明日の法律家講座 バックナンバー
明日の法律家講座 東京校第284回
2019年6月15日(土)実施
刑事弁護と科学捜査を考える~乳腺外科事件を例に
【講師】水沼 直樹 氏(弁護士、「文京あさなぎ法律事務所」所属、元伊藤塾塾生)
講師プロフィール
水沼 直樹 氏(弁護士、「文京あさなぎ法律事務所」所属、元伊藤塾塾生)
2011年弁護士登録
2013年1月から2018年1月末まで亀田総合病院の内部弁護士 等
現職に至る
日本法医学会、日本DNA多型学会、日本医事法学会、日本賠償科学会、日本子ども虐待医学会、日本睡眠歯科学会(兼倫理委員)、日本がん・生殖医療学会(兼理事)、オートプシー・イメージング学会(兼アドバイザー)の各会員
講師からのメッセージ
私が受験生として刑事訴訟法を学んでいたときには、検証、鑑定といった科学捜査・科学的証拠については、伝聞証拠との関係くらいしか意識していませんでした。しかし、実務に出ると、伝聞証拠の問題の前に、これらの科学捜査・科学的証拠に対して弁護士として対峙しなければならないことを経験します。例えば、科学的証拠として、検察官や相手方から提出された証拠を吟味します。
科学的証拠には、DNA型鑑定、覚せい剤やアルコール等の薬物鑑定、交通事故の実況見分調書等、枚挙に暇がありません。また、弁護士が自ら科学的証拠を作成するために、再現実験を行うこともあります。しかも、科学的証拠が重要争点になれば、専門家への証人尋問もしなければなりません。文科系の弁護士はもちろんのこと、理科系弁護士でも、専門分野以外の分野に対しては、証人尋問で苦労されることと思います。
他方で、受験生のときには、あまりこれらの問題を勉強する機会は多くないでしょう。しかし、弁護士になれば、法律論以外の分野で、検察官や相手方と戦うことができますし、その戦い方次第で結果が異なってきます。もしも、科学的証拠1つとってもこれだけの問題点や面白さがあると、受験生のときに知っていれば、刑事訴訟法が、もっともっと楽しく感じたことだろうと思います。現在、試験勉強で苦労されている皆さんが、少しでも楽しく、内実のある勉強ができるようにとの思いから、私が経験した事例を基に、科学鑑定・科学的証拠について、お話したく思います。