司法試験はやめとけと言われるのはなぜ?難易度や弁護士の将来性について解説

司法試験への挑戦を考えていると「司法試験はやめとけ」との声を聞くことがあります。司法試験は難易度の高さから自分には無理だろうと考えてしまう人も少なくありません。近年は、弁護士の数が増え続けていることから、弁護士の将来性に不安を感じる人もいます。
「司法試験はやめとけ」と言われる理由は正しいのでしょうか?
今回は、司法試験はやめとけと言われる理由と、その理由が正しいのかについて解説します。司法試験の受験を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
【目次】
1.司法試験はやめとけと言われるのはなぜか
1-1.司法試験の難易度が高く合格が難しい
1-2.司法試験の受験までに時間・費用がかかる
1-3.弁護士になっても仕事がない
1-4.合格できなかったときのキャリアが不安
1-5.弁護士の仕事は大変すぎる
2.司法試験はやめとけと言われる理由は正しいのか
2-1.司法試験は難易度が高すぎる試験とは言えない
2-2.司法試験の受験までにかかる期間は短縮されている
2-3.弁護士としての仕事はなくならない
2-4.司法試験の勉強は他のキャリアでも活かせる
2-5.弁護士はやりがいのある職業である
3.司法試験は挑戦する価値のある試験
4.まとめ
1.司法試験はやめとけと言われるのはなぜか
周りの人に司法試験の受験を相談したり、インターネットで司法試験の情報を調べたりすると、「司法試験はやめとけ」と言われることがあります。司法試験はやめとけと言われる理由としては、次の5つが挙げられます。
1.司法試験の難易度が高く合格が難しい
2.司法試験の受験までに時間・費用がかかる
3.弁護士になっても仕事がない
4.合格できなかったときのキャリアが不安
5.弁護士の仕事は大変すぎる
1つ1つの理由について詳しく見ていきましょう。
1-1.司法試験の難易度が高く合格が難しい
司法試験は、文系最難関の試験と言われています。挑戦しても合格するのは難しく、司法試験への挑戦は無謀な努力と考える人も少なくありません。
実際、司法試験受験生の中には、何年もかけて勉強したものの合格できずに挫折してしまう人もいます。多くの場合は、合格水準や勉強方法についての相場観がないまま、誤った学習をし続けてしまっていることが挙げられます。
司法試験は「難しい」というイメージが世間一般に定着しているため、試験の内容や現状を知らずに「司法試験はやめとけ」と言う人もいるでしょう。
1-2.司法試験の受験までに時間・費用がかかる
司法試験は、受験資格を取得するまでに時間と費用がかかる試験です。司法試験の受験資格を取得するには、予備試験に合格するか、法科大学院を修了または最終学年に進級(1年以内に修了見込み)する必要があります。
予備試験は合格率が毎年4%程度の難関試験で、合格するまでには長期間の学習が必要です。
これまでの制度では、大学に入学してから法科大学院を修了するまでには最低でも6年の教育課程を経る必要がありました。
予備試験と法科大学院のいずれのルートを選択する場合でも、司法試験を受験するまでには長い時間と学費や生活費などの費用がかかります。「司法試験はやめとけ」と言う人の中には、時間と費用をかけるなら司法試験よりも他の道を選択すべきと考える人もいたからなのかもしれません。
1-3.弁護士になっても仕事がない
1999年にスタートした司法制度改革の成果によって、弁護士の数は増加を続けています。1999年に16,731人であった弁護士の数は、2018年には4万人を超えるまでになりました。
参照:弁護士白書|日本弁護士連合会
一方で、裁判所の新規事件数は、1999年の約550万件から2022年の約340万件と大幅に減少しています。弁護士の数が増える一方で裁判の件数が減ると、当然のことながら弁護士1人当たりが担当する裁判の件数も減少してしまうでしょう。
参照:裁判所データブック2024|裁判所
さらに、メディアでもかつては「仕事のない弁護士が増えている」、「弁護士は稼げない」といった報道がなされ、世間では弁護士に対するネガティブなイメージが広がりました。
弁護士の数が増えたことで、合格しても仕事がないといったイメージが、「司法試験はやめとけ」と言われる理由となったのではないかと考えられます。
1-4.合格できなかったときのキャリアが不安
司法試験に挑戦しても、確実に合格できる保障はありません。長い時間と費用をかけた結果、挫折してしまうことも考えられるのです。
専業の受験生や法科大学院生は、受験勉強中に他のキャリアを築くことは難しいものです。時間をかけても合格しなかったときには、年齢に見合ったキャリアがない状態になってしまいます。
