アウトプットをするためのインプットは重要ですが、インプットをするためにアウトプットをすることも有益です。
西前 勇樹さん(23歳)
【合格校】
・中央大学法科大学院(既修)
【受講講座】
入門講座本科生+リーガルトレーニング、適性試験模試、中央ロースクール突破小教室、東大ロースクール突破小教室 など
※プロフィールは、2010年合格時点のものです。
はじめに
まだまだ偉そうなことを述べられる立場ではありませんが、私の経験がこれからのロースクール受験生の一助になればと思い筆を執らせて頂きました。何かご参考になる点があれば幸いです。
私は、幼い頃から自分の正義を実現することのできる職業に就きたいと考えていました。そして、法律と言葉と論理をもって人を説得するという法曹の仕事に魅力を感じていました。そこで、大学2年次の夏にWスクールを決意し、いろいろな受験指導校を比較した結果、インターネット講義やフォロー制度の充実度、テキストのわかりやすさなどにおいて、伊藤塾が最も優れていると感じたので入塾しました。できればもう少し嗅覚を鋭くして1年次から入塾できていれば良かったと思います。
私がとった勉強方法
適性試験対策について
私は、過去問と模試を繰り返し、自分の思考の癖、得意な出題形式、不得意な出題形式を記録しました。圧倒的短時間で解答しなければならないという適性試験の性格上、私はその記録を基に、偏った思考回路は適宜修正して、最短距離で正解に辿り着く練習をし、不得意な問題は思い切って捨てて、得意な問題は全問拾い、最後まで解ききることを意識しました。その結果、本番でも門前払いされる心配はない程度のスコアを取ることができました。周囲を見ていても上位20%に入れれば適性試験は問題ないと思います。
法律科目対策について
(1) 短答試験対策
短答試験は膨大な量の知識が必要となります。そこで、私はまず、それらを集約して情報の一元化を行いました。そうすることで、情報への円滑迅速なアクセスが可能となりますし、一元化の作業過程において理解も深まります。ここで、情報の集約先としておすすめなのが「情報シート」です。これは間違いありません。私は非常に重宝しました。早期にこのツールを準備し、7科目全て使いこなせるようになっていれば短答試験は問題ないでしょう。さらに、論文試験においても短答試験の知識を使うような問題が出る場合もあるので、条文ベースの「情報シート」で普段から勉強をしておくことは有意義だと思います。
また、最新判例講義は役に立ちました。この講義を受けていただけで数点は稼ぐことができました。内容的にも非常に面白かったのでおすすめします。
(2) 論文試験対策
まず、憲法、民法、刑法、商法については相当難易度の高い問題が出る場合もあるので、予め答案の型を用意しておいて、単純にそれにあてはめて終わりというスタンスでは到底太刀打ちできないことはわかっていました。現場で考えさせられる出題に対応しなければなりません。そのためにも、まずは磐石な基礎だと思いました。そこで、私はまず、基礎マスターで使用する「入門講義テキスト」と、前述の「情報シート」で各制度、理論、条文の趣旨を押さえました。次に、「論証パターン集」で必要最低限の論証を暗記しました。必要最低限の論証が頭に入っていればあとは自分が理解している制度、理論、条文の趣旨からいかに考え抜くかという点に尽きます。そして、その思考過程を三段論法にのせて論じれば少なくとも壊滅することはないと思います。今になって、基礎マスターにおける学習、特に趣旨などの大枠を掴むという学習が後の学習に大きな影響を与えていると実感しています。
次に、民事訴訟法、刑事訴訟法については比較的典型的な論点が問われていると分析していました。そこで、これらの科目は「論証パターン集」が有効であると思い、ひたすら、これを暗記していました。実際に受験してみて、上位校であってもこれを正確に表現するだけで合格は堅いと実感しました。私は、特に定義と趣旨を正確に述べて採点者にアピールしようと思ったので、定義と趣旨の正確性には神経を使いました。
そして、行政法については端的に定義を問うてくる出題が見受けられたので、これも定義を正確に覚えました。ただ、行政法はなかなか勉強が間に合わず、特に中央大学法科大学院のように試験日が早いロースクールで、短答、論文と7科目の出題があるところでは、定義の暗記が精一杯でそれ以上のことはできませんでした。もっとも、それでも合格できたので周囲のレベルもそこまで高くないのだと思います。
