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六法とは?司法試験受験に必要な六法を詳しく解説します

2025年03月04日

 
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「六法」とは、日本において全ての法律の基礎となる6つの法律のことで、「憲法」「民法」「刑法」「商法」「民事訴訟法」「刑事訴訟法」を指します。

どんなに細かい法律を勉強するにしても、基本的にこれらの法律の理解が前提になってきます。

「六法を知らずして法律を語ることはできない」とも言われるくらい、基本中の基本の法律となるのです。

市販されているポケット六法やデイリー六法などには、これらの法律に加えてその他の細かい法律や関連する政省令などもたくさん掲載されています。

数ある法律の中でも特に重要とされている六法は、司法試験においてはどのような立ち位置になるのでしょうか。弁護士になるためには六法全書に掲載されている法律を全て暗記する必要があるのでしょうか。

この記事では司法試験での六法の向き合い方について、各法律についての解説や、司法試験で使用する六法などについて解説していきますので、これから司法試験や予備試験を受験しようと考えている人はぜひ参考にしてください。

【目次】
1.六法とは?司法試験や予備試験の試験科目について
2.司法試験における六法の立ち位置
3.六法の種類
4.各法律について
 4-1.憲法
 4-2.民法
 4-3.刑法
 4-4.商法
 4-5.民事訴訟法
 4-6.刑事訴訟法
 4-7.行政法
5.まとめ

 

1.六法とは?司法試験や予備試験の試験科目について

六法とは前述のとおり、①憲法②民法③刑法④商法⑤民事執行法⑥刑事訴訟法の6つの法律を指しており、これは司法試験でも予備試験の試験科目においても変わりません。

司法試験業界では、憲法、民法、刑法を総称して「上三法」、商法、民事訴訟法、刑事訴訟法を総称して「下三法」と呼ぶこともあります。

しかし、司法試験や予備試験では六法に加えて⑦行政法がその試験範囲に加わることになります。

この行政法という科目は、例えば「憲法」や「民法」などのように、「行政法」という固有の法律があるわけではなく、「行政手続法」「行政不服審査法」「行政事件訴訟法」「国家賠償法」など、行政に関する法律をまとめて1つの行政法という科目になっているのです。

また、司法試験では自身で試験科目を選択する⑧選択科目というものもあり、倒産法・租税法・経済法・知的財産法・労働法・環境法・国際公法・国際私法の中から1科目を選択して勉強することになります。

予備試験においてはさらに、⑨⑩法律実務基礎科目として民事系と刑事系の2科目が追加されます。

この科目はいわゆる実務を意識した科目であり、基本科目で学んだ知識を、具体的事件を前提とした訴訟においてどのように使いこなすかを前提とした、より実践的な知識が問われる科目になります。

このように、司法試験や予備試験においてはいわゆる六法と呼ばれる基本法律科目以外の法律も試験範囲として出題されることになるのです。

 

2.司法試験における六法の立ち位置

司法試験と聞くと、よく六法全書を丸暗記しないと合格する事ができないなどと勘違いしている人がいます。

しかし、それは大きな間違いで、司法試験や予備試験の論文式試験では、試験中に試験委員会より貸与された司法試験用法文を参照しながら解答する事が可能です。

つまり、司法試験や予備試験に合格するためには六法を丸暗記する必要はないのです。

ただし、論文式試験では厳しい時間的な制約があり、限られた時間の中で一から条文を探していると、条文を探すことに時間を取られてしまい、答案を書き切る前に時間切れとなってしまう可能性が高いのも事実です。

もちろん丸暗記が不要なのは間違いないのですが、頻出の条文に関してはある程度覚えておいた方が効率がいいですし、だいたいどの辺りにあるかくらいは覚えておくと、現場で条文を引く際に慌てなくて済むでしょう。

もっとも、問題演習を重ねるにつれて頻出条文については自然と身についていくため、意識して暗記に力を入れる必要はありません。

 

