明日の法律家講座 東京校第322回

2022年12月3日(土)実施

司法通訳の現状・課題と展望~自分の経験を踏まえて~

 

講師プロフィール

天海 浪漫 氏
((社)日本司法通訳士連合会 代表理事・司法通訳士(2019年認定を受けた)・元伊藤塾塾生)

天海 浪漫 氏
1960年 中国内蒙古生まれ、上海育ち。小中高の時代、とても辛い人生の試練を受けた。
大学卒業後、青春の情熱をもって社会を変えようと思い、夢を追い続けた。
結局、夢は夢のままで現実にならなかったが、社会を変えるよりも、自分に合う社会を選ぶ方がよほど簡単だと悟った。
それで、涙を呑み、故郷に背中を向け、振り向かないまま国境の外へと旅立った。
1992年 人生を変えようという一心で中国から来日。
日本語学校に通いながら、同年(!)弁護士会の通訳として登録、その後裁判所の通訳も登録。数年前検察庁の通訳にも登録した。捜査・弁護・法廷の通訳をすべて経験し、司法通訳歴は30年を超える。
2000年伊藤塾に入塾、司法試験本科生コース、2004年さらに行政書士コース。伊藤塾での在籍期間は6年。

【主な活動】  
伊藤塾で学んだ知識を活用した結果。
2005年 東京国際人権協会を立ち上げ、在日外国人をサポートする活動を開始、今も継続中。
2009年 日本司法通訳士連合会を立ち上げる。
同年11月 全国初の「司法通訳技能検定試験」を創設、試験的に実施。
2010年~ 年1回の「司法通訳技能検定試験」を本格的に開始、今年までで13回を実施。
2019年  念願の「司法通訳士認定試験」を創設し、「司法通訳士」という民間資格を誕生させる。

講師からのメッセージ

伊藤塾に入塾したとき、私の人生はまさにドン底だった。伊藤塾は私を救ってくれた。
1999年の秋、突然アクシデントで、我が家は母子家庭となった。そのとき、私はビザ(在留資格)がない、国保がない、就労資格がない、扶養してくれる家族もいない…それだけではなく、わずか1歳の息子(日本国籍)を養わなければならない…在日外国人にとっては、人生に最悪の局面を直面した。
数か月後、偶然に伊藤塾(当時「伊藤真の司法試験塾」という)のことを知り、塾長の「無料講座」を聴きに行った。
私は教室一列目真ん中の席を選び、塾長の目の前に座っていた。私が講座を聴きに行った動機は、法律に興味があったのは勿論ですが、真の動機は、法律を学び、それを武器にして、自分に理不尽なことをしてきた、公権力を掌握している人たちをやっつけることだった。当時、塾長が講義で最初に言った言葉は今でも覚えている。塾長が言ったのは、「…もし、復讐とかの目的でこの講座を聴きに来たら、今すぐ帰る方がいい。ここの法律講座は復讐のためのものではない…」塾長の目の前に座っていた私が、それを聴くと、居ても立っても居られなくて、自分の心が塾長に覗かれたようで、恥ずかしくて机の下に潜りたかった。塾長の言葉は私の心を敲いているようで、私は塾長の言葉に感動し、復讐の念を捨て、きちんと法律を勉強して社会に役に立つことを決心した。そして、迷わず入塾した。
私は伊藤塾で学んだ法律の知識を司法通訳の仕事に活用し、接見も捜査も法廷も、自白事件も否認事件も、ほぼ支障なく通訳ができるようになった。また、刑事事件に限らず、民事事件・行政事件・少年事件もこなせるようになった。
自分が司法通訳として成長していくうちに、司法通訳人全体の技能と地位の向上のため、何をしたらいいかを考え、そこで、2009年5月21日、裁判員裁判制度発足と同時に、日本司法通訳士連合会を立ち上げた。
私は、仕事上邁進しただけではなく、自分の人生にもドン底から這い上がることができた。だから、「伊藤塾に救われた」と言っても過言ではない。これから、「法曹界における司法通訳の課題の解決策」について皆さんと共に考えていきたい。