2025年(78期)司法修習のスケジュールをご紹介!修習内容や修習生の生活について詳しく解説

司法試験合格後、法曹として働き始めるには1年間の司法修習を修了しなければなりません。78期の司法修習は、2025年3月下旬から始まります。
司法修習に臨むに際しては、事前に司法修習で学ぶべきことや各クールの内容について理解しておくことが有用です。
この記事では、司法試験合格から司法修習までの過ごし方、78期司法修習の日程、司法修習生の生活などを解説します。78期の司法修習を予定されている方、司法試験合格後のイメージ作りをしたい方はぜひ参考にしてください。
【目次】
1.司法試験合格から司法修習まで
1-1.就職活動
1-2.事前課題
2.78期司法修習の日程
2-1.導入修習
2-2.分野別実務修習
2-3.選択型実務修習
2-4.集合修習
2-5.司法修習生考試(二回試験)
3.司法修習生の生活
3-1.司法修習生の給与
3-2.1日のスケジュール
3-3.実務修習の過ごし方
3-4.司法修習生考試(二回試験)対策について
4.まとめ
1.司法試験合格から司法修習まで
司法試験に合格しても、すぐに法曹として働けるわけではありません。法曹資格を取得するには、司法試験合格後の司法修習を修了する必要があります。
司法試験の合格発表は例年11月初旬となっており、司法修習がスタートする翌年3月末までは約5か月の期間があります。その間に取り組むべきことは、大きく分けて就職活動と事前課題の2つです。
ここでは、就職活動と事前課題について取り組むべき内容を具体的に解説します。なお、司法修習については好きなタイミングで受けられるので、必ずしも合格翌年の司法修習を受ける必要はありません。
※2024年度司法試験の結果については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→【最新版】2024年度司法試験の結果は?合格率や合格者数・大学別ランキングも紹介
1-1.就職活動
就職活動を開始するタイミングは、事務所の規模によって異なります。
弁護士数国内最大手の西村あさひ法律事務所をはじめとするいわゆる五大法律事務所への就職希望者は、司法試験の1年以上前に行われるサマークラークの時点から就職活動を始めており、合格発表前に実質的に内定となるケースも少なくありません。
弁護士数20名以上の中規模法律事務所への就職を目指す人については、合格発表前から就職活動が始まり、司法修習の開始までには就職活動を終える人がほとんどです。
もっとも、修習開始までに就職先が決まっていなくても落ち込む必要はありません。少人数の事務所や地方の事務所については、修習開始後も採用活動を継続しているところが多くあります。
いずれにしても、法律事務所への就職を目指しているのなら就職活動は避けて通れません。就職を希望する事務所があるのなら、受験生の段階から情報収集を怠らないようにしましょう。
※五大法律事務所については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 五大(四大)法律事務所とは?日本を代表する大手法律事務所で働く方法を解説
1-2.事前課題
司法修習の開始前には、事前課題が与えられます。
事前課題の主な内容は起案となっています。起案とは、実際の事件記録に準じた資料を用いた演習問題のことです。司法研修所における学習は起案がメインとなっており、司法修習修了後の二回試験(司法修習生考試)は、起案形式でのテストです。
事前課題は、しっかりと時間をかけて取り組むようにしてください。事前課題をないがしろにすると導入修習からつまづいてしまい、司法研修所での学習についていけなくなる可能性があります。
事前課題の起案に取り組むには、事前課題と一緒に配布される「白表紙」(司法研修所使用教材の通称)への理解が求められます。「白表紙」は、司法修習だけでなく実務に出てからも有用な教科書のようなものです。司法修習が始まるまでに、ひと通り白表紙に目を通しておくと、導入修習からスムーズに学習に取り組めるようになるでしょう。
2.78期司法修習の日程
78期の司法修習は、2025年3月19日に始まり翌年2月末まで続きます。法科大学院在学中の合格者は、卒業後すぐに修習がスタートします。具体的なスケジュールは、次のとおりです。
【78期の修習日程】
2025年3月19日 ~4月10日 | 導入修習 | |
4月14日~ 11月18日 | 分野別実務修習 | |
11月下旬~ 2026年1月中旬 | 集合修習 | 選択型実務修習 |
1月中旬~ 2月下旬 | 選択型実務修習 | 集合修習 |