3.六法の種類

六法は市販されているものだけでも、六法全書、判例六法、ポケット六法、デイリー六法などさまざまな種類のものがあります。

いわゆる六法はどの六法を選んでも掲載されているので、関連法令の掲載の有無や条文の記載の仕方など自分の好みのものを選ぶようにすると良いでしょう。

ただ、司法試験の論文式試験で貸与される六法は、いわゆる「司法試験用法文」という少し特殊な六法になっており、デイリー六法やポケット六法,判例六法など受験生によく使用されている六法の形式と異なり,関連条文や関連判例,正式に定められていない条文の見出しなどは一切記載されておらず、かなり無味乾燥な構造になっています。

初学者の段階では法律の全体構造がよく見えるデイリー六法かポケット六法、勉強が進んだ段階で判例を即座に参照できる判例六法を使用することが、受験生のスタンダードです。

普段の勉強で関連条文などを活用して勉強している場合、実際に試験会場でこの六法を目にした時に少し面食らってしまうかもしれません。できれば事前に貸与される六法を確認しておいて、実際に会場で六法を引く際に効率良く条文を探せるように対策しておきましょう。

 

4.各法律について

それでは六法と呼ばれる各法律はそれぞれどのような法律なのでしょうか。

それぞれの特徴を解説していきます。

司法試験や予備試験の試験科目でもある行政法についても解説していきます。

 

4-1.憲法

憲法は、国民の権利・自由を守るために、国がすべきことや守るべき義務を定めた日本における最高法規となります。

つまり、憲法は国民のために、国民の権利・自由を国家権力から守るためにある法律なのです。

一般的に法律と聞くと、違反した場合には処罰されるなどどちらかというとマイナスのイメージが強いかもしれません。

しかし、私人同士の争いにおける決まりを法定した他の法律とは違い、憲法は私たちの権利・自由を守るためにあるのです。

立憲主義に基づく憲法として、国家権力に縛りをかけることで、私たちの人権を最大限保障しています。

例えば、13条の「すべて国民は、個人として尊重される」と個人の尊重を宣明した上で、表現の自由(21条)や居住、移転の自由(22条)、教育を受ける権利(26条)など多くの権利・自由を列挙して国民の自由を保障しているのです。

そして、このように人権を手厚く補償している憲法は、それが国家権力によって簡単に変えられる事で人権保障が弱められることのないよう、96条で憲法の改正には各議院の総議員の3分の2以上の賛成による国会の発議と国民投票を行いその過半数の同意が必要とする厳しい要件を定めることで、硬性憲法であることを示しているのです。

司法試験や予備試験においては、具体的な事案から生じる問題に対し、いかに各当事者の対立構造を意識し、主張をまとめる事ができるかが重要な科目になります。

 

4-2.民法

民法とは、私人間の権利義務の関係をまとめた一般的な法律の事を指します。

「民のための法律」の略称から分かる通り、憲法のように国家権力と国民との間のルールを定めたものではなく、市民と市民の間における関係性をまとめているのが民法となります。

一口に私人間の権利義務と言っても、民法の対象となる内容は多種多様で、具体的には、家族や相続などに関する規定から、企業対個人、企業同士における財産権の取り扱いに関する規定など、その範囲は多岐にわたります。

民法は会社法や労働法など、さまざまな私法上の関係を規律する法律の基本になっている法律です。

日々の生活やあらゆる法律と密接に関わっている法律であるため、まずは一番最初に学習すべき法律であることは間違いありません。

「民法を制するものは司法試験を制する」と呼ばれるくらい、司法試験においても重要な科目となるのです。

司法試験や予備試験では、具体的な事案に対し、民法の具体的な条文を用いて妥当な解決を図ることが重要な科目になります。

 

4-3.刑法

刑法とは、刑罰を科せられるべき行為である犯罪の要件を定め、それに関する刑罰を規定した法律の事を指します。

狭義では「刑法」と呼ばれる法律そのものを意味しますが、広義では刑法という法律以外の、違反した場合に科せられる法律上の規範のすべてのことを指します。

この意味での刑法では、例えば軽犯罪法や道路交通法といった関連法律も、その罰則を適用する部分については広い意味での刑法に含まれると言えることになります。

司法試験や予備試験においては、狭義の刑法のみが出題範囲となります。

刑罰は国家によって執行されるため、刑法は国家と個人との間を規律する公法に属することになります。

そのため、私人間の権利義務関係を規律する民法などの私法とは区別されることとなります。

司法試験や予備試験では、具体的な事案の中から刑法上問題となる行動を抜き出し、それに対して適切な処理をすることが出来るかが重要な科目になります。

 

