明日の法律家講座 バックナンバー
明日の法律家講座 東京校第312回
2022年2月12日(土)実施
数学書として憲法を読む~コロナ等現下の諸問題を視野に入れて
当日はZoomウェビナーでの開催となりました。
秋葉先生より特別に公開のご了解をいただききましたので、こちらでご覧ください。
講師プロフィール
秋葉 忠利 氏(あきば ただとし)
(原水禁国民会議顧問、広島県原水禁代表委員、前広島市長、数学者)
世界のジャーナリストを広島・長崎に招待し、被爆の実相を伝えて貰う「アキバ・プロジェクト」を創設・運営。広島修道大学教授を経て、 1990年から衆議院議員、 1999年から広島市長を 3期12年務める。2014年まで広島大学特任教授、 AFS日本協会理事長。
市長在職中、平和市長会議会長を務め。世界の加盟都市数を 440から 5,000以上に。市政では財政再建、情報公開、市民サービス、都市環境などに力を入れ、暴走族追放条例、新球場建設を実現、オリンピック招致にも取り組んだ。
2010年には、アジアのノーベル賞といわれる「マグサイサイ賞」、 2011年には、ネパール政府創設のゴータマ・ブッダ国際平和賞、 2013年にベルリン国連協会からアジア人として初のオットー・ハーン平和賞、 2015年に谷本清平和賞等、多数の平和賞を受賞。
著書に『真珠と桜-「ヒロシマ」から見たアメリカの心』(1986年朝日新聞社刊)、『ヒロシマ市長』(2012年朝日新聞出版刊) 、『新版 報復ではなく和解を』(2015年岩波書店刊)、『数学書として憲法を読む』(2019年法政大学出版局刊 )他
講師からのメッセージ
2019年7月に『数学書として憲法を読む――前広島市長の憲法・天皇論』 (以下、『数学書』と略) という、変ったタイトルの本を法政大学出版会から上梓しました。「数学」という言葉を聞いて拒否反応の出る人が多いかも知れませんが、「数学書として読む」とは、書かれていることを素直に読むことなのです。
それを次のようにまとめておきましょう。(1)言葉の一つ一つの意味を定義・確認して、その意味通りに読むこと、そして(2)書かれている文章を論理的に理解して、その文章から論理的に導かれる結果を大切にする。
その結果として、皆さんが最初に憲法に触れた時の新鮮な驚きと感動を再体験して頂けるはずです。
しかしながら、現在広く受け入れてしまっている裁判所の確定判決や定説・通説では、このような素直な読み方が行われていないのです。例えば、(1)「99条の憲法遵守義務は法的義務ではなく、道徳的要請である」という解釈や(2)「死刑は合憲である」という判決、さらにこのような解釈の「根拠」として使われている「説明」です。
「数学書として読む」試みの結果、これらの通・定説や判決は、「定義から逸脱」、そして「論理矛盾」両者の典型であることが分りました。
それは、単に論理的な意味で、つまり現実の社会とは関係のない、仮に「数学的」と呼ぶ世界での出来事として重要であるだけでなく、現実の政治や社会とも深く関わっています。ですから憲法解釈において、定義と論理という数学の基盤とも言うべき原則をもっと尊重すべきではないのか、という問題提起につながるのですが、今回の講演では、「定義からの逸脱」と「論理矛盾」の典型例を見て行きます。