行政書士試験の「時間配分」を科目別に解説!時間が足りない方は必見
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行政書士試験では、「時間配分が命」と言っても過言ではありません。
模試や過去問で合格レベルの成績を収めている受験生でも、時間配分で失敗すると本番で失敗する可能性が高くなります。
「時間が足りない」という失敗を防ぐには、次のような時間配分で進めていきましょう。
上記を基本にしつつ、自分なりの「解答の流れ」を確立しておくことが大切です。模試や過去問で繰り返し練習しておけば、本番でも最大限の実力を発揮できるでしょう。
本記事では、次の点を取り上げました。
◉この記事を読んで分かること・行政書士試験の時間配分の目安
・科目ごとの細かな時間配分
・自分の解答ペースを確認する方法
・時間配分で失敗しないポイント など
行政書士試験の時間配分でお悩みの方は、是非ご一読ください。
【目次】
1.行政書士試験の時間配分の目安
1-1.法令科目(択一式)の時間配分|95分が目安
1-1-1.商法を捨てる場合(短期合格を目指す場合)
1-2.多肢選択式の時間配分|15分が目安
1-3.記述式の時間配分|25分が目安
1-4.基礎知識科目の時間配分|40分が目安
1-5.最終チェック(見直し)|最低5分は確保する
2.なぜ試験時間が足りない?自分の時間配分を確認する方法
3.行政書士試験の時間配分で失敗しない方法
3-1.自分にあった解き方(順番)を見つけておく
3-2.分からない問題は飛ばす
3-3.問題文の読み方を工夫する
4.行政書士試験の時間配分は、模試や過去問で何度も練習しよう
5.まとめ
1.行政書士試験の時間配分の目安
行政書士試験は、午後1時から4時の「3時間(180分)」で実施されます。
長丁場ではあるものの、時間が余る試験ではありません。むしろ「足りない」と感じる人が大半を占めています。
本番で実力を発揮するには、予め時間配分を決めておくことが必要です。
次のイメージを念頭に置きつつ、自分なりの時間配分を身に付けましょう。
各科目の内訳についても、詳しく説明します。
1-1.法令科目(択一式)の時間配分|95分が目安
法令科目(択一式)40問は、95分で解くことを目安にしましょう。
【法令科目(択一式)のイメージ】
時間配分 | 問題数 | 1問あたり の目安 | |
基礎法学 | 5分 | 2問 | 2分30秒 |
憲法 | 15分 | 5問 | 3分 |
行政法 | 30分 | 19問 | 1分30秒〜 |
民法 | 30分 | 9問 | 3分20秒〜 |
商法 | 15分 | 5問 | 3分 |
合計 | 95分(40問) |
大切なのは、シンプルに「95分÷40問=2分22秒」と考えるのではなく、科目や問題の性質に応じて配分を変えることです。
例えば「行政法」は、知識さえあれば時間をかけずに正誤判断できる問題が多いです。テンポ良く解けるので、1問あたりにかける時間も短くて良いでしょう。問題によっても異なりますが、平均すると「1問あたり1分30秒」が目安になります。
一方、民法を解くには、それなりの時間が必要です。特に事例問題では、選択肢ごとに状況が異なるケースが多いです。5つの選択肢それぞれに時間をかけて考えなければ解答できないので、必然的に時間がかかるでしょう。
時間配分に絶対的な正解はないので、何度も過去問や模試を解いて、自分なりの目安を探っていくことが大切です。
※行政法・民法の勉強法については、以下の記事で詳しく解説しています。
→行政書士試験合格の鍵!行政法の効率的な勉強法を徹底解説
→【行政書士の受験生必見】民法の勉強法を各分野・出題形式に分けて解説
1-1-1.商法を捨てる場合(短期合格を目指す場合)
半年以内での合格を目指す場合は、商法を捨てるケースもあります。その場合は、空いた時間を民法・行政法にあてると良いでしょう。
【商法を捨てる場合のイメージ】
時間配分 | 問題数 | 1問あたり の目安 | |
基礎法学 | 5分 | 2問 | 2分30秒 |
憲法 | 15分 | 5問 | 3分 |
行政法 | 40分 (+10分) | 19問 | 2分程度 |
民法 | 35分 (+5分) | 9問 | 4分程度 |
商法 | 0分 | 5問 | ー |
合計 | 95分(35問) |
短期合格では、商法を捨てて生み出した時間をいかに有効活用するかが、合格のカギを握っています。行政法と民法を中心に「基本的な問題を取りこぼさない」ことを徹底しましょう。
※短期合格を目指す方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→行政書士試験3ヶ月で合格できる?独学でも可能?合格事例・勉強法など解説
1-2.多肢選択式の時間配分|15分が目安
多肢選択式では、3問を15分程度で解きましょう。1問あたり5分が目安です。
時間配分 | 問題数 | 1問あたりの目安 | |