「司法試験はやめとけ」と言う人の中には、時間をかけて合格できなかったときのキャリアに不安を感じている人もいることでしょう。
1-5.弁護士の仕事は大変すぎる
弁護士は、肉体的にも精神的にもハードな職業です。
多くの弁護士は、複数の事件を抱えて仕事をしています。1つの事件が判決や示談によって終結しても、手持ちの仕事が無くなることはありません。事件の数が多くなると、裁判所への出廷だけでなく、書面作成や刑事事件の接見などで休む時間はなくなります。
また、弁護士の仕事は、依頼者の人生を左右するような事件を扱うものです。そのため、仕事を進めるうえでのミスは許されず、常にプレッシャーを抱えることになります。
司法試験に合格したとしても、弁護士の仕事が大変であることから「司法試験はやめとけ」と言う人もいるでしょう。
2.司法試験はやめとけと言われる理由は正しいのか
果たして、「司法試験はやめとけ」と言われる5つの理由は正しいのでしょうか。
それぞれの理由に対して、実情はどうなのかを見ていきましょう。
1.司法試験は合格難易度が高すぎる試験とは言えない
2.司法試験の受験までにかかる時間は短縮されている
3.弁護士としての仕事はなくならない
4.司法試験の勉強は他のキャリアでも活かせる
5.弁護士はやりがいのある職業である
それぞれの内容について詳しく解説します。
2-1.司法試験は合格難易度が高すぎる試験とは言えない
直近5年間の司法試験合格率は、次のとおりです。
●令和5年 45.34%
●令和4年 45.52%
●令和3年 41.50%
●令和2年 39.16%
●令和元年 33.63%
現在の司法試験は、平成18年から行われており、平成20年代後半には合格率が20%台前半に低迷していましたが、近年の合格率は40%を超えています。
同じ士業の資格試験では、司法書士が5%前後、行政書士が12%前後の合格率となっており、合格率だけを見ると司法試験の方がはるかに高い数字となっています。
現在の司法試験は正しい努力を重ねれば十分に合格可能な試験となっており、難易度の面だけで「やめとけ」と言われるような試験とは言えないでしょう。
※司法試験の合格率については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→2023年度司法試験の結果は?合格率や合格者数・大学別ランキングも紹介
2-2.司法試験の受験までにかかる期間は短縮されている
司法試験の受験資格を取得するルートとして、2020年から法曹コースの運用がスタートしました。
法曹コースを選択すると、大学の学部を3年で早期卒業して、従来よりも1年早く法科大学院に入学できます。さらに、2023年からは、法科大学院の最終学年の段階で、従来よりも1年早く司法試験を受験できるようになりました。そのため、法曹コースから法科大学院の最終学年に司法試験を受験する場合には、従来と比べて受験までにかかる期間が2年も短縮されたのです。
さらに、法科大学院の学費については、奨学金や特待生の制度も充実しており、入学試験で高得点を取れば大きな費用をかけずに法科大学院に通うこともできます。
※法曹コースについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
→法科大学院・法曹コースとは?メリット・デメリットや設置大学一覧などを詳細解説
※法科大学院の学費については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→【必見!】学費が安い法科大学院(ロースクール)は?各法科大学院の費用総まとめ
→【2023年度】学費免除や奨学金など法科大学院(ロースクール)の経済的支援総まとめ
2-3.弁護士としての仕事はなくならない
裁判所の事件数が減ったとしても、その分だけ弁護士の仕事全体が減少するわけではありません。
弁護士の仕事は、裁判所での訴訟業務だけではないからです。
実際、訴訟業務は弁護士業務の一部に過ぎず、交渉案件や企業法務を業務の中心としている弁護士も多いのです。
弁護士の就職難が叫ばれることもありますが、地方にまで目を向けると依然として弁護士の数が足りていない地域も少なくありません。
また、AIの進化により、様々な職業の仕事が機械化される時代が訪れることが予測されますが、弁護士の仕事は、その性質上AIでは代替不可能なものであり、今後もなくなることはないでしょう。「仕事がない」という弁護士は、ほんの一部です。
実際、周りの弁護士を見てみると、仕事が少なくて困っている人はおらず、暇なく働いている人がほとんどです。
※AI時代における弁護士の将来性については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→弁護士の仕事がなくなる?AIの登場による弁護士の将来性を徹底解説!
