求められる「人」としての魅力、依頼者の信頼を得て結果に納得してもらえたときの喜びは弁護士ならではです

樅木 良一 先生(弁護士)

他者の力になれる仕事を

私が、勉強を開始し始めたのは大学2年生の11月からでした。大学に入った頃は、司法試験なんて雲の上の存在で考えてみたことなどありませんでしたが、大学2年生の途中から親しい友人が伊藤塾に通い始め、また法律(特に民法)を学ぶ面白さを感じ、司法試験に対して興味を持ち始めました。また、他の人ではできない仕事をしたい、他者の力になるような仕事をしたいという思いがあり、司法試験を目指す決意をしました。
また合格後、法曹の中で弁護士を選んだのは、大阪で修習した際に、指導担当であった弁護士の先生が依頼者から信頼されている非常に魅力的な先生だったことと、就職を考えていた地元名古屋で現在所属している事務所の所長に出会ったことなど、尊敬できる弁護士の方々に出会ったことがきっかけでした。加えて裁判官や検察官と異なり、依頼者の利益のために行動するところが、自分の性格にも合うと考え、弁護士になることを選択しました。

依頼者の納得と感謝から学ぶこと

私の所属する法律事務所では、名古屋という地域性もあり、企業法務に特化して業務を行っているわけではなく、企業法務も扱いますが一般民事が中心です。
弁護士に相談しに来る人は、当然ですが、ほとんどの場合その人にとって非常に重大な事件を抱えています。会社の事件であれば、この事件で負けて多額の負債を背負うことになってしまったら、会社が倒産し従業員を解雇しなければならないという結果が生じる場合もあります。
このように弁護士の仕事というのは、非常に心の負荷が大きい仕事ではありますが、その分、依頼者が納得する解決を導き、依頼者から感謝されたときには、辛いけどやってよかったと思います。実際に私が経験した事件でも、訴訟を提起したものの、結果として敗訴判決となってしまった事案がありました。しかし依頼者からは「必死に私のためにやってくれてありがとう」と感謝され、「控訴せずに納得します」と言っていただくことができました。この事件で、結果が全てではなく、いかに依頼者の納得のいくように行動するかが大切だということを痛感しました。 
また、企業法務においては、大きな会社の案件よりも、これから大きくなってく会社の案件の方が私としては、その会社が大きくなっていくことに貢献している実感が持て、やりがいを感じます。

実務に活きる「基礎力」

私は、基礎マスターのときから伊藤塾に通学していたのですが、この基礎マスターの時代の答練やゼミの参加等によって、原理原則や条文の趣旨から考えていくという姿勢を教わり、「考える力」が身についたと思います。
弁護士となった現在でも、新しい事件に出会い、知らない条文を使うこともありますが、原理原則や条文の趣旨から考えていくという姿勢は、非常に活きています。やはり、基礎時代における知識や考える姿勢などの基礎力は、試験だけではなく実務家になってからも非常に大切だと思います。 
また、私には、伊藤塾で通学していたときに一緒に勉強した仲間が数多くいます。弁護士や裁判官など司法試験を受かった仲間は、弁護士になった後も、一緒に飲みに行くなどして仲良くています。
特に、合格した最後の年に一緒に自主ゼミを開いて答案の検討をしていた2人の勉強仲間は、偶然にも私と同じ年に合格し、同期として一緒に名古屋で弁護士をやっており、事件のことで何か悩むことがあると相談をするなどして、弁護士になった後も非常に懇意にしています。やはり、苦しい試験をともに勉強した仲間というものは、かけがえのないものだと思います。

幅広い選択肢に目を向けて

確かに、法曹を取り巻く状況は私が弁護士になった時に比べても急変していると思います。
私が弁護士になった時にもすでに、就職難が言われていましたが、最近は、さらに就職難が問題になっています。
しかし今では、合格後、数多くの選択肢があり、具体的には、私の同期でも事務所に属さず企業内弁護士になった人もいますし、弁護士という肩書にこだわらずに国会議員の政策秘書になった友人もいます。また、JICA(ジャイカ)で、海外の法整備支援をしに行っている同期もいます。 
このように現在は、司法試験後の選択肢は裁判官・検察官・弁護士だけではなく、幅広い選択肢が現在はあります。これから司法試験に合格され、法曹資格を得た方々は、そのような方面を考えてみるのも面白いのではないでしょうか。
また、弁護士としての仕事の内容面では、現在、今までのように事務所にいて依頼者を呼びつけて打ち合わせをするのではなく、自ら依頼者のところに出向き、フットワーク軽く行動し打ち合わせをすることが大切になっていると思います。あくまで弁護士はサービス業だと思っています。
そして今後、さらに法曹人口が増え、競争が厳しくなることが予測される現在、今まで以上に「人間力」が大切になってくるのではないでしょうか。つまり、単に弁護士という資格を持てばよかった時代はすでに終わり、これからの法曹は、資格を取り除いたとしても、「人」としての魅力が求められており、それが依頼者の信頼を勝ち得るものと思っています。

未来の依頼者のために

司法試験は難しい試験です。勉強しているときは非常に辛いと思います。
しかし、弁護士になって、目の前に相談に来る依頼者は、心に負担を抱え苦しんでいる人がほとんどです。
その人たちの苦しみを少しでも分かってあげ、共感してあげることによって、依頼者の心の負担を少しでも取り除くことができるものだと思います。ですから、今感じている試験勉強の苦しみ、辛さは法曹になるために必要なことなのだと思います。合格後は幅広く自分にしかできない仕事をすることができます。あなたにしか救えない依頼者がいると思います。
未来の依頼者のために今は、ぐっとこらえて必死になって頑張ってください。 
自分は絶対に合格できると信じて、自分の可能性というものを信じて頑張ってほしいと思います。
 
(2010年11月・記)

【プロフィール】
2005年 名古屋大学法学部卒業
2005年 司法試験合格
2006年 司法研修所入所(旧60期)
2007年 弁護士登録
弁護士法人古澤法律事務所入所
 

■ 事務所プロフィール
弁護士法人古澤法律事務所
〒461-0005  愛知県名古屋市東区東桜1-3-8
ヴェッセル丸杉ビル7階
http://www.flo.ne.jp/
■ 当事務所の所属弁護士数
3名(2010年12月現在)
■ 事務所の主な業務内容
企業法務/株式公開・経営支援/建築・不動産関係/一般民事