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明日の法律家講座 東京校第221回

2014年6月14日(土)実施
 

今こそ司法を国民、市民の手に!~元裁判官からの提言

【講師】 
瀬木 比呂志 氏(明治大学法科大学院教授、元裁判官)


講師プロフィール

瀬木 比呂志 氏(明治大学法科大学院教授、元裁判官)

瀬木 比呂志 氏
名古屋市出身。
東京大学法学部在学中に司法試験に合格(修習は31期)。
1979年以降 裁判官として東京地裁、最高裁等に勤務、アメリカ留学。
       並行して研究、執筆や学会報告を行う。
2012年    明治大学法科大学院専任教授に就任。
        民事訴訟法、同演習、民事執行・保全法等を担当。
 
 
<著書>
研究の総論『民事訴訟の本質と諸相』、体系書『民事保全法〔新訂版〕』(以上日本評論社〔後者は近刊〕)、実務と法制度の理論的解明書『民事訴訟実務と制度の焦点』、弁護士実務と法的思考に関するケースブック『ケースブック民事訴訟活動・事実認定と判断』、論文集『民事裁判実務と理論の架橋』(以上判例タイムズ社)等のほか、関根牧彦の筆名による『内的転向論』(思想の科学社)、『心を求めて』(騒人社)、『映画館の妖精』(同)、『対話としての読書』(判例タイムズ社)等多数。
特に本年2月発刊の日本の裁判所・裁判官制度の包括的批判『絶望の裁判所』(講談社現代新書)は、司法界に大きな問題提起を行ったのみならず、多くのマスコミ等で取り上げられ、韓国版翻訳が決定し、アメリカ等海外からの反響も高まっている。
 

講師からのメッセージ 

 私は、33年間民事系の裁判官を務め、うち20年余りについては、研究、執筆も並行して行ってきました。しかし、2000年前後から、裁判官の支配、統制が急速に進行し、裁判官たちの能力やモラルが低下するのを肌で感じ、もはや裁判所に自分の居場所はないと考え、いくつかの大学からのお話しがあった中、2012年に明治大学に移りました。
 『絶望の裁判所』は、司法、法律系の書物、新書としてはほとんど初めてといってよいほどの大きな反響を呼びました。部数もありますが、法律家やビジネスマンを始めとするインテリ層の反応はそれ以上に大きく、また、40以上のさまざまなメディアが取り上げ、その扱いも大きなものが多かったのです。さらに、海外からの反響も徐々に出てきています。
 この書物が広く受け入れられた理由の一つは、日本の裁判所、裁判官が抱えるさまざまな問題を、インサイダーとアウトサイダー双方の視点から包括的、構造的に批判、分析した書物がそれまでに存在しなかったことによると考えますが、もう一つの理由として、司法、裁判に対する人々の不信と不満が耐えがたいほどに鬱積していたことがあるのではないかと思います。この講演では、そのような司法の現状、また今後の展望についてお話しし、明日の法律家にとっても他人事ではない問題について一緒に考えていただきたいと思います。