなと思います。そもそも法律自体がバランスをとる学問ということもありますしね。
 あとはそれとも関連しますが、想像力があるということもまた大事な要素かなと思っています。クライアントがどのようなことを考えているか、相手はどう考えているか、社会はどのようなことを求めているか、その業界はどのようになっていくべきなのか。もっというと過去の先人たちは何を考えここまで来たのか。とにかくありとあらゆることに想像力をはたらかせ、多角的に物事を考え、最終的にバランスをとってクライアントのために色々とアプローチをしていくというのが、法律家にとっては重要な要素なのかなと思います。私もそういうことができる法律家になっていきたいと思います。


 自分の経験だけでいうと、弁護士という資格があるからこそ、色々な業界のトップの方々とお話をさせて頂く機会もありますし、時にはそういった業界のトップを走っているような方からアドバイスを求められることもあります。それは、自分自身が法律の専門家であって、きちんとした知識を身につけているという前提があるからこそ頼って頂けると思いますし、弁護士でなければできない経験というのも沢山あると思っています。一人の人間として成長していくために、またビジネスパーソンとして活躍をしていくために必要であろう出会いや経験というのは弁護士だからこそ数多く得られている部分もあると思いますし、それが自分にとっての一つの弁護士資格の価値だと思っています。もし法律に興味をもって、弁護士を目指したいと思うのであれば、そもそも弁護士資格がなくとも法律知識をしっかり学ぶことはきっと人生において十分に価値はありますし、もちろんその結果弁護士資格を得られるとしたら、それはその後の長い人生においてもより有益だと思うので、是非頑張って頂ければなと思います。

骨董通り法律事務所

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