明日の法律家講座 バックナンバー
明日の法律家講座 東京校第321回
2022年11月12日(土)実施
改めて大崎事件を考える~再審弁護から法制度の改革へ
講師プロフィール
鴨志田 祐美 氏(弁護士、元伊藤塾塾生)
1981年 | 神奈川県立湘南高校卒業 |
1985年 | 早稲田大学法学部卒業(その後、会社員、結婚、出産、予備校講師を経て) |
2002年 | 司法試験合格 |
2004年 | 鹿児島県弁護士会登録 (57期) |
2010年 | 「弁護士法人えがりて法律事務所」設立 |
2021年 | 京都弁護士会に移籍 |
2021年 | Kollect京都法律事務所(コレクト京都法律事務所)所属 |
鹿児島市生まれ。以後、大学1年まで神奈川県在住。
【主な活動】
2007年~2015年 | 鹿児島家庭裁判所 家事調停委員/鹿児島地方・簡易裁判所 民事調停委員 |
2012年~2013年 | 鹿児島県弁護士会 副会長 |
2013年~ | 日弁連人権擁護委員会 大崎事件委員会 委員長 |
2014年~2019年 | 同「再審における証拠開示に関する特別部会」部会長 |
2019年~2022年 | 同「再審法改正に関する特別部会」部会長 |
2022年~ | 日弁連「再審法改正実現本部」本部長代行 |
【 主な著書・寄稿】
『転落自白―「日本型えん罪」はなぜうまれるのか』(共編著 日本評論社 2012 年)
「被疑者弁護から少年審判後に至るまでの連携と協働」(岡田行雄編著『非行少年のためにつながろう!』現代人文社 2017 年)
「再審制度の抱える諸問題」(木谷明ほか編著『シリーズ刑事司法を考える 第5巻 裁判所は何を判断するか』岩波書店 2017 年)
『緊急提言!刑事再審法改正と国会の責任』(共編著 日本評論社 2017 年) 『隠された証拠が冤罪を晴らす―再審における証拠開示の法制化に向けて』(共編著 現代人文社 2018年)
「少年事件における多職種連携の意義」(阿部恭子編著『少年事件加害者家族支援の理論と実践』現代人文社 2020年)
『大崎事件と私―アヤ子と祐美の40年』(LABO 2021年)
講師からのメッセージ
司法修習生のとき、弁護修習で配属された事務所の所長が大崎事件第1次再審の弁護団長だったという偶然が、私と大崎事件との運命的な結びつきの始まりでした。弁護士登録直後に弁護団に加入し、以来18年間、弁護士としての人生の全期間を大崎事件の再審弁護人として活動してきました。
しかし、大崎事件はこれまでに3度の再審開始決定を得ながら、検察官の不服申立てにより取り消され、事件から43年間、一貫して無実を叫び続ける原口アヤ子さんが95歳になった現在もなお、再審請求の闘いが続いています。
「個人の尊厳」に最高の価値を置く日本国憲法のもと、無実の罪に人生を奪われる冤罪被害は、あってはならない究極の人権侵害であり、その加害者は国家権力です。それなのに、冤罪被害者を救うための最後にして唯一の手段である再審制度は、戦前の旧刑事訴訟法からほとんど変わらず、わずか19条の条文には手続の詳細を定めた規定すらなく、その運用は、個々の裁判官の広範な裁量に委ねられています。また、ようやく裁判所が再審開始を決定しても検察官の不服申立てにより審理が長期化し、上級審で再審開始が取り消される事態も珍しくありません。
個別の事件の弁護活動だけでは、もはや冤罪被害者を迅速に救済することはできないことを痛感した私は、大崎事件の再審弁護活動の車の両輪として、再審法の改正に向けた活動にも力を注いでいます。最近になってようやく、メディアもこの問題に着目し、特集記事や社説、ドキュメンタリー番組などで現在の法制度の不備が報じられるようになりました。
日本弁護士連合会は今年6月、「再審法改正実現本部」を設置しました。会長が本部長に就任し、法改正実現のために会を挙げて取り組む体制を整えました。
今回の講演を通じて、大崎事件の理不尽と、再審法改正の必要性を「わがこと」として受け止めていただきたいと思っています。