実務家レポート
弁護士 渡部友梨先生
長島・大野・常松法律事務所
経歴 2005年 東京大学法学部在学中 旧司法試験合格 2006年 東京大学法学部卒業
2007年 弁護士登録
2007年 長島・大野・常松法律事務所入所
2013年 University of California, Berkeley, School of Law卒業(LL.M.)
※先生の所属事務所等プロフィールは、取材時のものです。
柔軟な働き方を求めて、弁護士を目指す
私が弁護士を目指すきっかけになったのは、私の父が勤めていた会社の経営破綻・上場廃止という出来事でした。父から、会社更生の手続きで弁護士にお世話になっているという話を聞き、企業活動に関与する弁護士の存在を初めて知りました。会社が危機的な状況に陥り、従業員の生活を一変させてしまうようなときに大きな力になれる仕事だということを知り、弁護士という職業に漠然とした憧れを持ちました。大学に
入学後、ほかの職業に就くことも考えていましたが、専門的な資格を取得すれば、経済的にも自立でき、働き方を柔軟に選択できるのではないかと考え、弁護士を目指すことにしました。
企業法務であったとしても、結局は「人」と「人」との繋がり
私は現在、ファイナンス分野、その中でもキャピタルマーケットという分野を中心に仕事をしています。企業が日本や海外における資本市場において資金調達をする際の法律面のお手伝いをしており、準備の過程で生じる様々な法律的な論点を解決しながら、企業や証券会社と協働して書面を準備するというのが典型的な仕事です。
企業法務は「個人」ではなく「会社」を相手とするものだからか、冷たいとか、一般民事案件と比べると「人」と「人」とのつながりが希薄なのではないかと言われることがあります。しかし、「会社」という人がいるわけではなく、私たちは、実際には企業で働く方々と一緒に仕事をしています。一つのプロジェクトで様々な関係者がそれぞれにチームを組み仕事をしており、その方々との関係は、個人を相手にする一般民事と同じで、やはり「人」と「人」です。クライアントが実現したいことを適切にサポートするのが重要なので、想像力を発揮して、クライアントが何を求めているのかを把握して仕事を進めていくことが重要だと常に考えています。
その際に、個人のクライアントであれば、その方の状況や希望、依頼に至るまでの背景事情などへの理解が重要になると思いますが、企業のクライアントの場合には、そのクライアントのビジネス・財務状況への理解が重要になるなど、「理解すべきバックグラウンド」は違うという側面はあると思います。
能力、個性、経験、興味などパーソナリティを生かせる仕事
弁護士といえば、例えば訴訟では鋭い反対尋問をして相手を打ち負かしたり、M&Aではハードな交渉をリードしてまとめあげたりするイメージがありました。実際に弁護士として働き、周囲にいる弁護士をみると、私が受験生時代に抱いていた典型的なイメージに当てはまる弁護士ばかりではなく、それぞれの能力、性格、個性、前職の経験、個人的な興味などを生かしてキャリアを形成しています。様々な形で活躍する弁護士を見ると、私が受験生時代に想像していた以上に、個々のパーソナリティをフルに活かせる職業なのだと思います。
企業の経済活動が法律を変えることもある
受験生時代に伊藤塾での勉強を通じて得た大きなものとして2つあります。
一つは、企業法務への興味です。伊藤塾で、「商法改正講義」という商法の改正事項と改正の経緯についての講義がありました。その講義を受けて、法律はその時代の社会の要請を受けて変わっていくものであり、企業の経済活動において生じる支障や実務界の要望が法律を変えることもあるということを知りました。今企業法務に携わっていると、それは当然のことなのですが、当時の私にとって法律はあくまで勉強の対象であり、不変のものでしたので、大きな気づきでした。
法律は社会の動向や変化に密接に関連して変化するものだとわかり、法律が生きたものに感じられました。企業の経済活動に法的な側面で関わることができる企業法務は面白そうだなと興味を持ったことが、今の仕事につながっています。
もう一つは「友達」です。当時一緒に勉強していた仲間は、今でも弁護士の仲間として仲良くしていたり、お互いのキャリアについて相談をしあったりと、伊藤塾で得た交友関係は今でも生きているなと思います。
弁護士を目指す方へのメッセージ
弁護士はそれぞれの個性や興味分野に応じて、必ず活躍できる分野がある魅力的な職業だと思います。また、男女問わず、家庭・子供を持つ等によるライフスタイルの変化に合わせて働き方を柔軟に選択することもできると思いますので、ぜひがんばっていただきたいと思います。
受験勉強をしていると先が見えなくて不安になることもあると思いますし、勉強はあまりにも地道な作業の繰り返しなので嫌になってしまうこともあると思いますが、その地道な作業の連続が合格につながっていくと信じてがんばってください。私も、受験生時代に、合格体験記を読んだり、実務家の姿を見たりして励まされたことがあるので、私の話が何かお役に立てたら嬉しいです。