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明日の法律家講座 東京校第251回

2016年9月10日(土)実施
 

政策と立法~集団的自衛権の行使と憲法を題材として~

【講師】 
浅野 善治 氏(大東文化大学法科大学院教授)


講師プロフィール

浅野 善治 氏(大東文化大学法科大学院教授)

浅野 善治 氏
1976年 慶應義塾大学法学部卒業
1976年 衆議院法制局入局
1992年 衆議院法制局 第2部第2課長
1996年 衆議院法制局 第5部第2課長
2000年 衆議院法制局 第3部副部長
2001年 衆議院法制局 第1部副部長
2002年 衆議院法制局 法制主幹
2002年 衆議院調査局 決算行政監査調査室首席調査員
2004年 大東文化大学大学院 法務研究科(法科大学院) 教授
2007年 衆議院調査局 客員調査員
2008年 大東文化大学大学院 法務研究科長
2009年 全国都道府県議会議長会法制執務アドバイザー
2010年 名古屋市法制アドバイザー
2010年 杉並区情報公開・個人情報保護審査会 委員
2012年 自治医科大学ヒトゲノム・遺伝子解析研究倫理審査委員会 委員
2014年 杉並区狭あい道路拡幅整備に関する審議会 委員 等も歴任
 
「貸金業法の解説」(ぎょうせい)、「政府の憲法答弁集」(共著、信山社)等著書多数
 

講師からのメッセージ 

法律というと所与のもの、法律家として求められる能力は、制定されている法律を適切に自在に使いこなすことと考えがちですが、新たな社会問題や政策需要に対処するために、既存の法制度では足りず新たな法制度が必要となる場合も少なくありません。政策と法という観点から法律を捉えたときには、全く何もないキャンバスに法制度を描き、政策を表現するというようなイメージになります。そこでは、法律は、政策を実現するために作りだすものなのです。
昨年、安全保障法制の合憲性が大きな問題となりました。しかし、政策の検討においては、この法制は違憲だと主張することは、この政策をとる手段はないということを意味します。
政策と立法の関係は、まずそこに社会問題が存在し、対処すべき政策需要が生じていることが前提になっています。その政策を実現する手段を探って検討が進められます。A案に憲法上問題があるなら、代替するB案を検討し、それでも問題があるならC案を、というように、その政策が実現できる手段を追求していきます。あらゆる手段を多角的に、多方面から検討し、すべての手段がとり得ないとされたときに、その政策の実現は不可能ということになります。しかし、そもそもの出発点が解決すべき問題が存在するということにあったわけですから、これを解決する社会的に妥当な手段がないということ自体、不思議なことです。つまり、検討を尽くしても何等の手段がないということは、あり得ないというのが通常です。
今回の安全保障政策についても、この政策を実現することは、法理論として不可能だと言い切れるのでしょうか。こんなことを題材にして、これまで立法に携わって感じたこと、苦労したことについてお話ししてみたいと思います。