弁護士として生きた経済、ビジネスにふれ非常に刺激的な毎日を送っています

坂下 大 先生 (弁護士)

私の事務所訪問

私は特に明確なビジョンをもって法律家を志したわけではなかったのですが、司法試験の受験勉強を通じ、何となく会社法って面白いなと感じていたこと、また、留学や官公庁への出向等にも興味があり、このような経験を有する弁護士が多く在籍する事務所に入りたいと思っていたことから、司法試験合格後、「渉外事務所」といわれている事務所を6つほど訪問しました。 現在の事務所に入ろうと決めた理由は、弁護士に対する教育制度や、情報共有のための所内インフラがとても充実しており、複数の弁護士が協力して最高の質を有する法的サービスを提供する、ということに対する情熱を感じ、これに共感を覚えたからです。これから事務所訪問をされる方におかれましては、自分はどういう法律家になりたいのか、ということを漠然ながらでもイメージして、それに合った事務所を探すということが大切だと思います。

現在の主な業務内容

前述のとおり、私の所属する事務所は渉外事務所といわれるところで、国内外にクライアントを有し、幅広い法分野に関する業務を行っています。事務所には300人を超える弁護士が所属し、あらゆる分野において、その分野を得意とする弁護士がおり、これらの弁護士が協力して各案件を担当しています。現在私が担当しているのは、M&A(企業の合併・買収等における、案件のスキームに関するアドバイス、契約交渉、対象会社に存在する法的リスクを分析するデューディリジェンス等)、一般企業法務(企業に日々生じる法的問題に対するアドバイス等)、買収防衛策の導入等の案件です。弁護士として生きた経済、ビジネスに直に触れることができ、非常に刺激的な毎日を送っています

やりがいを感じる瞬間

私の所属する事務所では、各案件は数人のチームを組んで対応するのが一般的で、とりわけ私のような1年目の弁護士が一人で全てをこなしたり、先頭に立って案件を引っ張ったりするということはありません。ですから、自分がこの案件をまとめあげた、という充実感を味わえるのは、もう少し先になるのかもしれません。しかし、1年目の弁護士であっても、案件を通じて何度も顔を合わせているクライアントから自分宛に直接相談の電話がかかってきたり、「次の会議では○○についても話し合われると思いますので、坂下先生も出席してください」と言われたりするときなど、クライアントから一人の弁護士として認識されていると感じる瞬間は、とてもやりがいを感じます。また、単純ですが、クライアントから感謝の言葉をかけられたときは本当にうれしい気持ちになります。案件がクローズした後、クライアントから「あのとき○○していただいて助かりました」なんて言われてしまうと、お世辞とは分かっていても、その案件での辛かった思い出は全て吹き飛んで、やってて良かったと思ってしまいます。

必要とされるプロフェッショナリズム

弁護士になって1年も経たない私がこのようなことを語るのは恐縮ですが、carefulであることの重要性は日々痛感しています。社会的には一つの事象と捉えられるものであっても、それには多くの法規制が及んでいたり、履践しなければならない手続があったり、考慮すべき利害関係が多くあったりするというのはよくあることで、弁護士にはこれら問題となる事項を漏らさず慎重に検討し、後になって無効の主張がされたり、紛争になったりする余地を残さないよう、相当の注意をもって案件に取り組むことが求められていると思います。簡単ではありませんが、carefulな弁護士であるよう、日々実践していきたいと思います。

伊藤塾で得たもの

伊藤塾で司法試験の受験勉強をしていた頃、伊藤塾長が「いくら勉強しても、司法試験では必ず未知の問題が出ます。分からない問題は制度、条文の趣旨に遡って考えることが大切です」とおっしゃっていたのを覚えています。この思考方法の重要性は、司法試験合格後、法律家になってからも同じです。クライアントの多くは、当該法律問題について一通りの調査を行った上で弁護士に相談するため、初めから結論が明らかな問題を弁護士が扱うことはそう多くありません。このようなときは、制度、条文の趣旨に遡って考えなければならず、「そもそも○○の趣旨は?」というフレーズを目(耳)にして、司法試験の受験生時代を思い出すこともしばしばあります。また、私が担当している案件の性質上、扱う法律は会社法や金融商品取引法が圧倒的に多いのですが、それでも司法試験の受験生時代に勉強した民法の正確な理解が重要だと感じることは多いです。M&A取引(もちろんこれに限りませんが)においては、複雑な契約書の条項や、権利義務関係が問題になることがありますが、やはり民法を正確に理解していないとこれらを体系的に理解することはできないと思います。

これから法律家を目指す方へ

自分自身の受験生時代を振り返ってもそうですが、司法試験に合格するまでの道のりは本当に厳しいものだと思います。しかし、法律家というのはそれに見合うだけの大変魅力的かつ刺激的な仕事です。とにかくたくさん勉強して、合格を勝ち取ってください。
 
(2008年5月・記)
 

■Profile
2005年司法試験合格
2006年司法研修所入所
2007年弁護士登録
長島・大野・常松法律事務所入所

■事務所プロフィール
長島・大野・常松法律事務所
〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町3-12 紀尾井町ビル
http://www.noandt.com/ 
 
■所属弁護士数
弁護士: 305名(日本人弁護士293名・外国弁護士12名)(2008年5月時点)


■当事務所の主な業務内容
一般企業法務、企業買収(M&A)、金融法務(金融関係一般)
金融法務(証券化、ストラクチャード・ファイナンス)
知的財産・IT・エンタテインメント、税務、紛争解決、中国法務等


■現在の「ある一日のスケジュール」
 08:00 起床、朝食
 09:45 事務所にて執務開始。契約書のドラフト、電話・メール対応等
 12:30  昼食
 14:00  会議
 16:00  M&A案件におけるデューディリジェンス
 19:30 事務所の同期と夕食
 01:00 帰宅、就寝