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第37号 寄付講座を終えるにあたって

堀越 貴恵 東京大学 寄付講座「難民移民(法学館)」スタッフ

株式会社法学館/伊藤塾による東京大学寄付講座「難民移民(法学館)」は、2010年度から5年間にわたり,難民移民にかかる研究教育を行なってきました。同社による寛大な寄付を得て継続してきたものですが本年、3月31日をもって終了します。
これを記念して、同講座が支援してきた東京大学大学院「人間の安全保障」プログラムとCDR(難民移民ドキュメンテーション・プロジェクト)の共催という 形で、同講座最後のイベント「日本の難民政策の現状と課題:国際公共財の観点から」と題するセミナーが開催されました(2月28日、東京大学駒場キャンパ スにて実施)。
 同講座の活動に参加、また協力をいただいた方々をはじめ、約50名にご出席いただき、満席の会場で熱気のある議論が展開されました。
この企画は滝澤三郎同講座特任教授(東洋英和女子学院教授)のアレンジによるもので,冒頭,来賓代表としてUNHCR(国連難民高等弁務官)執行委員会の議長経験のある、藤崎一郎前駐米大使にご挨拶をいただきました。
その後パネルセッションの形で、外務省国際協力局緊急・人道支援課長,内閣官房副長官補付主査、法務省入国管理局難民認定室長の御3名から、それぞれの立場で、難民政策の現状と課題についてご報告いただきました。
その報告に続いて、伊藤真法学館館長(伊藤塾塾長)から、憲法理念が難民政策に極めて重要であるとのご指摘を、法務省人権擁護局長からは、人権の観点から ストップ・ヘイトスピーチなど外国人の人権を尊重することが重要だとのコメントを、さらに山本哲史同寄付講座特任准教授から、国際法研究者で難民認定参与 員としての立場から言及がありました。
フロアからの質疑も飛び交い、最終イベントに相応しい建設的な議論が展開されました。
 場所を移したレセプションでは、伊藤館長とCDRスタッフらへの謝意を表する花束贈呈があり、ミャンマー難民(ビルマ族、カレン族)がオーナーシェフを 務めるレストランから提供された民族料理やベトナム少数民族の地酒を堪能しながら、セミナーに引き続いて忌憚のない議論と交流が行なわれました。
多くの参加者から寄付講座の終了を惜しむ声が上がり、寄付元(法学館/伊藤塾)が司法試験受験生の減少という極めて厳しい環境の中にもかかわらず、寄付を継続いただいたことが賞賛されました。
 日本には未だ包括的な難民政策も、これを主に所管する政府部局もない状況であります。
同講座が支えてきたCDRを中心に官・民・産・学の連携のためのプラットフォームを設置して、今後も関係者間の情報意見交換のための対話を継続し、包括的統合的な難民政策のための必要な協力が期待されます。
ここに改めて、上記の方々はもちろん、同講座に参加し、また研究教育に貢献し、支援をされてきた関係者の方々に厚く御礼を申し上げるとともに、この成果を もって、今後ますます難民移民にかかる研究教育が日本で発展し、より良い政策立案と実施につながっていくことを祈念します。
 なお,本講座の成果物は、今後も必要に応じて活用・公開し、一般の方々からの要請に応じられる限り提供できるよう、引き続き努力を重ねていく所存であることを申し添えます


 
伊藤塾塾便り235号/HUMAN SECURITYニュース(第37号 2015年3月発行)より掲載