明日の法律家講座 東京校第335回
2023年12月9日(土)実施
誰ひとり取り残されない社会を目指して
~弁護士として、議員として~
講師プロフィール
打越 さく良氏
(参議院議員、弁護士)
北海道旭川市生まれ。
お茶の水女子大学附属高等学校卒業、東京大学教養学部及び教育学部卒業。東京大学大学院教育学研究科博士課程中途退学。
2000年弁護士登録(第二東京弁護士会)。
2019年新潟県弁護士会に登録替え。
医学部入試における女性差別対策弁護団共同代表、第1次夫婦別姓訴訟弁護団事務局長、第2次夫婦別姓訴訟弁護団副団長、児童相談所嘱託弁護士、日本司法支援センター嘱託弁護士等を務める。『第3版 DV事件の実務 相談から保護命令・離婚事件まで』、『レンアイ、基本のキ 好きになったらなんでもOK?』、『なぜ妻は突然、離婚を切り出すのか』等著書多数。
講師からのメッセージ
DV被害者や虐待をうけた子ども、ヘイトスピーチのターゲットになるなど差別に苦しむ方々や難民の代理人を務める弁護士の仕事は大変やりがいがありました。尊厳を傷つけられた人にただ共感し寄り添うだけではなく、法律を駆使して、賠償金を勝ち取ったり不当な処分をただすなど、尊厳をいくらかでも回復することに伴走できる。そして、法律や制度がおかしい場合にも抗議の声を上げる方々と知恵を搾り合い、「憲法・条約に照らしておかしい」と抗議を根拠づけることにもお役に立てます。
声を上げ、戦うことは、勇気もいるし、労力もいります。でも、数人の決意と努力が、「社会は変えられる。変えよう」というエネルギーにつながります。たとえば、私が弁護団事務局長を務めて、夫婦同姓しか認められないのはおかしいと第1次夫婦別姓訴訟を提起した当時より、今は格段に選択的夫婦別姓を支持する声は高まっています。
しかし個々の勇気ある人の戦いを待たずに、個人の尊厳を尊重しない法律を頑強に維持する国会では本来いけないはず。本来、政治は多様な一人ひとりをありのままに尊重し、貧困や病気、障がいなど困ったときにも安心だとセーフティネットを用意しいざというときには手を差し伸べる役割があるのに、今の政治は真逆をいっていないか。多様性を否定し、「こうあるべし」を上から押しつけ、そして困った人には「自己責任」と冷たく突き放す。そんな冷たい政治が数の力でまかり通っていると、社会が分断され、閉塞感に満ちてしまうのではないか。とはいえ、実際に法制度を動かす国会で働き出し、希望もやりがいも感じます。野党1年生議員でも、政府与党の耳に入らない、声を上げにくい人の声を届け、法制度を修正することもできます。
法曹が政治家となる意義、やりがいをお伝えしたいです。