→弁護士は食えない・稼げない・儲からないは真実?弁護士の将来性と展望を徹底解説
また、令和5年の賃金構造基本統計調査によると、弁護士を含む法務職の平均年収は1,121万6,800円となっており、民間給与所得者の平均給与458万円と比べてもはるかに高い数値となっています。
参照:国税庁 令和4年分民間給与実態統計調査
また、日弁連による弁護士業務の経済的基盤に関する実態調査 2020によると、弁護士の平均年収は2,558万円(中央値は1,437万円)というデータも出ており、弁護士になっても仕事がなく稼げないという人は一部であって、多くの弁護士は忙しく働いて高収入を得ています。
※弁護士の年収について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
→弁護士の年収はどのくらい?平均年収や中央値・仕事の魅力を検証しました
2-4.司法試験の勉強は他のキャリアでも活かせる
司法試験の勉強で学んだ法律知識や努力を続ける能力は、他のキャリアでも十分に活かすことができます。
実際、法科大学院出身者が大手企業に就職する例は少なくありません。コンプライアンスが重視される近年では、法律知識のある人材は積極的に採用される傾向にあります。
また、司法試験で学んだ知識は、法律の試験が行われる公務員試験の受験においても十分活かすことができます。司法試験から国家公務員や都道府県庁、大都市の役所にキャリアチェンジされ活躍されている方もとても多いです。
司法試験に合格できなかったとしても、合格のために真剣に努力をしたのであれば、その知識や経験は決して無駄になることはありません。
※弁護士と公務員試験の両にらみ受験については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→弁護士と公務員のどっちを目指せばいいの?合格しやすさや勉強方法について解説
2-5.弁護士はやりがいのある職業である
弁護士は業務量も多く、大きな責任を担う大変な職業ではありますが、どのような仕事であっても少なからず大変な面があるのは当然のことです。
弁護士という職業は、大変な反面、依頼者から感謝をされ、大きな達成感を感じることができたり、高収入を目指すこともできるなど、多くのやりがいを見出せる職業です。
弁護士の仕事に大変な面があるとしても、それらは全て「やりがい」に繋がっているのです。
弁護士という職業に魅力を感じるのであれば、仕事の大変さは大きな成果として返ってくるものですので、それは司法試験をやめる理由にはならないでしょう。
※弁護士のやりがいについては、こちらの記事で詳しく解説しています。
→弁護士のやりがいとは?仕事内容や大変な点についても解説
→弁護士とは?働き方や仕事内容・一日の流れをわかりやすく解説!
3.司法試験は挑戦する価値のある試験
司法試験には、「やめとけ」と言われる理由もありますが、どの理由にもそれぞれ、「やめなくてよい」理由もあることがわかりました。裁判官、検察官、弁護士といった法曹としてのキャリアや仕事のやりがいに魅力を感じるのであれば、司法試験は挑戦する価値のある試験です。
近年の司法試験は合格率も上昇しており、努力を続ければ十分に合格できる試験と言えます。
司法試験に挑戦する場合は、いつまでに合格するのか、合格したらどうなりたいのかを明確にすることが大切です。そして正しい勉強法で学ぶことが欠かせません。
明確な目標もなく誤った勉強のまま受験を続けると、結果も出せず、チャレンジしたこと自体を後悔するということにもなりかねません。そして、その結果、「司法試験はやめとけばよかった」という気持ちになるのかもしれません。
※法曹の仕事や魅力については、こちらの記事も併せてご覧ください。
→法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)の仕事とは?年収・やりがい・魅力・適性をご紹介!
4.まとめ
「司法試験はやめとけ」と言われる理由に対しては、客観的なデータで十分に反論できるものが多いと言えるでしょう。
「司法試験はやめとけ」と言われたとしても、その理由が正しいのかについてはご自身でしっかりと考えてみてください。なぜ、司法試験を受けるのか。なぜ、法曹を目指すのか。その動機が明確であるならば、他人や世間が何を言ってきても、ブレることなく初心貫徹し、素晴らしい法曹になることができるでしょう。
法曹としてのキャリアは、混沌としたこの時代において、非常に重要かつ魅力的なものであることは間違いありません。もし、あなたが法曹としてのキャリアに魅力を感じるのなら、周りの意見に惑わされることなく司法試験の合格を目指して進んでいただきたいと思います。
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※1(講座内訳:入門講座698名、講座・答練337名、模試401名)
※2(講座内訳:入門講座231名、講座・答練126名、模試48名)
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著者:伊藤塾 司法試験科
伊藤塾司法試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。

伊藤塾 司法試験科
司法試験入門講座
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