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明日の法律家講座 東京校第191回

2012年2月18日(土)実施
 

自殺のない『生き心地のよい社会』をめざして〜自殺対策基本法の策定に関わった経験から〜

【講師】 
清水 康之 氏 (NPO 法人ライフリンク代表、元NHK 報道ディレクター)


講師プロフィール

清水 康之 氏 (NPO 法人ライフリンク代表、元NHK 報道ディレクター)

清水 康之 氏
■NPO法人「自殺対策支援センター ライフリンク」 代表
■自殺対策全国民間ネットワーク 代表
■内閣府「自殺対策推進会議」 委員
■東京都「自殺総合対策東京会議」メンバー
 
1972年生まれ。東京都出身。元NHKディレクター。
在職中は報道局番組部に所属し、主に「クローズアップ現代」を担当。
2001年 自死遺児たちを一年がかりで取材して『お父さん、死なないで~親が自殺 遺された子どもたち~』を放送。それまで匿名で活動していた自死遺児の素顔をはじめて社会に伝えた番組は、大きな反響を呼ぶ。その後も、遺児や自殺で亡くなった人の遺書、自殺対策等について取材を続けるが、「推進役」のいない日本の自殺対策に限界を感じて、2004年春にNHKを退職。自らが自殺対策の「つなぎ役」となって活動していこうと、同年秋にNPO法人ライフリンクを設立し、代表に就任する。
2005年 国会議員会館で自殺対策をテーマにした初のシンポジウムを企画・開催。
2006年 「自殺対策の法制化を求める3万人署名(結果10万人分集まる)」を企画・展開して、『自殺対策基本法』の成立にも大きく貢献する。自殺問題の「社会化」への大きな一歩を踏み出す。
2009年 福島大臣ら政務三役が主導する「自殺対策緊急戦略チーム」メンバーとして内閣府「自殺対策参与」に就任(2011年8月まで)。
2011年 菅総理の指示で発足した「一人ひとりを包摂する社会」特命チームの座長代理に就任。
 
持論は「自殺対策とは『生きる支援』『いのちへの支援』である」ということ。作家やジャーナリスト、法律の専門家や医療関係者、クリエーターや国会議員等との、幅広い人脈を活かして精力的に活動している。
 
共著:『闇の中に光を見いだす』(岩波ブックレット 2010/3)
    『自殺社会から生き心地の良い社会へ』(講談社文庫 2010/3)
 
 
  
 

講師からのメッセージ 

2006年に「自殺対策基本法」が施行され、日本の自殺対策は大きく変わりました。
それまで個人の問題とされてきた自殺が社会問題として認識されるようになり、その対策を社会全体で推し進めていくことになったためです。依然として日本では、年間3万人以上が自殺で亡くなる異常な事態が続いています。しかし、「自殺対策基本法」によって「生きる支援」としての自殺対策が確実に広がってきており、自殺に追い込まれる人も年々減ってきているのです。
私は「自殺対策基本法」の策定に関わった経験から、法律作りとは「社会で生きるための条件整備」だと考えています。誰もが理不尽な死を強要されることなく、それぞれの人生を全うできる環境(条件)を整えること。そのためのツールのひとつが法律であり、その意味で法曹は「いのちの番人」でもあると言えるでしょう。私自身は法曹ではありませんが、これまで法律と関わってきた経験や自殺対策の現状をお話ししたいと思います。