どの科目においても重要なことは答案を実際に書くことです。アウトプットをするためにインプットをすることが必要なのは言うまでもないことですが、実は、インプットをするためにアウトプットをすることは非常に有益です。最初は、私もインプットが一通り終わってから答案を書き始めようと考えていましたが、それでは一生終わりません。実際に答案を書こうとしてみて書けない自分に直面し、必死に考え抜いて何とか書き上げてから解答を読んで納得して、そこで初めてインプットができた気がします。まずは書いてみることです。私は、友人に恵まれていたため週に2回ほど集まって答案を8~10通書き、互いに見せ合い、良いところはまねし、改善点は指摘し、よくわからない点は議論しました。自分と同レベル、あるいは、それ以上のレベルの友人を見つけて勉強会を開くことはとても有意義であると思います。
パーソナル・ステートメント対策について
私は、学部3年次、4年次に交渉や仲裁といったADRについて実践的な勉強をし、インターカレッジ・ネゴシエーション・コンペティションに参加するなどの活動を行っていたので、ネタには困りませんでした。むしろ、自分の頑張ってきたことを表現できる機会として捉えて、積極的に作成することができました。他にも留学経験やボランティア活動など、学部時代に法律の勉強以外に取り組んできたことがある方は何ら心配する必要はないと思います。現在学部生の方は法律以外に自分が興味を持っていることもおろそかにしないで頑張ってください。
学部成績について
私の一番の後悔は学部成績です。私は、優を取りやすい科目よりも、難しくても自分の興味のある科目を優先して履修したり、家が遠いこともあって1限や2限の科目をできるだけ履修しないようにしていたりと勝手気ままに履修を組んでいました。その結果、学部成績は周囲から遅れをとる形になってしまいました。ですから、学部生の方は少しでも優が取りやすい科目を履修して貪欲に優を取りにいくべきです。結果的には私は合格できたので本番の法律試験ができれば学部成績は多少悪くてもいいのかもしれませんが、受験生としては不安材料があると精神衛生的にもよくないと思いますので、学部成績はできる限り良くしておいください。
志望校の選択について
私は、司法試験の合格率、合格者数、教育力、自分の将来像の4つの観点から中央大学法科大学院を選択しました。自分の将来像や興味のある分野がまだはっきりとしていない方は、とりあえず伊藤塾長や他の講師の方がいわゆる上位校と仰っているところに入学しておけば間違いないと思います。
直前期と試験当日
直前期はリラックスすることを心がけました。あまり根を詰めずに、のんびり紅茶を飲みながらテレビでも観ていればいいと思います。
私が警鐘を鳴らしておきたいのは試験当日です。それも試験開始後です。私は、中央大学法科大学院入試の1科目目の民事訴訟法で、事前に友人と予測し実際に書いていた問題が見事に的中しそのまま出題されたので有頂天になり、あと6科目残っているにも関わらず、浅はかにも勝利を確信していました。そして、意気揚々と2科目目の民法の問題を開くとまさに青天の霹靂です。今思うとあれは受験生全員が面食らったと思いますが、私は本当に顔面蒼白になり、3分くらい思考停止状態に陥りました。「不合格」の3文字が頭をよぎりました。ここでの行動が合否の分かれ目になったと思います。血迷って出題者の意図を無視して無関係なことを書きまくるか、諦めて白紙答案で提出するか、何とか条文に食らいついて趣旨に遡り妥当な結論を導き出そうと努力するか。どれが合格に近いかは明白です。私の隣の席の人は民法を白紙で提出し、翌日の公法系、刑事系の試験には来ていませんでした。
試験では何が起こるかわかりません。まさに直前に見ていた問題が出ることもあれば、奇妙奇天烈な問題が出ることもある。適性試験では開始2分後に地震がありました。どんな状況でもその時のベストを尽くせるよう自分をコントロールする。そして、絶対に最後まで諦めない。これに尽きます。
最後に
この場を借りて、お礼の言葉を述べたいと思います。私は本当に環境に恵まれていました。私を信じてずっと支えてくれた家族、親戚、友人には心から感謝しています。ありがとうございました。まだやっと登山口に立つことができたにすぎない若輩者ですが、立派な法曹になるべく精進します。あと2年間、感謝の気持ちを忘れず、愚直なまでに勉強しようと思いますので、もうしばらく見守っていてください。
(2010年9月・記)