海事代理士試験とは?難易度、合格率、勉強時間や勉強方法を解説!

海事代理士になるためには、「海事代理士試験」に合格することが必要です。
しかし、海事代理士試験についての情報は決して十分とは言えず、多くの受験生を悩ませる原因になっています。
特に、難易度や勉強法に関する情報は限られており、教材や勉強方法について頭を抱えている受験生も少なくありません。
そこで本記事では、数少ない「海事代理士試験合格講座」をリリースして、業界に旋風を巻き起こした伊藤塾が、
◉ 海事代理士試験の概要
◉ 海事代理士試験の合格率や難易度
◉ 海事代理士試験合格に必要な勉強時間や勉強方法
について、徹底解説します。
海事代理士試験に興味がある方は、是非ご一読ください。
1.海事代理士とは?
2.海事代理士試験の概要
2-1.受験資格
2-2.試験問題
2-2-1.筆記試験
2-2-2.口述試験
2-3.出題科目
2-4.合格基準
2-5.試験の免除制度
3.試験の日程
3-1.出願期間
3-2.受験手数料
3-3.試験日
3-4.試験会場
3-5.合格発表
4.海事代理士試験の過去問
5.海事代理士試験の難易度は?合格率と受験者数の推移
6.海事代理士試験の難易度が高い4つの理由
6-1.テキストや参考書が少ないから
6-2.受験生のレベルが高いから
6-3.科目数が多いから
6-4.口述試験の難易度が高いから
7.海事代理士試験に必要な勉強時間
8.海事代理士試験の勉強方法のポイント
9.【Q&A】海事代理士試験に関するよくある質問
9-1.海事代理士試験は、独学でも合格できる?
9-2.海事代理士試験に合格後、登録だけを後回しにしても問題ない?
10.まとめ
1.海事代理士とは?
海事代理士は「海の行政書士」「海の司法書士」とも呼ばれており、海に関する法律のスペシャリストです。
船舶の登録や安全性検査、小型船舶操縦免許証の更新など、海に関わる手続き全般を主な仕事としています。スケールの大きな大型船舶に関する仕事から、身近なマリンスポーツに関わる仕事まで、海上の安全を守るために重要な役割を担っています。
「8士業」の1つとして、高度な専門性を有する法律職であり、海に囲まれた日本にとって重要な国家資格の一つです。
2.海事代理士試験の概要
海事代理士になるためには、「海事代理士試験」に合格する必要があります。
ここでは、「海事代理士試験」の概要について説明します。
2-1.受験資格
海事代理士試験を受験するために、特別な資格は必要ありません。
年齢や学歴に制限はなく、誰でも受験することができます。
ただし「海事代理士法第3条に規定する欠格事由」に該当する人(未成年者、成年被後見人など)は、試験に合格しても、海事代理士として登録することができません。
2-2.試験問題
海事代理士試験では、筆記試験と口述試験が実施されます。
2-2-1.筆記試験
筆記試験では、
・一般法律常識(概括的問題)
・海事法令(専門的問題)
が出題されます。
問題は、「全20科目」「合計240点満点」で構成されており、選択式・記述式などの方式で実施されます。
2-2-2.口述試験
口述試験では、「海事法令に関する問題」が出題されます。
「全4科目」「合計40点」で構成されており、試験官との面接方式で実施されます。
2-3.出題科目
海事代理士試験の出題科目は、次のとおりです。
筆記試験 (240点) | 一般法律常識 (概括的問題) ※全3科目 | ・憲法 ・民法 ・商法(第3編「海商」のみ対象。) |
海事法令 (専門的問題) ※全20科目 | 国土交通省設置法、船舶法、船舶安全法、船舶のトン数の 測度に関する法律、船員法、船員職業安定法、船舶職員 及び小型船舶操縦者法、海上運送法、港湾運送事業法、 内航海運業法、港則法、海上交通安全法、造船法、海洋 汚染等及び海上災害の防止に関する法律、国際航海船舶 及び国際港湾施設の保安の確保等に関する法律(国際 港湾施設に係る部分を除く。)、領海等における外国船舶 の航行に関する法律、船舶の再資源化解体の適正な実施 に関する法律及びこれらの法律に基づく命令。 | |
口述試験 (40点) | 海事法令 ※全4科目 | ・「船舶法」 ・「船舶安全法」 ・「船員法」 ・「船舶職員及び小型船舶操縦者法」 |
2-4.合格基準
海事代理士試験の合格基準は、次のとおりです。
合格基準 | |