憲法 | 15分 | 1問 | 5分 |
行政法 | 2問 | 5分 |
多肢選択式は「文章理解」に近い問題が多く、解答に時間がかかる場合があります。
すぐに判別できる空欄から埋めていき、分からない箇所は一旦飛ばすことも1つの方法でしょう。受験する年によっては、令和6年試験のように超難問が出る場合もあります。考えすぎると、泥沼にはまって大失敗してしまうので注意しましょう。
必ず1問あたりの時間配分を決めておいて、「大幅にオーバーする前に見切りをつける」という意識をもっておくことが必要です。
1-3.記述式の時間配分|25分が目安
記述式は、3問を25分程度で解くのが目安になります。
時間配分 | 問題数 | 1問あたり の目安 | |
民法 | 25分 | 2問 | 7分〜8分 |
行政法 | 1問 | 7分〜8分 |
記述式のポイントは、解けそうな問題から優先的に取り掛かって部分点を狙うことです。
実は「記述式が解けなかった」という人と同じくらい、「記述式で時間をかけすぎて、択一式の時間が足りず失敗した」という人もいます。他の時間をひっ迫しないためには、あくまでも「できる範囲で解答する」という意識が欠かせません。
完璧な答案を目指すのではなく、部分点を意識して、分かる問題から解答していきましょう。
1-4.基礎知識科目の時間配分|40分が目安
基礎知識科目は、40分で14問を解くのが目安です。1問あたり2〜3分をイメージすると良いでしょう。
時間配分 | 問題数 | 1問あたり の目安 | |
諸法令 | 20分 | 9問 | 2分〜3分 |
情報通信・ 個人情報保護法 | |||
一般知識 | |||
文章理解 | 20分弱 | 3問 | 6分〜7分 |
基礎知識科目では、ここ数年、難易度の低い問題が増えています。
特に、一般知識(政治・経済・社会)では、一見「分からない」と思っても、きちんと読めば常識的に判断できるパターンが多いです。「あまり勉強していないから、時間をかけたくない」という人もいますが、非常にもったいありません。法令科目の時間が足りなくても、基礎知識科目に充てる時間は必ず確保しましょう。
なお、文章理解についても、最近は非常に解きやすい問題が続いています。5分以下で解ける問題も多いので、浮いた時間は法令科目にあてましょう。
※文章理解の攻略法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→行政書士試験の文章理解で失敗しないポイントは?出題形式別の攻略法
1-5.最終チェック(見直し)|最低5分は確保する
最後に、必ず最終チェック(見直し)の時間を確保することが必要です。
最低でも「5分以上」、ミスが多いなら「10分〜15分」はあったほうが良いでしょう。問題を解くときも一定の間隔でチェックするべきですが、それだけでは不十分です。
・マークシートが一欄ずつズレていた・「妥当なもの」「誤っているもの」を間違えて回答していた
・組み合わせを間違えて回答した
・正解が分かっていたのに、転記ミスで不合格になった など
最後に5分〜10分のチェック時間を確保するだけで、上記のような失敗を防ぐことができるのです。「ケアレスミスさえ無ければ、180点に達していたのに…」という声は、毎年数多く聞こえてきます。合否に影響することはもちろん、合格発表まで「もしかしたら…」という不安を抱え続けることにもなりかねません。
無駄な失点を防ぐためにも、必ず最終チェックに充てる時間を残しておきましょう。
2.なぜ試験時間が足りない?自分の時間配分を確認する方法
本番で時間が足りなくなるのは、「科目ごとに必要な解答時間」を把握できていないことが原因です。「各科目にどれだけの時間がかかるのか」…自分のペースを知らないまま本番に臨んでしまうため、時間配分で失敗してしまうのです。
では、各科目の解答時間を把握するにはどうしたら良いのでしょうか?
最も効果的な方法は、実際に自分の解答ペースを測定することです。過去問や模試を利用し、各科目(1年分)の問題を解く時間を測って、平均値を出してみましょう。この作業を複数年分繰り返せば、自分の解答ペースが明確になります。
【(例)民法のケース】
① 令和5年の民法に要した時間:24分② 令和4年の民法に要した時間:29分
③ 受験指導校の模試(民法)に要した時間:37分
↓
「平均すると「90分÷3年=30分」だから、民法の時間配分は30分が目安か」 「5分ほど余りそうだから、行政法の時間を増やせるかもな…」 など
ただし、実際には本試験当日の緊張も考慮しなければいけません。そうすると、本番で必要な時間は「平均より1〜2割増し」で考えておいたほうが良いでしょう。
試験時間が足りない原因を突き止め、対策を立てるためには、自分の解答ペースを把握することが欠かせません。まずは自分の解答時間をチェックした上で、改善する方法を探っていきましょう。
3.行政書士試験の時間配分で失敗しない方法
では、行政書士試験の時間配分で失敗しないためにはどうすれば良いのでしょうか?
