クライアントの納得と信頼を得るのに必要な「基礎」の力を
伊藤塾の入門講座で身につけました

山下 和哉 先生(弁護士)

法曹を目指すきっかけ

私は、高校1年生の時、生きていく上で法律を理解していることは武器になると思い、その頃からぼんやりとではありますが、法曹を志すようになりました。 
当時、血気盛んな高校生だった私は、警官と街中で口論する機会が少なからずありました(誤解なきようにご説明しますと、その理由は、犯罪ではなく、夜10時以降の外出等でした)。そこで、当時、法学部の学生であった先輩に相談すると、「有形力の行使」などと聞いたことのない言葉を教えてもらいました。その後、警官にポケットをおもむろに触られた時に「有形力の行使ではないですか」と尋ねると、警官が驚いて、急に丁寧になったのを今でも鮮明に覚えております。
これを契機に、漠然とではありますが法曹を目指すようになりました。

基礎マスターで「理解」に至る

私は、物わかりが良い方ではなかったので、大学の期末試験の勉強として、授業のノートを読み返したり、学者の方が書いた基本書等を読んだりしても「理解」というレベルまで至ってないようなむずがゆい気持ちをずっと持っておりました。しかし、伊藤塾では、講義においてもテキストにおいても、「基礎」の部分について厚く解説してくれていたので、本当の意味で「理解」のレベルに至りました。一度「理解」してしまえばこっちのもので、大学の授業で出される難しい問題も、「基礎」の延長として考えれば、大きく外すことはまずありませんでした。
「基礎」と一言で言ってもぼんやりしていると思いますが、とりあえずは条文、その趣旨、重要判例であると考えます。これら「基礎」に基づけば、初めて扱う分野にも何とか喰らいついていくことができます。仕事上でも、クライアントに法的見解を示す時に、これら「基礎」に基づいて回答することで、弁護士としても自信を持って回答できますし、クライアントにも根拠がしっかりしていることで納得していただけると思います。 
今振り返ると、いつまで経っても支えになってくれる「基礎」を丁寧に解説してくれる貴重な機会は伊藤塾の入門講座段階のみであったと思います。ぜひ、この重要な「基礎」マスターを大切にしていただければと思います。

司法修習と二回試験で必要な力も共通

司法修習で重視される力と二回試験合格に必要な力は基本的には同じであると思います。そうでなければ、この二つの制度が存在する合理性が疑われることになります。
その中身ですが、私は、結局のところ、基礎となる実体法の理解とバランス感覚であると思います。 
たとえば、民事裁判修習や民事裁判科目で柱となる「要件事実」というものですが、これも実体法の理解なしには理解できません。今でも記憶に残っているのは、教官が法定解除の要件事実の説明をする際に、まず初めに民法540条1項を挙げたことです。私は、お恥ずかしい話ですが、この条項は当たり前すぎて全く素通りしていましたが、やはり基礎から考える姿勢が必要であることを学ばせていただきました。これは伊藤塾が最も重視している点と同じであると思います。
また、民事・刑事ともにある事実認定や弁護修習や検察修習等で実際に依頼者や被疑者と話す機会等においても、バランス感覚が必要であると思いました。つまり、大多数の人間がどう考えるのかということを理解することと、常識的に考えればこちら側がかわいそうであるという感覚が大切であると思います。これも、伊藤塾の先生方が具体的な事案において説明してくれていたと思います。
今振り返って思うのは、基礎の部分、特に民法、刑法をもっとしっかりと勉強しておけばよかったということです。基礎さえしっかりしておけば、実務に出てからの勉強で何にでも対応できる、とお世話になった弁護士の先生に教えていただきました。
 
新人に求められる資質

就職難の中で必要になるのは、「希少価値」であると思います。たとえば、英語力がある人は渉外案件の即戦力になりますので、比較的決まりやすいと思います。他には、他の職業経験がある方は、その経験を前面に押し出せば「希少価値」がある人に見えると思います。何も経験がないと思っておられる方は、ひたむきさを出すことが重要であると思います。修習生は皆、「知財に興味があります」、「選択科目では税法をとっていたので税務関係の仕事がしたいです」、等と一生懸命にアピールすることが多いですが、採用する側からすれば、「何を生意気なことを言っているんだ」、と思うそうです。それよりも、「事務所の仕事は何でもやらせて下さい、一生懸命にやります。そして、仕事の合間を見つけて知財の勉強をして、いつの日か先生に認めていただいた時には知財の事件もやらせていただきたいです。」というひたむきさが大事です。媚びているようで嫌だと思われるかもしれませんが、他に何か「希少価値」等の武器がある人は、それを前面に押し出して交渉していけばいいと思います。しかし、それ以外の人にとって、現状を冷静に分析すれば、このひたむきさが重要であるということをご理解いただけるのではないでしょうか。もしくは、直ちに独りで開業するという気概が大事であると思います。
ただ、厳しいことばかり申しておりますが、実際には地方に行けばまだまだ弁護士が足りない場所はありますし、都市部でもガンガン切り込んでいけばまだまだ仕事はあると思います。わかっておいていただきたいのは、司法試験と二回試験に合格すれば安泰、という世界ではないということです。十分悩んで、しっかりとした根を持っていれば、どこの世界でも活躍できると思います。
 
「オモシロイ」社会を築くために

色々と申して参りましたが、弁護士は素晴らしく、またやりがいのある仕事であると思います。法律に詳しくない人々にとっては、法律の壁は高く険しいものに感じるので、そこを法律のプロとして道案内し、時にはともに道を切り開いていくことは大変魅力的な仕事であると思います。実際、クライアントのために色々と悩んで、考えて、仕事をしていき、最後に「色々とやってくれてありがとうございました。」という言葉を聞くと、仕事の疲れも吹っ飛びますし、本当にこの仕事をやっていて良かったと思います。また、これほど人の人生に深く首を突っ込んでいて感謝してもらえる仕事はなかなか無いと思います。日々新しいことに取り組んでいくので、知的好奇心は常に刺激され続けます。さらに、法曹にのみ認められた権利・義務とそれにより法曹が社会に与えられる影響は計り知れないほど大きいはずです。
このような素晴らしい仕事を皆さまと一緒にしていき、より「オモシロイ」社会をともに作れればと思います。お互いに頑張りましょう。

(2010年11月・記)

【プロフィール】
2008年 司法試験合格
2009年 神戸大学法学部卒業
2010年9月 弁護士法人東町法律事務所入所
■ 事務所プロフィール
弁護士法人東町法律事務所
(神戸事務所・主たる事務所)
〒650-0034  兵庫県神戸市中央区京町80番
クリエイト神戸9階(総合受付10階)
(東京事務所)
〒100-0011  東京都千代田区内幸町2-2-2
富国生命ビル7階
(今治事務所)
〒794-0042  愛媛県今治市旭町3-2-13
今治東京海上日動ビル3階
(2010年12月現在開設準備中)
http://www.higashimachi.jp/index.html
■ 当事務所の所属弁護士数
19名(2010年12月現在)
■ 事務所の主な業務内容
企業関係法務/事業再生・倒産関係法務/海事関係法務/行政関係法務/医療関係法務/知的財産権関係法務/金融関係法務/渉外関係法務/個人関係法務