行政書士試験の難易度ランキングや偏差値は?合格するとすごいと言われる理由も解説
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行政書士試験の合格率は例年10〜12%前後とかなり低い数字で推移していますが、受験資格に制限がなく、誰でも受験することができる試験です。
また、合格基準が明確な絶対評価の試験であることから、法律初学者であっても比較的チャレンジしやすい資格試験であると言えるでしょう。
それでは、行政書士試験は、社会人や主婦などの兼業受験生でも、合格できる試験なのでしょうか。
この記事では、行政書士試験の難易度が高い理由や他の資格試験との難易度ランキング、初心者が最短で行政書士試験に合格する方法などについて、わかりやすく解説していきます。
この記事を最後まで読んでいただき、行政書士試験に興味を持っていただければ幸いです。
【目次】
1.行政書士試験の難易度は高い?合格するとすごい?
1-1.行政書士試験の合格率は10〜12%前後
1-2.行政書士試験の難易度を大学や偏差値で例えるとどれくらい?
2.行政書士試験の難易度が高い理由とは?
2-1.クリアすべき合格基準点が3つある
2-2.多岐に渡る知識を満遍なく身につける必要がある
2-3.兼業受験生は勉強時間の捻出が難しい
3.他士業も含めた難易度ランキング
4.合格までの勉強時間の目安とは?合格までに何年かかる?
5.行政書士試験に初心者が合格するためのポイント
5-1.効率的な学習スケジュールを立てる
5-2.法令科目は民法と行政法を重点的に
5-3.基礎知識は基準点クリアを目指す
5-4.過去問を繰り返して知識の定着を図る
6.行政書士試験なら学生から社会人・シニア層まで幅広い年齢層の方が合格できる
6-1.大学や学部に関係なく合格可能
7.行政書士試験に独学で合格することは可能?
8.まとめ
1.行政書士試験の難易度は高い?合格するとすごい?
行政書士試験は、司法試験や司法書士試験などの法律系の難関国家資格の中でも、とくに登竜門的な位置付けにある国家資格であり、合格するためにはそれ相応の努力が必要となり、合格することはすごいことと言ってよい試験でしょう。
それでは、実際にどれくらい難しい試験なのか、合格率を通して確認してみましょう。
1-1.行政書士試験の合格率は10〜12%前後
行政書士試験の合格率は、例年10〜12%前後で推移しており、2022年(令和4年)に行われた行政書士試験の合格率は、受験者数47,850人に対して、合格者数が5,802人で、対受験者数合格率は12.13%でした。
国家資格のなかでも人気が高い行政書士試験は、毎年多くの人が受験する試験です。
しかし、合格率だけ見ると、100人受験したら90人前後は不合格となる難関試験だということになります。
※行政書士試験の合格率については、こちらの記事もご覧ください。
→行政書士試験の合格率はどのくらい?合格率が低い理由や推移についても解説
1-2.行政書士試験の難易度を大学や偏差値で例えるとどれくらい?
偏差値計算式によると、上位10%を偏差値に換算した場合、62.8〜62.9といわれています。
この理論から、合格率10〜12%前後の行政書士試験の難易度を偏差値で例えると、60〜62くらいといえるでしょう。
単純に、偏差値60〜62という数字だけ見れば、大学入試においては難関大学入試と同じくらいの難易度の試験だといえます。
ただし、行政書士試験は誰でも受験できる試験であり、いわゆる記念受験者が多数いる試験でもあることを考えると、全体の合格率はどうしても下がりがちです。
つまり、行政書士試験の本当の意味での難易度は、合格率でイメージするほど高くはないと言えるでしょう。
2.行政書士試験の難易度が高い理由とは?
