明日の法律家講座 バックナンバー
明日の法律家講座 東京校第273回
2018年7月21日(土)実施
『弁護士』から『法律家』へ~訴訟弁護士から無限に広がるフィールド
【講師】 小松 隼也 氏(弁護士、「長島・大野・常松法律事務所」所属、元伊藤塾塾生)
講師プロフィール
小松 隼也 氏(弁護士、「長島・大野・常松法律事務所」所属、元伊藤塾塾生)
2005年 伊藤塾京都校 入塾
2007年 同志社大学在学中に司法試験合格
2008年 同志社大学法学部法律学科卒業
2008年 司法研修所入所
2009年 弁護士登録(第一東京弁護士会)
2009年 長島・大野・常松法律事務所入所
2014年 Fordham University school of Law
専門分野は、訴訟、企業法務、ロビイング、特にビジネス判断に関与する経営戦略的法務を得意とする。
また、アート、ファッション、デザイン、エンタメといった産業に関する見識を活かし、法律相談や契約交渉を数多く手掛ける。
講師からのメッセージ
長島・大野・常松法律事務所の所属弁護士として大規模訴訟や企業法務に関わるかたわら、通常の弁護士の仕事の枠に収まらないような「法律家」としての活動に力を入れています。
具体的には、特定の産業の発展のために、現場で活躍する人と意見交換をして課題を浮き彫りにし、解決につながる施策を、国に提案したり一緒に作ったりしています。
民間においての調整役と、民間と国の間の仲介役を担って、「法律家」として、皆が歩み寄れる最適点を提案しているようなイメージです。これは政策に影響を与えるように働きかけるロビイング活動に近いですが、異なるのはクライアントが特定の産業団体のみではないことです。いわゆる一般的な弁護士の仕事ではありませんが、自分たちが国と相談しながら政策や方針が日々変わっていくことに強い意義を感じています。
実際に、アートの業界では、5・6年前までは日本の美術市場は冷え込んでいると言われていたのが、課題解決の動きを地道に積み重ねたことで、市場を支えるための助成制度や税制が改正され、美術市場が盛り上がりを見せています。そこで、さらに民間の一体感を強めて、次の施策に向かうという手応えも得られています。このように法律や規制、国の政策は変わり得る、自分たちが関わることができるという実感を現場の人らと共有することができるのは本当に素晴らしいことだと思います。
最近は、社団法人を自ら立ち上げたり、業界団体の顧問になったり、海外のプレイヤーを巻き込んだプロジェクトに参加したり、活動の規模が大きくなっています。総じて、産業のベースアップのお手伝いをしているイメージです。アート以外でも、ファッションやエンターテイメント、建築などといったクリエイティブ領域に加え、観光や教育などといった産業に対しても同じような活動をしています。これまで培ってきた知識と経験、コネクションを別の分野に有効活用することができています。
これらの産業はいずれも私自身がプライベートで興味をもっている分野ですが、これらの産業を引っ張っているキーパーソンらと一緒に、全体を盛り上げ、次のステップ、グローバルなステップに進もうとする前向きな活動を、代理人としてのみではなく、自分も一当事者として主体的に活動することができており、毎日がとても楽しく感じています。
私自身、考え方や働き方を変えてから、自分の知識や経験が活かせるフィールドが無限に広がっている感覚があり、それは弁護士として10年間鍛えられた基礎体力に支えられているという実感があります。だからこそ、弁護士としての領域は無限に広がっているという考え方を仲間や後輩たちとシェアすることで、弁護士自体の可能性をもっともっと広げていきたいと考えています。数ある産業のベースアップに弁護士がより積極的に関われるようになったら面白いと思いますし、そういった前向きな仕事が増えていくと、弁護士のやりがいがもっと大きくなるように思います。
そのような意味で、従来の「弁護士」としての仕事の基本であった、法律を解釈しあてはめるという仕事ではなく、法律そのものを変えたり、よりよく活用したりするといった職業という意味で、「法律家」としても活躍していきたいと思っています。