時間と労力を費やして苦労するからこそ無上の喜びがある「ありがとう」という言葉
湯澤 功栄 先生 (弁護士)
試験対策と実務のリンク
私は高校卒業後、自衛隊に3年間いました。除隊後、大学に入学したのですが、周りは年下ばかりなので、私は同い年の人より遅れていると感じていました。そのこともあり、普通に就職してレールに乗るよりは、資格を取得して独立する方向で考えていました。当初は司法試験は考えてなかったのですが、伊藤塾長による説明会で、「この方なら法律を分かりやすく教えてくれるだろう」と直感で思い、大学2年生の時に入塾しました。
伊藤塾での学習は、現在の実務でも活きている部分が大きいです。たとえば、民法や商法の知識がそのまま役立つことは、往々にしてありますし、消費者契約法など応用的な新しい法律の理解のためには、民法や商法をきちんと理解していることが前提となります。また、刑法でも、構成要件の知識がなければ弁護活動はできません。実体法の修得はまずありきで、その上で実務では応用力が一層試されると言えます。また、受験対策においては「細かいところにこだわらずに全体を学習した後、各論を重点的に学習し、それは全体においてどういう位置にあるのかを随時確認する」方法が大切です。私自身、徹底できなかった部分もありますが、効率的に学習を進めるには、その方法は必須だと思います。実務においても全体像をおさえることは重要で、現在取り組んでいる作業が、問題解決のためのどの段階にあるかを把握することが大切です。
あとは、司法試験は本気にならないと越えられないハードルですから、精神力が鍛えられるということです。ちょっとしたことではへこたれないようになりますから、それが実務でも活きるのは言うまでありません。
現在の事務所に入った理由
現在の法律事務所を選んだ理由は、事務所訪問した際に代表と波長が合った感じがして、「この方と仕事がしたい」と直感で思ったからです。事務所が私を必要としていることが伝わってきて、この事務所なら精一杯、頑張れると思いました。
業務内容としては、一般民事を中心に手掛けたいと当初から思っていて、それは、困っている方と直接関わり、「ありがとう」と感謝される仕事をしたかったからです。
また、現在は事務所側から入所希望者を見る形ですが、求めるのは「相手の話を素直に柔軟に聞ける」ことと「自分の芯はしっかりしている。自分の理念で行動できる」ことが共存している人材です。自分だけの立場を考えるのではなく、人とのつながりの中で仕事をしていかないといけないのは、どの世界も共通だと思います。
現在の主な業務内容
現在、事務所で取扱っている案件としては、民事関係が大半です。損害賠償関係、不動産関係、家族関係など本当に多種多様です。事務所にも個性豊かなメンバーが揃っていて、それぞれの得意分野で結果を出しています。
私が専門的に行っているのは、クーリング・オフなどの消費者問題です。業務の進め方については、私個人で担当する場合と、先輩弁護士と共同で担当する場合があります。先輩弁護士との仕事は、書面の効果的な書き方、主張や交渉の仕方など勉強になることが非常に多いです。
あとは、国選や私選からの刑事事件を年に数回担当しています。ある事件は、経済的に困窮している家庭で、病人の母親が「殺してほしい」と願ったとして、それを実行してしまった方の弁護でした。その方は、母親しか身寄りがなく、嘱託殺人の証人もいない状況で、助けてくれる人は誰一人いませんでした。その時、私はこの人を助けてあげないといけないと心から思いました。刑事事件は、検察官が大量の証拠を集めて99%有罪だという確信のもと起訴するものですから、弁護は難しいことが往々にしてありますが、今後も頼る人を持たない被告人のためにも、自分としてできる限りのことをしていきたいと思っています。
やりがいを感じる瞬間
裁判を含めて、あらゆる紛争というものは、相手がある問題ですから、100%納得のいく解決というのはなかなか難しいものです。依頼者の希望通りの結果を求めて、相手側への主張一辺倒になると、事件の解決には中々至りません。依頼者の立場に立ちながらどこかで折り合いをつける必要があって、妥当な結論を導き出すのが私達の仕事だと思っています。ですから時として、依頼者の方を説得する必要もあるわけです。それも、難解な法律用語ではなく、咀嚼し直して、法律的な根拠をきちんと説明する必要があります。また、法律家の仕事は、細かい書面を一枚一枚調べたり、大半は地道な作業です。
時間と労力を費やして苦労するからこそ、最終的に依頼者の方に「ありがとう」と言われた時は無上の喜びがあります。その瞬間に、弁護士としてやりがいが詰まっていると思います。
これからの弁護士を目指す皆さんへ
弁護士が多くなる時代では、営業力も必要になってきます。特に独立志向の方は、異業種交流会などに参加してネットワークを作ることが大事になってくると思います。そして、弁護士も他の職業と一緒ですが、全力で仕事に取り組み、信頼を得ていくことです。事案ごとにベストな解決法を考えて結果を出せば、次の依頼にもつながっていくと思います。私も困っている人の手助けをして、「ありがとう」と感謝していただけるような仕事を、今後も着実にしていきたいと思っています。
■Profile
2003年 司法試験合格
2005年 弁護士登録
東京都内の法律事務所入所
■所属事務所の専門分野
損害賠償関係、不動産関係、家族関係、会社法関係、知的財産権利関係、IT関係、債権回収、保険関係、労働関係、保全・強制執行関係、国際関係、行政、税務関係、刑事弁護等
■所属弁護士数
12名(2007年9月時点)
■現在の「ある一日のスケジュール」
07:00 起床、朝食
08:30 出勤
09:30 執務開始
10:30 期日(電話会議)
11:30 依頼者と打ち合わせ(電話)
12:00 昼食
14:00 依頼者のもとに行き、打ち合わせ
16:30 地裁にて期日
17:30 事務所に戻り、裁判の準備のため書類作成
19:00 夕食
21:00 帰宅、入浴
24:00 就寝