一般的に難易度が高いと言われている行政書士試験ですが、難易度が高い理由は具体的にどこにあるのでしょうか。
ここでは、行政書士試験の難易度が高い理由を3つ解説していきます。
2-1.クリアすべき合格基準点が3つある
行政書士試験は、大きく「法令等科目」と「基礎知識科目」の2つに分けることができます。
行政書士試験では、①「法令等科目」、②「基礎知識科目」、③全体の得点数それぞれに合格基準点が設定されており、3つ全てで合格基準点を超えない限り、合格を手にすることはできません。
3つの合格基準点の詳細は、次の通りです。
① | 行政書士の業務に関し必要な 「法令等科目」の得点が、 満点の50%以上である者 | 満点:244点 合格基準点:122点 |
② | 行政書士の業務に関連し必要な 「基礎知識科目」の得点が、 満点の40%以上である者 | 満点:56点 合格基準点:24点※ |
③ | 「試験全体の得点」が、 満点の60%以上である者 | 満点:300点 合格基準点:180点 |
※56点の40%は22.4点ですが、1問4点のため合格基準点は24点となります。
参照:令和4年度行政書士試験合否判定基準
法令等科目および基礎知識科目で合格基準点を満たしていたとしても、全体で6割以上の点数を取れないと不合格となります。
たとえば、法令等科目で合格基準点である122点、基礎知識科目で24点取れたとしても、合計点は146点となるため、全体の合格基準点である180点には34点足りないことになります。
そのため、法令等科目および基礎知識科目で34点分の上乗せをしなくてはいけないことになりますが、基礎知識科目は、出題範囲が広く、事前に高得点をとるための対策がしづらい科目となります。
したがって、配点が高い民法や行政法でどれだけ総得点を伸ばせるかが、合格へのカギとなるでしょう。
2-2.多岐に渡る知識を満遍なく身につける必要がある
行政書士試験の試験範囲は多岐に渡り、広範な範囲の知識を満遍なく身につける必要があります。
具体的な試験科目は次の通りです。
行政書士試験の試験科目 | ||
法令等 | 基礎法学 | |
憲法 | ||
民法 | ||
行政法 | 一般的法理論・統合 | |
行政手続法 | ||
行政不服審査法 | ||
行政事件訴訟法 | ||
国家賠償法・損失補償 | ||
地方自治法 | ||
総合問題 | ||
商法 | ||
基礎知識 | 一般知識 | |
行政書士法等行政書士業務 と密接に関連する諸法令 | ||
情報通信・個人情報保護 | ||
文章理解 |
法令等科目から46問、基礎知識科目から14問、合計60問出題されます。
これら、試験科目で必要とされる知識は多岐に渡るため、効率よく勉強を進めなければ、そもそも試験当日までに試験範囲全体を一通り学習することすら困難であると言えるでしょう。
2-3.兼業受験生は勉強時間の捻出が難しい
仕事や家事の合間を縫って合格を目指す兼業受験生にとって、勉強時間を確保すること自体が難しく、その点も、行政書士試験の難易度を高くする要因の一つであると言えるでしょう。
行政書士試験は、学生でも社会人でも主婦でも合格できる試験です。
そのため、毎年多くの兼業受験生が行政書士試験にチャレンジしていますが、試験当日までに十分な勉強時間を確保できない受験生も大勢います。
つまり、専業受験生が多い資格試験に比べて、どうしても全体の合格率が下がってしまうのは、やむを得ないといってもよいでしょう。
ただし、働きながらでも、効率の良い学習ができれば、短期間での合格も十分可能な試験です。
3.他士業も含めた難易度ランキング
行政書士試験の難易度は一般的に高いと言われていますが、他の資格試験に比べてどれくらい難しい試験なのでしょうか。
ここでは、行政書士試験の具体的な難易度を掴むために、合格率について、他の法律系資格試験と比較してみたいと思います。
試験名 | 合格率 |
司法試験 | 20〜45% ※受験資格あり |
司法書士試験 | 4〜5% |
中小企業診断士試験 | 3〜8% |
弁理士試験 | 5〜10% |
社会保険労務士試験 | 6〜7% |
土地家屋調査士試験 | 8〜10% |
行政書士試験 | 10〜12% |
宅地建物取引士資格試験 | 15〜17% |
受験資格のある司法試験を除き、行政書士試験は他の法律系資格試験と比べると、合格率がやや高めなことが分かります。
もちろん、試験ごとに試験制度や試験科目が異なるため、合格率のみで一概に難易度を比較することはできません。
しかし、合格率10%と聞いてイメージするほど難易度の高い試験ではなく、むしろ絶対評価の試験で合格基準点が明確であるため、誰でも合格を目指せる試験だといってよいでしょう。
4.合格までの勉強時間の目安とは?合格までに何年かかる?