筆記試験 | 総得点240点のうち、60パーセント以上 の得点をあげた者。 ※ただし、全科目受験者の平均正答率が60 パーセントを上回る場合、平均正答率以上の 得点をあげた者。 |
口述試験 | 総得点40点のうち、60パーセント以上の 得点をあげた者。 |
「筆記試験」「口述試験」それぞれで、最低「60%以上」の得点が合格基準として定められています。
ただし、海事代理士試験は受験生のレベルが高いため、「筆記試験」の平均正答率が60%を上回るケースも珍しくありません。つまり、「60%」の得点では、不合格になる年も珍しくないのです。
(※令和5年海事代理士試験の平均正答率は「64.08%」です。)
海事代理士試験に確実に合格するには、「60%」を上回る正答率を目指すことが必要です。
2-5.試験の免除制度
海事代理士試験では、筆記試験の免除制度が設けられています。
前年の筆記試験に合格し、口述試験で不合格となった受験生については、受験願書に筆記試験免除申請書を添えて提出することにより、本年の筆記試験は免除され、直接口述試験を受けることができます。
3.試験の日程
2024年度(令和6年度)の海事代理士試験の日程は以下の通りです。
出願期間 | 2024年8月1日(木)〜8月31日(土) |
筆記試験 | 2024年9月25日(水) 10:15~16:30 |
筆記試験の合格発表 | 2024年10月30日(水) |
口述試験 | 2024年11月26日(火) 10:30~17:30 |
口述試験の合格発表 | 口述試験終了後20日以内 |
3-1.出願期間
海事代理士試験の出願期間は、2024年8月1日(木)から2024年8月31日(土)までです。
(郵送の場合は書留郵便とし、8月31日消印のものまで有効)
受験願書は、インターネットからダウンロードできる他、各地の地方運輸局でも入手できます。
3-2.受験手数料
海事代理士試験の受験手数料は、「6800円」です。
支払いは、受験願書に収入印紙を貼って、消印をせずに提出する方法で行います。
3-3.試験日
海事代理士試験の筆記試験の実施日時は、2024年9月25日 (水) 10:15~16:30です。
その後、2024年10月30日(水)に筆記試験の合格発表が行われ、合格者に対して、口述試験の案内が送付されます。
口述試験の実施日時は、令和6年11月26日(火) 10:30~17:30です。
(受験者多数の場合、一部受験者については、同日の17:30以降又は同月27日(水)に実施する場合もあります。)
他の資格試験と大きく異なるのは、「筆記試験」「口述試験」ともに平日に実施されることです。会社員の方は、事前に休暇を申請する等の対策が必要です。
3-4.試験会場
海事代理士試験の試験会場は、「筆記試験」と「口頭試験」で異なります。
「筆記試験」では、以下の11会場が用意されています。
(札幌市、仙台市、横浜市、新潟市、名古屋市、大阪市、神戸市、広島市、高松市、福岡市、那覇市)
一方、口述試験の会場は、東京都の国土交通省(本省)のみとなっています。
3-5.合格発表
海事代理士試験の合格発表は、口述試験終了後20日以内に行われます。
官報において受験番号が公示され、本人には合格証書が送付されます。
4.海事代理士試験の過去問
海事代理士試験では、直近数年分の過去問が公表されています。
筆記試験 | 口述試験 | ||
2023年 (令和5年) | 問題 | 模範解答 | 問題及び模範解答 |
2022年 (令和4年) | 問題 | 模範解答 | 問題及び模範解答 |
2021年 (令和3年) | 問題 | 模範解答 | 問題及び模範解答 |
2020年 (令和2年) | 問題 | 模範解答 | 問題及び模範解答 |
2019年 (令和元年) | 問題 | 模範解答 | 問題及び模範解答 |
模範解答は、法令の改正によって変更になっている場合もあるため、注意が必要です。
必ず最新の情報について、各法令を参照したり、受験指導校のテキストを利用したりして確認しておきましょう。
5.海事代理士試験の難易度は?合格率と受験者数の推移
直近5年間の、海事代理士試験の合格率と受験者数の推移は次のとおりです。
2023年 (令和5年) | 2022年 (令和4年) | 2021年 (令和3年) | 2020年 (令和2年) | 2019年 (令和元年) | ||