効果的な対策を3つご紹介します。
・自分にあった解き方(順番)を見つける・分からない問題は飛ばす
・問題文の読み方を工夫する
それぞれ詳しく見ていきましょう。
3-1.自分にあった解き方(順番)を見つけておく
自分にあった解き方(順番)は、必ず見つけておきましょう。60問をどこから解くかによって、時間配分や試験中の精神的な負担が変わってくるからです。
いくつかのパターンを試してみて、自分が解きやすい順番を探ってみましょう。
参考までに、これまでの合格者に多いのは次の2パターンです。
特にこだわりがなければ、このいずれかで進めていけば良いでしょう。
なお、メンタルに自信がない場合は「②行政法(8問目)から解く」ほうが良いかもしれません。1問目から解くと「基礎法学(1〜2問)→憲法(3問〜7問)」の流れで、いきなり心が折られてしまうリスクがあるからです。
ここ数年の傾向として「憲法(3問〜7問目)」の問題が急激に難化しています。さらに1〜2問目に出題される「基礎法学」はそもそも対策しづらい科目です。1問目から解くのであれば、「1問目〜7問目までは解けなくても気にしない」と割り切っておいた方が良いでしょう。
絶対的な正解があるわけではないので、自分の性格や得意・不得意などを踏まえて、解きやすい順番を探してみてください。
3-2.分からない問題は飛ばす
分からない問題は思い切って飛ばしてしまいましょう。
行政書士試験では、全ての問題に正答する必要はないのです。あくまでも「180点(60%)」取れば合格できることを忘れないようにしましょう。
本試験の当日は、「必ず」次のような問題に出くわすはずです。
・過去問で見たことがない問題・考えても全く分からない難問
・超マイナー知識を問う問題 など
焦ってしまう気持ちは分かりますが、こういった問題が解けなくても合否には影響しません。むしろ難問・奇問に時間をかけて、本来解けるはずの問題を落とすことを警戒すべきです。難しい問題は、「あ、時間配分で失敗させるための問題だな。その手には乗らないぞ」と割り切って、次の問題に進むことが大切です。
3-3.問題文の読み方を工夫する
問題文の読み方を工夫することで、解答時間を短縮できる場合もあります。
例えば、次のような方法が考えられます。
・問題文を「スラッシュ/」で区切りながら読んでみる・重要なキーワードをマーカーで塗りながら問題を読む
・図を書きながら問題を読んでみる(特に民法)
・正誤の誤りを防ぐために「文末(妥当なものはどれか・誤っているものはどれか)等」に印を付けながら読んでみる など
ちょっとした工夫を重ねるだけでも、処理速度は格段に変わってきます。自分なりの工夫を見つけて、少しずつ訓練しておきましょう。
4.行政書士試験の時間配分は、模試や過去問で何度も練習しよう
ここまで、行政書士試験の時間配分の目安や失敗しないポイントを伝えてきました。
いずれも合格者も活用している有効な戦略ですが、本番でいきなり実践することは避けるべきです。自分に合った方法が見つかったら、必ず模試や演習で練習しておきましょう。
・時間を図りながら、過去問を何年分か解いてみる・模試や答練で色々なパターンを試してみたりする など
間違っても、本番でいきなり解き方を変えることはしないでください。
試験本番は独特の緊張感があるため、普段とは異なる心理状態になる人が少なくありません。本番で突然、次のような行動を取って失敗する受験生もいるので、十分に注意が必要です。
・いつも1問目から解いているのに、当日だけ行政法から始めて、時間配分を間違える・突然、天の声が聞こえてきて、新しい方法を試して失敗する
・記述式の問題が気になり、いきなり記述式から始めて時間が足りなくなる など
本試験で最も大切なのは、普段通りの解き方を実践することです。
どうしても浮ついてしまう場合は、試験開始直後、問題冊子に「焦らない」と書いておきましょう。焦らず、冷静にいつもどおりの実力を出せば、必ず結果はついてきます。日頃から、時間配分を意識した練習を積み重ねていきましょう。
※行政書士試験の模試については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→行政書士試験の模試はいつから受ける?模試の活用法を徹底解説
5.まとめ
最後に、今回の記事のポイントをまとめます。
◉行政書士試験の時間配分
科目 | 時間配分 |
法令択一 | 95分 |
基礎知識科目 | 40分 |
多肢選択式 | 15分 |
記述式 | 25分 |
最終チェック | 5分以上 |
合計 | 180分 |
◉過去問や模試を使って自分の解答ペースを測定してみると良い
◉時間配分のポイントは次の3つ
・分からない問題は飛ばす
・問題文の読み方を工夫する
◉本番で突然、時間配分を変えることはNG
◉模試や過去問で何度も練習して「自分なりの解き方」を確立する
以上です。
行政書士試験は、解答時間に余裕がある試験ではありません。本番で実力を発揮するためにも、模試や過去問を活用して、何度も時間配分を確認しておきましょう。
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著者:伊藤塾 行政書士試験科
伊藤塾行政書士試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの行政書士試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、行政書士試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。
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