行政書士試験に合格するために、一般的には600〜1,000時間程度の勉強時間が必要だと言われています。
時間で言われてもピンとこないかもしれませんが、これは、たとえば平日2時間、週末に4時間勉強したと仮定すると、最短で約11ヵ月で合格できる計算になります。
もちろん、合格までに必要な勉強期間は人それぞれで、法律初学者が独学で勉強するのであれば、1年以上の勉強期間が必要な場合もあります。
逆に、受験指導校を利用して効率よく学習を進めた場合、半分程度の時間で合格できる可能性も十分あります。
5.行政書士試験に初心者が合格するためのポイント
行政書士試験に初心者が合格するためには、次のポイントを意識して勉強することが合格への近道となります。
行政書士試験に初心者が合格するための4つのポイント |
◉効率的な学習スケジュールを立てる ◉法令科目は民法と行政法を重点的に ◉基礎知識は基準点クリアを目指す ◉過去問を繰り返して知識の定着を図る |
初心者でも効率よく勉強すれば、最短で行政書士試験に合格することが可能です。
ここからは、それぞれのポイントについてくわしく解説していきます。
5-1.効率的な学習スケジュールを立てる
法律初学者が最短で行政書士試験に合格するためには、無駄のない効率的な学習スケジュールを立てて、その計画を粛々と進めていく事が重要です。
行政書士試験の試験範囲は広く、ただがむしゃらに勉強をしても合格できる試験ではありません。
学習スケジュールを立てる際は、できるだけ具体的に計画を立てるようにしましょう。
たとえば、日、週、月、3ヵ月、6ヵ月、試験1ヵ月前など、目標設定を細かくする事で、より効果的な学習をする事ができます。
また、細かい目標をいくつか立てる事で、それぞれの目標を達成した際の達成感を味わえるため、合格までのモチベーションを保つ事ができます。
5-2.法令科目は民法と行政法を重点的に
学習スケジュールを立てる際は、法令等科目の行政法および民法を重点的に学習するようにしてください。
行政書士試験では、法令等科目で5割以上得点する必要があり、とくに行政法と民法は高い配点となっています。
具体的には、法令等科目の満点が244点、合格基準点が122点となっていますが、そのうち、行政法の配点は112点、民法の配点は76点となっており、これは法令等科目中の77%、試験全体の63%を占める割合となっています。
つまり、試験戦略として、基礎法学、憲法、商法に関しては、基礎的な問題を取りこぼさないようにして、行政法および民法でできる限り得点を稼ぐというのが、合格基準点をクリアするためのポイントになってくるのです。
5-3.基礎知識は基準点クリアを目指す
対策のしやすい民法、行政法で得点を稼げば、行政書士試験の合格基準点をクリアすることは十分可能です。
一方、基礎知識科目に関しては、出題範囲が広範な割に、出題される問題を予測しづらく、しかも配点が少なく設定されています。
仮に、基礎知識科目で高得点を取ろうと思うと膨大な時間を使うことになってしまうため、最短での合格を目指すのであれば、基礎知識科目にそこまで労力を費やすべきではありません。
そのため、基礎知識科目では、合格基準点である24点以上(14問中6問以上)の得点を目指し、不足分の得点は、配点の高い行政法や民法で稼ぐようにしましょう。
配点の高い法令科目の勉強時間を減らさないようにするのがポイントです。
5-4.過去問を繰り返して知識の定着を図る
参考書やテキストでインプットした知識は、過去問を通してアウトプットすることで、知識の定着を図る事ができます。
なかには、インプットが完全に終わってから過去問を解き始めるという人もいますが、早い段階からアウトプットの訓練をしておかないと、初めの方に勉強したことを忘れてしまう可能性があります。
また、過去問に早い段階から取り組む事で、試験本番の傾向や出題形式を知る事ができ、問題演習を通して自分の弱点を知る事ができます。
過去問は一度の学習で満点を目指すのではなく、繰り返し解く事で知識の定着を図ることを目的として行ってください。
6.行政書士試験なら学生から社会人・シニア層まで幅広い年齢層の方が合格できる