筆記試験 | 受験者数 | 409 | 361 | 302 | 288 | 303 |
合格者数 | 228 | 199 | 167 | 156 | 156 | |
合格率 | 55.7% | 55.1% | 55.3% | 54.2% | 51.8% | |
口述試験 | 受験者数 | 235 | 197 | 212 | 199 | 160 |
合格者数 | 223 | 194 | 209 | 124 | 97 | |
合格率 | 94.9% | 98.5% | 98.6% | 62.3% | 60.6% |
筆記試験の合格率は、「50%程度」で安定して推移しています。
ただし海事代理士試験の場合、後述のとおり、受験生のレベルが全体的に高い傾向があります。そのため、合格率を額面通りに受け取ることはできません。
口述試験については、試験年度による差が非常に大きいです。
ここ数年は、90%台で推移しているものの、低い年は60%前後まで低下することもあります。海事代理士試験は、口述試験で落ちるケースも多いため、しっかりとした口述試験対策が必要です。
6.海事代理士試験の難易度が高いと言われている4つの理由
海事代理士試験は、一見すると合格率が高く、難易度が低いように感じられるかもしれません。しかし実際には、合格率以上に難易度が高いと言われている試験です。
ここでは、海事代理士試験の難易度が高いと言われている理由について解説します。
6-1.テキストや参考書が少ないから
海事代理士試験の難易度が高い理由として、テキストや参考書が少ないことが挙げられます。
他の法律系資格試験と比べると、海事代理士試験の受験者数は決して多くはありません。
そのため、市販のテキストや参考書が豊富とはいえず、受験生が入手できる教材も限られています。また、最新の法改正に対応した教材も少ないため、自分で情報を収集し、知識をアップデートしていく必要があります。
こうした学習環境の厳しさが、海事代理士試験の難易度を高める一因となっているのです。
特に独学の場合、海事代理士試験の勉強を効率的に進めていくことは、非常に難しいといえるでしょう。
6-2.受験生のレベルが高いから
受験生全体のレベルの高さも、海事代理士試験の難易度を押し上げている要因です。
海事代理士試験は、他の法律系資格試験と比べて初学者が少なく、受験生全体のレベルが高い傾向にあります。
受験者の多くが、すでに行政書士などの法律資格に合格していたり、船員としての実務経験があったりと、海事代理士試験に役立つ何らかの経験を有しているからです。
そのため、海事代理士試験の平均正答率も、例年非常に高くなっています。
例えば、令和5年度試験の平均正答率は、「64.08%」となっており、合格基準点を大きく上回っています。このような現象は、他の資格試験ではあまり見られません。
他の資格試験と比べて、受験生全体のレベルが高くなっていることが、海事代理士試験の難易度が合格率以上に高いと言われる理由の1つです。
6-3.科目数が多いから
必要な科目数が多いことも、受験生の負担を大きくする原因となっています。
海事代理士試験で学習すべき科目は、合計20科目にも及びます。この科目数は、他の法律系資格試験と比べても、群を抜いて多い数字です。
しかも海事代理士試験は、一般的にはなじみの薄い「船舶に関する法律」や「海商法」などの科目がメインとなっているため、学習の難易度はさらに高くなります。
多くの受験生にとって、1人で20科目を効率的に学習するのは容易ではありません。
限られた時間の中で、どのように学習を進めていくべきか、適切な学習計画を立てることができるかが、合格の鍵を握っています。
6-4.口述試験の難易度が高いから
口述試験の難易度が高いことも、海事代理士試験の難易度を高めている要因の1つです。
海事代理士試験では、口述試験の合格率が「60%程度」まで落ち込む年も珍しくありません。因みに、最難関と言われている「司法試験」や「司法書士試験」ですら、口述試験の合格率は「90%台後半」で安定して推移しています。
もちろん、口述試験の合格率だけで、試験の難易度が決まる訳ではありませんが、難易度が高い試験であることは間違いないでしょう。
口述試験は、筆記試験以上に苦手意識を感じる受験生が多い試験です。
確実に合格するためには、「落ちる可能性が十分にある」という心構えを持ち、入念に対策を行うことが必要です。