集合修習と選択型実務修習は、修習地別でA班とB班に分けて行われます。A班は、前半が集合修習、B班は後半が集合修習となっています。
A班とB班の分類は、次のとおりです。
A班 | 東京、立川、横浜、さいたま、千葉 大阪京都、神戸、奈良、大津、和歌山 |
B班 | 上記以外の修習地 |
修習の日程を終えたあとは、2026年3月上旬に司法修習生考試(二回試験)が実施され、3月中に合格発表が行われます。
77期の修習日程について、詳しくはこちらの記事をご覧ください。
→ 2024年(77期)司法修習のスケジュールはどう変わる?修習生の就活や給与についても徹底解説
ここからは、修習の具体的な内容について詳しく解説します。
2-1.導入修習
導入修習は、司法研修所に78期の司法修習生全員が集まって行われます。導入修習の期間は約3週間と短いものですが、今後の修習に向けた重要な期間です。
導入修習では、事前課題の解説をしながら基本的な起案の書き方を学んでいきます。事前課題にしっかりと取り組んでいなければ、講義の内容についていくのも難しくなってしまうでしょう。ここで基本的な起案の書き方を身に付けておかなければ、実務修習での学びも身になりません。
事前課題の解説を終えると、実践的な起案の書き方やグループディスカッションなども行われます。導入修習の段階でしっかりと学習に取り組んでおけば、以降の修習は充実したものとなるでしょう。
学習以外では、他の修習生との交流を深めておくのも重要です。特に、同じ修習地の修習生と交流しておくと、実務修習に出てからも楽しく充実した生活を送れます。
2-2.分野別実務修習
分野別実務修習では、各修習地に分かれて民事裁判、刑事裁判、弁護、検察の4分野について、それぞれ2か月ずつ修習が行われます。
実務修習では、裁判や取調べに立ち会うなど、現在進行形の実務を体験できます。修習後、弁護士の道に進む人であれば、裁判所や検察の裏側は実務修習でしか体験できません。
実務修習で自分とは立場が違う仕事での考え方に触れておくことは、実務に出てからも有益です。
2-3.選択型実務修習
選択型実務修習では、約2ヶ月間の修習期間の中で、以下の4つのプログラムのうち興味があるプログラムを自由に選択、組み合わせて修習を行います。
①個別修習プログラム分野別実務修習の深化と補完を図るプログラム。
・裁判所提供プログラム
・検察庁提供プログラム
・弁護士会提供プログラム②全国プログラム
全国の司法修習生を対象とする修習プログラム。法務省、地方自治体、法テラス、国際機関、民間企業など、多様なプログラムが提供されている。③自己開拓プログラム
法曹の活動に密接な関係を有する分野について、自ら修習先を開拓して修習するプログラム。 官庁及びその他関係機関、民間企業の法務部など。④ホームグラウンドにおける修習
ホームグラウンドとは、分野別実務修習の際に弁護修習を行った弁護士事務所のこと。①〜③のプログラムが入っていない期間に、この弁護士事務所を拠点として行う修習のこと。2ヶ月間すべてホームグラウンドで修習することも可能。
以上のように、この機会でしか体験できない多彩なプログラムが用意されているので、自分の興味に合わせて選択していくとよいでしょう。
選択型実務修習が司法修習生考試の直前に行われるB班の修習生は、試験に向けた対策も怠らないようにしましょう。
2-4.集合修習
集合修習では、これまでの修習のまとめとして事件記録を使用した起案や模擬裁判が行われます。
集合修習での学習内容は、司法修習生考試に直結するものです。集合修習で作成した起案については、教官からの評価を受けられるので、自分に何が足りないのかを理解し、しっかりと復習しておくようにしましょう。
司法修習生考試で不合格になると、法曹資格を取得するのが遅れてしまいます。これまでの修習を無駄にしないためにも、集合修習の期間については何よりも学習を優先して過ごすようにしてください。
2-5.司法修習生考試(二回試験)
司法修習生考試は、法曹資格を取得するための最後の試験です。修習生の間では、司法試験に続く2回目の試験という意味で「二回試験」と呼ばれています。
二回試験の試験科目は、民事裁判、刑事裁判、民事弁護、刑事弁護、検察の5科目です。1日1科目、7時間半の試験が5日間続く、長丁場の試験となっています。
二回試験は、致命的なミスがなければ合格できる試験です。各科目で絶対に外してはならない基本をしっかりと押さえておけば問題ありません。二回試験を甘く見てはいけませんが、不安を感じる必要もありません。
二回試験に合格すると、晴れて法曹としての仕事をスタートできます。万が一、二回試験に不合格となってしまった場合は、翌年の二回試験に再挑戦できます。