行政書士試験は法律家になるための試験ですが、司法試験や司法書士試験のように難しい法律知識が問われる試験ではなく、基礎的な法律知識があれば十分に合格できる試験です。
また、受験資格に制限もなく、幅広い層の方が試験にチャレンジすることができます。
さらに、社会人であれば、民法や商法について具体的にイメージしやすいこともあり、スムーズに勉強を進める事ができ、行政書士試験に合格した後も、実務の世界ですぐに活躍する事ができるでしょう。
もちろん、合格までには一定の勉強時間を確保する必要がありますが、スキマ時間をうまく活用し、モチベーションを最後まで保つ事ができれば、行政書士試験は学生から社会人・シニア層まで幅広い年齢層の方が合格できる試験なのです。
6-1.大学や学部に関係なく合格可能
誰でも合格できる試験だということは、出身大学や出身学部に関係なく合格できる試験だと言うことです。
実際、2022年(令和4年)に行われた試験では、最年少合格者が15歳となっており、中学3年生〜高校1年生でも合格できる試験である事が分かっています。
もちろん、法学部出身であれば、法律の勉強に取り組みやすいことは確かです。
しかし、たとえ今まで法律を学んだ事がない人であっても、正確な基礎知識を身につけることを意識して勉強を続けていけば、年齢関係なく合格レベルまで到達することができるのです。
7.行政書士試験に独学で合格することは可能?
行政書士試験は、法律系の資格の中でもチャレンジしやすい資格であり、独学で合格することは、不可能ではありません。
しかし、今までに法律を学んだ事がない人が最短で合格を目指すのであれば、受験指導校を利用し、より効率的な勉強をする事が、合格への近道になると言えるでしょう。
行政書士試験では、民法や行政法などの法律に関する問題が出題されます。法律の学習は専門用語も多く、法律初学者は難解さを感じてしまうかもしれません。
また、行政法や商法などは、実務経験がないとイメージしづらいことも多く、法律初学者が独学で学ぶにはかなりハードルが高いと言えるでしょう。
その点、受験指導校を利用すれば、効果的に学習するための効率的なカリキュラムをこなしながら、知らず知らずのうちに実力をつける事が可能です。
また、分からないことがあればすぐに講師に質問する事ができるため、「分かったふり」で学習を進めてしまうことを避ける事ができます。
何より、定期的に講義を聞いたり、模試を受けたりすることで、合格まで勉強のモチベーションを保つ事ができます。
行政書士試験で何よりも難しいのは、合格まで勉強のモチベーションを保つ事が難しいところにあります。
受験指導校の費用を気にして独学で勉強を始めたはいいものの、法律の勉強が難しい、周りに質問できる人がいなくて挫折してしまった、などとなれば、それまでの勉強時間が無駄になってしまいます。
時間を有効活用するためにも、行政書士試験合格には受験指導校を活用することをおすすめします。
8.まとめ
行政書士試験の合格率は例年10〜12%前後となっており、一般的には難易度の高い試験であると言えるでしょう。
しかし、記念受験が多いことや、絶対評価の試験であることを加味すると、行政書士試験は、法律系の国家資格の中でもチャレンジしやすい試験だと言えます。
最短で合格するためには、正しい方向での効率的な学習を継続することが一番の近道です。
逆に言えば、誤った方向の努力をいくら続けても、合格を手にすることはできません。
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著者:伊藤塾 行政書士試験科
伊藤塾行政書士試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの行政書士試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、行政書士試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。
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