7.海事代理士試験に必要な勉強時間
海事代理士試験の合格に必要な勉強時間は、一般的に「500時間程度」だと言われています。しかし、これはあくまでも目安であり、個人差が大きいのが特徴です。
法律初学者が独学で勉強する場合、500時間かけて勉強しても、合格できないこともあります。一方で、ベースとなる法律知識があったり、受験指導校を利用したりすると、1ヶ月程度の勉強で合格できるケースもあるのです。
海事代理士試験は、情報が少なく、学習環境が整っていない試験です。
だからこそ、学習の進め方によって必要な勉強時間も、大きく変わってきます。
限られた情報の中で、適切な受験戦略を立てることができれば、合格に大きく近づくことができるでしょう。
8.海事代理士試験の勉強方法のポイント
海事代理士試験に合格するためには、以下のポイントを意識して勉強することが大切です。
【海事代理士試験対策のポイント】◉ 各科目に、強弱をつけて勉強する
◉ 頻出度の高い分野を、重点的に対策する
◉ 船舶法、船舶安全法などを始めとした海事法令を重点的に進める
◉ 筆記試験と口述試験をバランスよく対策する
海事代理士試験は、他の資格試験とは一線を画した、独特の特徴を持った試験です。
◉ 20科目にも及ぶ出題科目
◉ 海商法、船舶法などの、なじみの少ない法律科目
◉ 正誤式、多肢選択式、空欄補充形式などの多様な出題形式
◉ 対策のしづらい口述試験 など
いずれも他の資格試験では見られない、海事代理士試験特有の特徴であり、勉強の進めづらさを感じる人も少なくありません。
独学に限界を感じたら、受験指導校を活用することも一案です。
伊藤塾の「海事代理士試験合格講座」では、
・オリジナルレジュメテキストを用いたインプット講義
・充実した筆記試験の演習
・他にはない「海事代理士試験」公開模擬試験
・口述試験対策の演習講義
・本番さながらの口述模試
など海事代理士試験の合格に向けて、充実した学習環境を用意しています。
プロの講師陣が、試験問題を徹底的に分析し、重要度をランク付けして整理したことで、情報の少ない「海事代理士試験」についても、効率的な学習が可能になっています。
質の高い学習環境で、戦略的に対策することで、合格に大きく近づくことができるでしょう。
9.【Q&A】海事代理士試験に関するよくある質問
9-1.海事代理士試験は、独学でも合格できる?
海事代理士試験に独学で合格することは、不可能ではありません。
ただし前述のとおり、海事代理士試験の情報は少なく、市販のテキストや参考書も限られています。行政書士試験などの合格者などでも、独学に限界を感じて、講座を受講するケースが多いようです。
※関連動画 「多数の資格取得者でも、独学は限界と感じ即受講 見事に1回で合格!2023年度海事代理士試験 合格者インタビュー」
※関連動画「行政書士合格者でも参考書や情報が少ない試験での合格は困難と判断、合格講座を有効活用し、見事に合格!」
9-2.海事代理士試験に合格後、登録だけを後回しにしても問題ない?
海事代理士の合格証書に有効期限はありません。
そのため、試験合格後、海事代理士としての登録を後回しにしても問題ありません。
10.まとめ
最後に、今回の記事の要点をまとめます。
◉「海事代理士試験」では、筆記試験と口述試験が実施される
◉ 必要な科目数は「20科目」に及ぶ一方で、市販の参考書も少ない
◉「口述試験」で落ちることも珍しくない
「海事代理士試験」は、見た目の合格率以上に、難易度が高い難関試験です。
ウェブ上の情報も少なく、独学の学習に限界を感じる人も少なくありません。
「海事代理士」試験に確実に合格したい方は、ぜひ伊藤塾へご相談ください。
伊藤塾の「海事代理士合格講座」は、筆記試験から口述試験まで、オールインワンの対策講座を開講している業界でも数少ない講座です。
夢の実現に向けて、一歩を踏み出してみてください。伊藤塾が、あなたの挑戦を全力でサポートいたします。

著者:伊藤塾 行政書士試験科
伊藤塾行政書士試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの行政書士試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、行政書士試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。
