検察官と警察官との違いを役割や採用方法の観点から解説

検察官は、いわゆる法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)の1つですが、裁判官や弁護士と比べると具体的な役割をイメージしにくい方も少なくないでしょう。犯罪に対応するという点で、警察との区別が難しいという方もいるかもしれません。
被疑者の起訴・不起訴について判断を下すのは、検察官だけに与えられた権限です。刑事裁判の執行も検察官の重要な役割と言えるでしょう。
今回は、検察官の役割や検察官と警察官との違い、検察官の役職と仕事内容などを解説します。検察官の役割を詳しく知りたい方は、ぜひ最後までご覧ください。
【目次】
1.検察官の役割
2.検察官と警察官の違い
2-1.刑事手続における役割の違い
2-2.採用方法の違い
3.検察官の役職と仕事内容
3-1.検察官の役職
3-2.検察官の仕事内容
4.まとめ
1.検察官の役割
検察官は、司法試験に合格した者だけが就任することができる職業です。
検察官の主な役割は、次の4つに分けられます。
・刑事事件の捜査を行う・被疑者の起訴・不起訴の処分を行う
・刑事裁判での立証活動を行う
・裁判の執行を指揮監督する
検察官は、警察から送致された事件や告訴された事件などについて、警察官に補充捜査を行わせたり、自ら被疑者や参考人の取り調べをしたりといった捜査を行います。
捜査の結果、被疑者を起訴する(裁判にかける)か不起訴とするかを決めるのは、検察官だけに与えられた権限です(起訴独占主義・刑事訴訟法247条)。被疑者が犯罪を自白しているときでも、検察官による起訴がなければ裁判によって刑罰を科すことはできません。
起訴した事件について、検察官は、刑罰の適用を求めて刑事裁判での立証活動を行います。日本の刑事事件における有罪率は、99.9%となっており、検察官が起訴したほとんどすべての事件について有罪判決が下されることになります。
裁判の執行を指揮監督することも、検察官の役割の1つです。裁判の執行とは、裁判で決められた懲役や罰金などの刑罰を執行することを言います。死刑の執行は法務大臣の命令により行われますが、懲役刑や罰金刑については検察官の指揮監督により執行されます。
検察官は、刑事事件の犯人を明らかにして、適切な刑罰を科すうえで重要な役割を果たしていると言えるでしょう。
2.検察官と警察官の違い
検察官と警察官は、犯罪の捜査を担当するという点では共通していますが、両者の役割は明確に区別されています。また、基本的には司法試験合格者から採用される検察官と、一般の採用試験がある警察官とでは採用方法も異なります。
検察官と警察官は、役割や採用方法に違いがあるものの、どちらの方が偉いということは言えません。
ここでは、刑事手続における役割と採用方法について、検察官と警察官の違いを解説します。
2-1.刑事手続における役割の違い
一般的なケースでは、犯罪が発生したときに被疑者の逮捕や証拠の収集、参考人の取り調べなどの一次的な捜査を警察が行います。
警察が被疑者を逮捕したときには、48時間以内に検察に事件を送致しなければなりません。検察は、事件の送致を受けてから24時間以内に、勾留請求するか被疑者を釈放するかを決定します。
検察は、犯罪の捜査について、警察への指示権と指揮権が認められています(刑事訴訟法193条)。検察としては、自ら犯罪の捜査を行うこともできますし、警察の捜査を指示することも可能です。
検察が警察への指示権や指揮権を有していることから、「検察の方が警察より偉いのでは?」と考える方もいらっしゃるでしょう。
しかし、検察と警察に上下関係はありません。検察だけでの捜査能力には限界があり、綿密な捜査を進めるには警察の協力が不可欠です。検察と警察は、基本的に対等な協力関係にあるといってよいでしょう。
2-2.採用方法の違い
検察官(検事)に採用されるには、原則として司法試験に合格する必要があります。近年では、司法修習を終えた者の中から、毎年70名程度が検察官(検事)に採用されています。
参照:検事に採用されるまで|法務省