4-4.商法

形式的には「商法」という法律そのものを指しますが、実質的には商事に関する私法的な法規の事を指します。

企業を巡る権利義務関係を規律する法律を総称して「商法」と呼ぶ場合もあります。

商法は、経済主体の対象を企業に限定している点で、同じ私法である民法の特別法という位置づけになります。

商法と同じ位置づけの法律として「会社法」という法律があります。

かつては商法の中に含まれてた会社法ですが、会社の利害関係を調整するためのルールを規定する必要性から、独立して会社法が設けられることとなりました。

司法試験や予備試験では、メインで勉強するのは主に会社法の分野になります。

具体的な事案をいかに妥当な解決を導くかが重要で、主に条文操作が重要な科目になるといえるでしょう。

 

4-5.民事訴訟法

民事訴訟法とは、私人間の紛争に対して、裁判所が権利義務の存否を裁定することによって解決を図る制度である民事訴訟のルールを定めた法律になります。

当事者間で争いが起きた場合、話し合いなどで問題が解決すればいいのですが、場合によっては当事者同士での話し合いでは話がまとまらないことがあります。

このような場合には、紛争当事者のみで問題を解決するのではなく、公平な立場から紛争を解決する機関である裁判所を間に挟む事が必要になることもあるでしょう。

その際の訴訟手続に関して明確な解決ルールが定められていなければ、一方当事者に不当に有利ないし不利な訴訟運営をすることを認めることとなってしまい、紛争当事者の納得のいく解決が困難となるでしょう。

そのため、訴訟の手続やその判断の仕方などをあらかじめ法定したものが民事訴訟法という法律となります。

観念的な要素が強いため、「民訴は眠素」と言われるくらい初学者にとってなかなかとっつきにくい科目です。

司法試験や予備試験では、具体的な事案での民事訴訟の手続に関して、理論体系をしっかりと意識した答案を作成することが重要になります。

 

4-6.刑事訴訟法

刑事手続の進め方や関係者の権利義務関係など、刑事訴訟に関する主要な事項を定めた法律が刑事訴訟法となります。

犯罪が起きると、逮捕、捜査、起訴、裁判と手続きが進むことになり、裁判で判決が出ると処罰が確定することになります。

それら一連の刑事訴訟についてのルールを定めているのが刑事訴訟法となります。

被疑者や被告人が虐げられてきた歴史を踏まえて、被疑者や被告人に過剰な負担をかけないよう、特に捜査については細かい規定が定められているのが特徴になります。

司法試験や予備試験では、民事訴訟と同様に手続の流れを理解し、具体的な事案を論理的に解決する事が重要になります。

判例学習が重要な科目でもあり、判例の規範等はある程度覚えておくと有用でしょう。

 

4-7.行政法

「行政法」という固有の法律は存在しておらず、行政の組織や作用に関するさまざな法律をまとめたものの総称が行政法となります。

行政に関する法律に共通する法理論や制度を学ぶことで、雑多に見える多数の行政関係の法律を適切に理解し、新たに立法を行う際の指針とするために行政法を学ぶことになります。

行政手続法や行政事件訴訟法、地方自治法、個人情報保護法などが行政法にあたります。

司法試験や予備試験においては、判例が定立した判断枠組みを用いて具体的な事案を解決に導くことが重要になるでしょう。

 

5.六法を効率良く活用するためには

当記事の重要ポイントをまとめます。

◉六法とは憲法、民法、刑法、商法、刑事訴訟法、民事訴訟法の事を指す。
◉六法は全ての法律の基礎となる法律。
◉使用する六法はお好みで、試験では「司法試験用法文」という六法が貸与される。

当記事が、あなたの司法試験合格への一助になれば幸いです。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

伊藤塾では、「盤石な基礎」と「合格後を考える」を指導理念に、司法試験合格はもちろんのこと、合格後の活躍まで見据えたお一人おひとりへの丁寧なサポートで、受講生の皆様を全力で支えています。

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著者:伊藤塾 司法試験科

伊藤塾司法試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。

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