学生時代から相談されることが多く、人の話を聴くことが好きでした。友人関係や心の悩み、そして恋の話など…別に何をアドバイスするというわけではなかったのですが、聴いているだけで話した人の気持ちが楽になって、晴れ晴れした顔になる、それがうれしかったです。人の話を聴くのが好きなので、それを仕事にしたいと考え、心理学を学んでカウンセ ラーの道を考えました。あるとき、母校の卒業生の弁護士の講 演会に参加する機会があり、その弁護士の、挫折を経験しながらも、あきらめずに夢をかなえた姿にたいへん勇気をもらいました。その姿に法律家への憧れを感じ、法律のスキルを身につけ職業にしたいと考え法学部へ進学しました。

山村講師の入門講座は難しい法律用語も簡単な言葉に置き換えて説明するので、とても耳に入りやすくわかりやすかったです。また講義の中でも、理解しにくいところは事前に用意されたパワーポイントのスライドで噛み砕いて説明し、大事なところは強調、記憶すべき部分は細かく指示、必要な部分はテキストへの書き込みを示し、ランク付けもはっきりとしていたので、講義中に言われたとおりにするだけで、白黒のテキストが、ラインマーカーや書き込みで、メリハリのついた自分だけのテキストになります。「ここは今からしっかりと記憶しておくように」「ここは今は読み飛ばしていい」など、明確に指示してくれます。多くの合格者を生み出している長年の受験指導経験から、山村講師の指導には信頼感があり、言う通りにすれば合格できると実感して勉強することができました。

このような気持ちで受験した４回目の試験後、私の中では一生消えることのない事件が起こりました。まさか私が犯罪被害に遭遇するなんて…思ってもみませんでした。試験の継続を決めて勉強も再開していたある日のことでした。やはり受験勉強に大きく影響し、毎日勉強はするのですが、上の空で気付いたら違うことを考えていたり、常にびくびくする不安な毎日でした。道を歩いていても背後が気になり、電車に乗っても壁に張り付き、いつもいつも、周囲に最大限の注意を払う生活でした。体の怪我は治っても、心の傷はいつまでたっても癒えず、私の心から離れてはくれませんでした。眠れなくて、精神的に不安定なころは、「自分が精神的に弱いから」「今まで試験に対し本気になっていなかったから罰があたった」「自分が悪いからこんな被害にあった」このころは加害者を責めるより、自分を責める時間が一日の大半を占めていました。こんな調子で受験勉強が本当に辛かった、でも司法書士試験に合格したいという気持ちは消えませんでした。平穏な生活は当たり前に続くわけではない、私はどんな人生を送りたいのか改めて考えました。答えは「司法書士になって、周りの人が平穏な生活を送れるようお手伝いがしたい」。今思うと、この「司法書士になりたい」という気持ちがあったから毎日生きていけたのかもしれません。やりたいことがなかったら、生きることをあきらめたかもしれない、でも「合格すると決めたから絶対に勉強しなければいけない」この目標を生きる糧に、私は救われました。

気持ちが少しずつ、おさまった試験直前、犯人が逮捕されました。少しだけ“けじめ”がつき、受験を控えた私は「この事件を言い訳には絶対しない」と誓いました。そして試験直前は本当の意味で“本気の受験勉強”をしました。その年は残念ながら合格できませんでしたが、今までとはまったく違う成績手応えでした。そして苦難を乗り越え、今年無事に合格することができました。

今も思い出したくない事件ですが、この出来事で私は本気になれました。そして司法書士としての大きなミッションを与えられたような気がします。あたたかく接してくれた刑事さんや心理カウンセラーの先生とのお話の中で、私は今までの心の葛藤を振り返ることができ、少しだけ成長することができました。「今は辛いと思うけれど、これから先は、それを乗り越えられるくらい幸せになってほしい。この経験で誰よりも人にやさしくなれる、あなただからできることを探してください」この言葉は一生忘れません。そして私は、私の幸せと同じくらい、周りの人の幸せのために司法書士として働く“本気の覚悟”ができました。