ただし、検察官の役職のひとつである「副検事」は、司法試験に合格する必要はなく、「副検事選考試験」によって選抜されます。副検事は主に簡易裁判所が対応する、市民生活に密接にかかわるような、刑事事件の捜査や公判を担当しますが、副検事選考試験を受験できるのは一定の条件を満たす公務員のみとなっており、主な受験生は、実務経験が3年以上の検察事務官、裁判所書記官、矯正局の法務専門官などと、一定の実務経験年数と条件を満たす必要があります。
一方、警察官は、警察官採用試験で採用されます。受験資格は、学歴によって区分されていますが、司法試験合格のような特別の要件はありません。ただし、試験内容としては、身体検査や体力試験などもあり、座学のみの司法試験とは大きく異なる内容となっています。
3.検察官の役職と仕事内容
ここでは、検察官の役職と仕事内容について解説します。
3-1.検察官の役職
検察官の役職には、大きく分けて次の5つがあります。
● 検事総長● 次長検事
● 検事長
● 検事
● 副検事
検事総長は、検察官の最高位です。最高検察庁に所属し、検察庁の全職員を指揮監督する権限があります。
次長検事は、検察官のナンバー2で、検事総長を補佐する立場の役職です。最高検察庁に所属しており、検事総長が権限を行使できないときには、代わりに検事総長の権限を行使することもあります。
検事長は、各高等検察庁の長の立場にある役職です。検事長の数は、高等検察庁の数と同じ8人となっています。検事長には、管轄内の地方検察庁、区検察庁の全職員を指揮監督する権限が与えられています。
最初に検察官の役割として説明したのが、ここでの「検事」の説明です。検事は、最高検察庁、高等検察庁、地方検察庁などに配属されて、犯罪の捜査や起訴・不起訴の判断、公判活動などを担当します。
副検事は、主に区検察庁に配属されて、簡易裁判所の事件について捜査や公判活動を担当します。
3-2.検察官の仕事内容
検察官(検事)の主な仕事内容は、次の4つです。
● 刑事事件の捜査● 刑事裁判での立証活動
● 刑罰の執行を指揮監督する
● その他の事務
捜査における仕事内容は、検察官の役割で説明したとおりです。検察官は、警察から送致された事件について、警察の捜査を指示したり、自ら取り調べをしたりして、被疑者の起訴・不起訴を決定します。
刑事裁判では、証拠を裁判所に提出し、被告人や目撃者などの証人尋問を行うなどして、犯罪の立証活動を行います。基本的に、同一事件について捜査を担当する検察官と刑事裁判を担当する検察官が同じになることはありません。
裁判所の下した判決に不服があるときには、控訴や上告などの不服申し立ても行います。裁判所が下した判決を執行するのも、検察官の仕事です。検察官は、懲役刑や罰金刑などの執行を指揮監督します。
※検察官(検事)については、以下の記事でも詳しく解説しています。
→検察官(検事)になるには?年収や仕事内容・向いている人など詳しく解説
→検察官の出身大学ランキング|法科大学院の特徴や任官数をご紹介
→女性の検察官(検事)は増えている?検察官の男女比やキャリアについて解説
→法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)の仕事とは?年収・やりがい・魅力・適性をご紹介!
4.まとめ
検察官は、被疑者の起訴・不起訴を決定し、公判での立証活動を担当するなど、刑事事件の犯人に適切な刑罰を科すうえで欠かせない役割を果たしています。
検察官(検事)として採用されるには、司法試験に合格しなければなりません。司法試験の合格を目指すには、受験指導校の利用がおすすめです。検察官を目指している方でお困りのことがあれば、ぜひ伊藤塾までお問い合わせください。
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著者:伊藤塾 司法試験科
伊藤塾司法試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。

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