※司法修習生考試(二回試験)については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→ 司法修習生考試(二回試験)とは?試験内容や不合格にならないための対策を解説
※司法修習の内容についてより詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧ください。
→ 司法修習とは何か?スケジュールや給与などを詳細解説
3.司法修習生の生活
ここでは、司法修習生の生活を具体的にイメージできるように、次の4つのテーマについて解説します。
・司法修習生の給与 ・1日のスケジュール ・実務修習の過ごし方 ・二回試験対策について |
3-1.司法修習生の給与
司法修習の期間中、修習生には月額13万5000円の基本給付金と月額3万5000円の住居給付金の合計17万円が支給されます。また、修習に伴う転居が必要となった際には移転給付金が支給されます。
給付金を支給される際の源泉徴収はありません。そのため、国民健康保険の加入手続きや確定申告は修習生が各自で行う必要があります。
参考:裁判所「司法修習生の修習給付金の給付に関する規則」
家族のいる人や修習で遠方への引っ越しが必要な人の場合、修習生の給付金だけで生活費をまかなうのは難しい場合もあるでしょう。しかし、修習生には修習専念義務があるため、修習期間中に自由にアルバイトをして収入を得ることはできません。
給付金だけの収入では足りない場合は、修習専念資金の貸与制度を利用したり、修習に影響が出ない範囲でのアルバイトの許可申請を行うなどして不足分を補うことになります。
参考:裁判所「司法修習生の修習専念資金の貸与等について」
3-2.1日のスケジュール
導入修習と集合修習が行われる司法研修所では、毎朝9時40分に登庁して16時30分に講義が終了します。通勤時間のかからない寮生は、かなり時間に余裕のある生活を送れるでしょう。
実務修習では、平日9時から17時までが修習の時間となっています。裁判修習や検察修習では時間がしっかり決まっていますが、弁護修習では配属先の事務所によって時間が多少前後することもあるようです。
いずれにしても、実務に出てからは決まった時間に仕事が終わることはありません。時間がある修習生のうちにプライベートな時間も楽しんでおくと良いでしょう。
3-3.実務修習の過ごし方
実務修習は、法曹三者それぞれの立場での実務を体験できる貴重な機会です。実務に出てからは、他の立場での実務を体験することはできません。実務修習では、自分の進路とは異なる修習の機会こそ真剣に取り組むことをおすすめします。
たとえば、裁判修習では、裁判官から実際の事件における弁護士の評価を聞く機会もあるでしょう。裁判官の立場から評価される弁護士像がわかれば、弁護士になったとしても実務に出てからの指標とすることができます。同じように検察修習で検察官の働き方や考え方を知ることも、弁護士になってからでは直接学ぶことのできない貴重な経験が多くあります。
実際、実務に出てからも、実務修習での裁判官や検察官とのやり取りを思い出して、問題解決の足がかりとすることがあります。実務修習では、実務に初めて触れる楽しさや怖さを感じつつ、常に学ぶ姿勢を忘れないようにしましょう。
3-4.司法修習生考試(二回試験)対策について
二回試験対策で最も重要なのは集合修習で学んだ内容を確実に身に付けることです。
二回試験を突破するのに必要な知識量は、司法試験と比較にならないほど少ないため、各科目の「白表紙」をインプット教材として、起案によるアウトプットを繰り返して形式に慣れれば、決して難しい試験ではありません。
二回試験は合格率にすると98〜99%の試験であるため、完璧に回答できなくても、基本事項の間違いさえなければ合格できます。各科目で絶対に間違えてはならない基本知識、起案の書き方さえ身に付ければ、問題なく乗り越えられるでしょう。
4.まとめ
司法修習は、実務に直結する能力を身に付けることができる重要な制度です。とはいえ、司法試験に合格する能力があるのなら、勉強漬けにならなくても十分に二回試験も突破できます。
司法修習では、実務のための学習はもちろんのこと、ぜひ修習仲間との交流も深めてください。同期の仲間は実務に出てからも頼りになります。
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著者:伊藤塾 司法試験科
伊藤塾司法試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。

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