公認会計士のキャリアを活かして、法律と会計のハイブリッド弁護士に

古島 守 先生 (弁護士)

公認会計士から弁護士へキャリアアップ

私は慶應義塾大学経済学部卒業後、公認会計士として監査法人や財務コンサルティング会社などで10年以上専ら数字を扱う業務をしてきました。その中で、特に事業再生案件や倒産案件において接した弁護士の方々にとても魅力を感じました。
会計士の仕事も十分魅力的ですが、それ以上に日本における事業再生案件や倒産案件のメインプレイヤーは弁護士だと思い、弁護士になるべく司法試験の受験を決意しました。働きながら最難関の司法試験受験ですから慎重に受験指導校の情報収集をして、周りの評判や合格実績が高い伊藤塾を選択しました。法学部でなかった私は、憲法と法律の違いすら知らなかったのですが、伊藤塾長の講義は法律初学者の私にもわかりやすい、ポイントを押さえた合理的な授業で、自分なりに前向きに楽しく法律を学ぶことが出来ました。 
仕事をしながらの受験勉強なので、限られた時間の中で最大の成果を発揮すべく、自分に合った勉強方法を試行錯誤しました。短答式の問題文と解答を自分でテープに収録して電車の中で聴いたり、講義の中の前回の復習部分だけを集約したテープを作ったりしました。また、論証カードを自分なりにコンパクトにまとめた単語カードを作成して、通勤中の車中や仕事の合間という小刻みな時間を利用して何度も繰り返して勉強しました。
このような勉強方法で択一試験に合格できる実力と自信、基礎の理解はできてきました。しかし仕事と家庭を抱えながらの受験勉強は不安も多く、少しでも合格への選択肢を増やすべく、桐蔭横浜大学法科大学院の夜間コース(1期生)に入学しました。法科大学院に入学しても、一年でも早く弁護士になりたかったので、毎年、旧司法試験を受験しました。ご存じのとおり、旧司法試験の受験は回数制限に引っ掛かるので、ロースクール卒業時、新司法試験はあと1回しか受験できませんでした。
幸運にも最後の1回で合格できましたが、今振り返ってみれば、勝因は伊藤塾の講義で基礎を徹底的に学んでいたことにあると思います。基礎がしっかりしていれば、未知の問題に遭遇しても、憶することなく原理原則からスジの通った解答を導くことができます。

正義感の強い事務所へ

就職はいったん地元の法律事務所に内定をいただいていたのですが、私が司法試験を目指すきっかけになった「公認会計士のキャリアを活かして事業再生のメインプレイヤーになる」という目標を思い出し、大きな事業再生案件の取扱いがある今の事務所を選択しました。事務所には、いたるところに「在野の精神」や「人に志あり」等のスローガンが掲げてあります。大きな事業再生案件を取扱う一方で、小規模な離婚事件や相続案件等も誠実に「志」をもって対処することをモットーとする事務所です。社会正義の実現を目指し、もし誤ったことがあれば、国家権力といえどもいさめるような正義感の強い事務所です。所長は、今年75歳になりますが、弁護士として40年以上経った今でも、戦時中疎開されていた福島県の棚倉町に恩返しのため法律相談に出かけたり、我々若手弁護士の教育のため定期的に朝会を開いて、弁護士としての心構えや経験談等を話してくれたりします。

専門用語をわかりやすく伝える

現在担当している業務は、事業再生案件、企業法務、一般民事事件、離婚調停、相続案件等々、実にさまざまです。また会計士のスキルを活用して、決算書類の分析や再生計画案のチェック、遺産分割や財産分与という財産関係のシュミレーション作成、各種セミナー(企業会計と法律がクロスする分野)も行っています。会計士や税理士の先生方と協同で仕事をすることもあります。会計関連の専門用語や知識を所内の弁護士等にわかりやすく説明したり、裁判官や調停委員に対して、事件の概要をA4の紙1枚で分かりやすく伝えるためのポンチ絵を作成したりするのも、会計士時代の経験やコンサルティング時代のスキルが非常に役立っています。
今までの事件で一番印象に残っているのは、国選の刑事事件で窃盗事件を担当したのですが、余罪が何と500件近くもあった案件です。追起訴される度に、被告人の母親と共に、示談交渉に奔走しました。母親は「最後まで、『必ず更生する』という息子の言葉を信じている。」と全ての示談交渉に同席しました。被害者からは、非難の言葉や、逆に更生を期待する応援の言葉をいただきました。母親はその言葉一つ一つを勾留中の息子に伝え、母子の絆が強まっていくのを目の当たりにしました。幸い、ほとんどの案件で被害者から示談をいただくことができ、判決においても量刑上最大限斟酌していただきました。その後、彼は更生し親子の関係も修復できたとの報告をいただきました。

事業再生分野のメインプレイヤーを目指して

今後は当初の目標通り、少しでも早く事業再生分野のメインプレイヤーとして活躍したいと思います。そのためには現在のスキルをさらにブラッシュアップするだけでなく弁護士としても経験を積む必要があります。信頼の期待指数が高い職業ですからそれに応える使命感と、壁にぶつかったときのアイディア力、忍耐力も必要です。人の心を動かすためには、己に謙虚に、燃えるような情熱を傾け、人の機微や動作にも最大限気を配り、中立公正であることが大切です。依頼者だけでなく相手方に対する心遣いも重要でしょう。そういう誰からも信頼される弁護士になりたいと思います。

キャリアを活かして大きなステージへ

これから勉強を始める方、特に社会人で働きながら勉強しようとされる方は、家族や職場関係等、周囲の方の理解をいかに得られるかが、ストレスなく受験勉強を続けられるために重要なポイントになってくると思います。
自分の歩んできた資格、キャリアを活かし、更に法律の専門職としてのキャリアアップ、スキルアップをしていけば、大きなステージで仕事ができると思います。純粋培養された弁護士にはない、ハイブリッド弁護士としての能力を最大限発揮し、未開の分野の第一人者の弁護士として活躍してはいかがでしょうか。

(2012年4月・記)
 

【プロフィール】
1992年 慶應義塾大学経済学部 卒業
1993年 会計士補登録
1997年 公認会計士登録
2007年 桐蔭横浜大学法科大学院 修了
      新司法試験 合格
2008年 東京弁護士会登録(61期)


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