明日の法律家講座 バックナンバー

明日の法律家講座 東京校第274回

2018年8月4日(土)実施

ヘイトスピーチは法で規制できるのか

【講師】神原 元 氏(弁護士、「武蔵小杉合同法律事務所」主宰)
    宋 惠燕氏(弁護士、在日コリアン弁護士協会理事)
 


講師プロフィール

神原 元 氏(弁護士、「武蔵小杉合同法律事務所」主宰)

1967年 神奈川県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科出身。
1998年 司法試験合格。司法修習は53期。
2000年 横浜弁護士会に弁護士登録し、川崎合同法律事務所に入所。
2010年 川崎合同法律事務所を退所し、武蔵小杉合同法律事務所を開所。自由法曹団常任幹事
主な著書に『ヘイト・スピーチに抗する人びと』(新日本出版社)がある。

宋 惠燕 氏(弁護士、在日コリアン弁護士協会理事)

明日の自由を守る若手弁護士の会 会員

講師からのメッセージ 

ヘイトスピーチとは「特定の人種や民族等に対する憎悪や差別を煽る言動」のことです。近年ヘイトスピーチは激しさを増し社会問題となっており、2016年には国会で「不当な差別的言動解消法」が成立しました。
講師は2013年2月、東京新大久保で偶々ヘイトスピーチ団体に遭遇し、強い衝撃を受けました。表現の自由はあるとはいえ、「朝鮮人を殺せ」「叩き出せ」このような憎悪をまき散らす言動を放置してよいものか。以来5年に亘り、多くの仲間とともに議論し運動し悩みながら今日までこの問題に関わり続けました。
ヘイトスピーチは当該集団に属する人々の基本的人権を侵害する行為であると言われていますが、これを規制しようという意見に対しては「それは表現の自由を侵すものだ」という反論があります。果たしてそうなのか。本講義はこの疑問に応えようと致します。
第一に、本講義では、まずヘイトスピーチとは何なのか、その被害とはなんなのかを映像などを見ながら具体的に考えます。表現の自由を強調する立場の人々からは、「嫌ならば見なければよい」という意見や「言論には言論で対抗すればよい」という意見があるでしょう。また、「ひどい言動でも実害はないのではないか」という疑問もあるかもしれません。これらの疑問に応えたいと思います。
次に、本講義では、仮にヘイトスピーチが基本的人権を侵害するものであることを認めた場合、これを法律で規制することの是非を考えます。他国の規制との比較では、ドイツの例を挙げるほか、有名な「ブランデンバーグ原則」も取り上げ、この判例が、クークラックスクランのメンバーが「ユダヤ人をイスラエルに送り返せ」「二グロを葬り去れ」等と演説して起訴された事件であることを明らかにします。その上で、今の日本でどこまでの規制が可能であるか、具体的に議論したいと思います。
最後に、本講義では、2013年に東京新大久保で展開された、反ヘイトスピーチ運動を紹介します。その上で、弁護士が社会運動に関わることの重要性を講師の体験として紹介します。
新鮮な問題意識のある参加者をお待ちしています。