明日の法律家講座 バックナンバー
明日の法律家講座 東京校第245回
2016年4月16日(土)実施
安保法制論議など~冷静と情熱
【講師】
棟居 快行 氏(憲法学者、大阪大学名誉教授)(4月から専修大学法科大学院教授)
講師プロフィール
棟居 快行 氏(憲法学者、大阪大学名誉教授)(4月から専修大学法科大学院教授)
1978年4月 東京大学法学部助手
1981年7月 神戸大学法学部助教授
1991年4月 神戸大学法学部教授
1999年4月 成城大学法学部教授
2004年4月 北海道大学大学院法学研究科教授
2006年10月 大阪大学大学院高等司法研究科教授
2013年4月 大阪大学名誉教授
2016年4月より専修大学法科大学院教授
著書 『人権論の新構成』、『憲法学の可能性』等多数
講師からのメッセージ
「明日の法律家」を目指すみなさんは、まず「法律家に明日はあるのか」を心配されていることでしょう。たしかに、法律家の未来だけでなく、何事にも「当たり前」などということの言えない時代になりました。しかし、だからこそ、法律家特有の多角的な思考力がますます世間から評価されるはずで、時代の不確実さは法律家の未来にとってはむしろバラ色のはずです。日本の内外が仮にものすごく安定していて、「昨日そうであったように今日も明日もそうである。」という社会であれば、法律家はせいぜい先例を熟知した村の長老が務めればすむことになります。しかし、そうではない「先例のない時代」だからこそ、とりわけ若いみなさんがこれから新しいタイプの法律家として「起業」することに大きなチャンスがあるわけです。起こるはずのない事件・事故が起こるかもしれない、と想定して当事者に適切な予防策をさずけたり、事が起きた後であっても、当事者には思いつかないが関係者が納得できる解決策を呈示して紛争の再発を防いだり、全員が納得できなくても規範の前例なき「当てはめ」で論理一貫性を演出しつつ今後の行動指針を呈示したりと、みなさんの活躍すべきフィールドは広く、「教科書」はないでしょう。憲法研究者である私の狭い専門から言えることはわずかですが、「答が一つ」という保障がそもそもない不確実な学問分野に長く棲息してきた者として、多角的なものの見方の可能性、その楽しさをどうやって味わうべきか、裏側から言えば、現実で起きている事柄の前で法律家(憲法研究者を含む広い意味での)はいかに謙虚かつ自立的でなければならないか、について、みなさんに何事かをお伝えできればと思います。