明日の法律家講座 バックナンバー

明日の法律家講座 東京校第263回

2017年9月9日(土)実施

医療と法律の架け橋をめざして~医療事故・個人情報・認知症高齢者家族の責任を考えながら

【講師】 米村 滋人 氏(東京大学大学院法学政治学研究科准教授、内科医、法学者)


講師プロフィール

米村 滋人 氏(東京大学大学院法学政治学研究科准教授、内科医、法学者)

米村 滋人 氏
1998年 10月 司法試験合格
2000年3月 東京大学医学部医学科卒業
2000年5月~2001年5月 東京大学医学部附属病院非常勤医員(研修医)
2001年6月~2002年3月 公立昭和病院内科レジデント
2004年3月 東京大学大学院法学政治学研究科修士課程修了
2004年5月~2005年8月 日本赤十字社医療センター第一循環器科医師
2005年9月~2013年9月 東北大学大学院法学研究科准教授
2013年10月~ 東京大学大学院法学政治学研究科准教授
【主な著書・論文】
『医事法講義』日本評論社[2016]
「大災害と損害賠償法」論究ジュリスト2013年夏号64頁[2013]
「人格権の権利構造と『一身専属性』(1)~(5完)」法学協会雑誌133巻9号1311頁、12号1956頁、134巻1号80頁、2号277頁、3号407頁[2016-2017]
「損害帰属の法的構造と立法的課題」NBL 1056号30頁[2015]  等多数
 

講師からのメッセージ 

 私は、医学部学生のときに法律家を志すようになり、医師として2年間勤務した後に法学研究の道に入りました。医学と法学の両方を知る者として、医療に関する法律問題を扱いたいと考えた一方で、社会問題を全体として解決する制度づくりに関わる仕事がしたいというのが、研究者を選んだ理由です。実際に仕事をするようになると、学者が立法や政策決定場面に関与する機会はかなり多く、現在は、私が期待していた以上に制度設計に関わることができています。
 私のような人間は特殊だと思われがちなのですが、そうではありません。法律家としてさまざまな仕事をする中で感じたのは、どういう場面でも、「1人の人間として社会とどう向き合うか」が問われているということです。法律の知識は、結局は1つの「道具」に過ぎません。われわれ研究者は法の体系性や理論的整合性を重視することが多く、それはそれで重要ではあるのですが、社会の側から見れば法律の論理だけですべてが決まっているわけではなく、法理論を振りかざしても人々に受け入れてもらえないことはよくあります。法律家自身が、どういう社会を理想と考え、自分はどう生きたいと考えているのか、ということを、社会に向かって丁寧に説明することが重要です。
 法律の勉強とは、先人たちが抱いた「社会の理想像」を理解し、現代社会の中でそれを実現する具体的な法制度を考えるという作業です。法律を学ぶ皆さんには、表面的な知識にとらわれず、そのような法律の背後にある「意味」を考えるようにして頂きたいと思います。それは、皆さんが法曹として活躍するときに、必ず生きてくると思います。
 私は、1998年から数年間伊藤塾の仕事を手伝わせて頂き、多くの方との貴重な出会いがありました。こうして再び伊藤塾に戻ってくることができ、とてもうれしく思っています。皆さんとの出会いも伊藤塾での素晴らしい出会いになるよう、心から期待しています。