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弁護士から裁判官になれる?方法・条件・流れについて解説

2025年03月04日

 
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裁判官になるためには、司法試験に合格し、司法修習後に裁判官として採用されるルートが一般的です。

しかし、2015年以降に裁判官に任命された人数はいずれも100人を切っており、司法試験合格者数から見ると狭き門であることがわかります。

司法試験に一発で合格し、その後の司法修習も優秀な成績で修了するなど、司法試験合格者の中でも特に優秀な人材が選ばれる可能性が高いため、早い段階で裁判官になるのを諦めてしまう方も多いです。

一方で、「弁護士任官」という制度を利用すれば、弁護士としての経験を積んだ後に、裁判官にキャリアを変更することができます。

この記事では、弁護士任官制度の要件や流れを詳しくご紹介していきます。

将来裁判官として働くことを夢みている方は、ぜひ最後までご覧ください。

【目次】
1.弁護士任官制度なら弁護士から裁判官になれる!
2.弁護士から裁判官になる条件
 2-1.常勤任官の場合
 2-2.非常勤任官の場合
3.裁判官として任官するまでの流れ
 3-1.常勤任官の場合
 3-2.非常勤任官の場合
4.弁護士経験のある裁判官の重要性
5.司法試験に合格して裁判官としてのキャリアを切り開こう
6.まとめ

 

1.弁護士任官制度なら弁護士から裁判官になれる!

弁護士任官制度を利用すれば、司法修習後に裁判官として採用されなかったとしても、弁護士から裁判官になることが可能です。

裁判官には、裁判官として日常的に業務を行う「常勤裁判官」と、弁護士としての身分をもったまま、 毎週1回だけ裁判官として勤務する「非常勤裁判官」がいます。

日本弁護士連合会が公表しているデータによると、弁護士任官制度を利用して常勤裁判官になった人数は、2022年10月時点で127人(現職は65人)、非常勤裁判官になった人数は609名(現職は120人)となっており、少なくない数の方が弁護士任官を利用して裁判官になっていることがわかります。

参照①:弁護士任官者数(常勤任官者)ー弁護士会連合会別ー|日本弁護士連合会
参照②:弁護士任官Q&A  ―非常勤―|日本弁護士連合会

将来的に裁判官になりたいが、すぐに裁判官として活躍する自信がない方や、事件当事者の悩みに直接触れることできる弁護士の経験をしてから裁判官になりたいと考える方もいるでしょう。

弁護士任官制度を利用すれば、このような思いを実現した上でキャリアアップも目指すことができるのです。

 

2.弁護士から裁判官になる条件

弁護士から裁判官になる条件は、常勤任官および非常勤任官の場合で若干異なります。

ここでは、それぞれの場合における条件について詳しく解説していきます。

2-1.常勤任官の場合

常勤裁判官として仕事をするためには、判決書を含めた裁判書類等の作成を、日常業務として処理する能力が求められます。

また、裁判所書記官や事務官と連携してスムーズに仕事をこなす必要があるため、通常の社会生活において要求される程度の協調性も必要とされています。

ここで、日本弁護士連合会が定める、任官推薦基準・選考要領等の概要を確認してみましょう。

【形式的基準】
①弁護士経験10年以上の判事任官が望ましいが、当面は、弁護士経験3年以上の判事補任官も可
②年齢55歳位までの者を基本とする
③これまでに懲戒処分を受けたことがないこと

【実質的基準】
①法律家としての能力、識見(事実認定能力、事件処理に必要な理論上及び実務上の専門的知識能力、幅広い教養に支えられた視野の広さなど)
②人物・性格面(廉直さ、公正さ、寛容さ、決断力、協調性、基本的人権と正義を尊重する心情など)

なお、弁護士任官制度を利用するにあたって、任官希望者の信条や宗教等については考慮しないこととされています。

また、弁護士経験が10年に満たない場合、司法研修所での成績が占める比重が大きくなります。そのため、あらかじめ司法研修所で成績開示を受けた上で応募するのが良いでしょう。
参照: 弁護士任官Q&A ―常 勤―|日本弁護士連合会

 

2-2.非常勤任官の場合

非常勤裁判官に求められる条件は次の通りです。

【形式的基準】
①週1回、丸1日勤務できる人
②弁護士経験5年以上の人(非常勤裁判官任官時に5年経過していれば足り、応募時点では5年未満であっても問題ない)
③非常勤裁判官任官時で55歳くらいまでが基本
④これまでに懲戒処分を受けたことがないこと

【考慮事項】
①裁判官と同等の立場で調停手続を主宰する職務を遂行し得る資質・能力
②法律家としての能力、識見(事実認定能力、事件処理に必要な理論上及び実務上の専門的知識能力、幅広い教養に支えられた視野の広さなど)
③人物・性格(廉直さ、公正さ、寛容さ、決断力、協調性、基本的人権と正義を尊重する心情など)
④将来における常勤裁判官への任官の意思(確定的なものである必要はない)

提出された書類や面談などを通じて、これらの素養が満たされているかを審査されます。

なお、採用に当たって、司法研修所の成績自体が独立に評価されることはないので、司法修習の成績が悪かったからといって、それだけで採用が見送られることはありません。
参照:弁護士任官Q&A  ―非常勤―|日本弁護士連合会

 

3.裁判官として任官するまでの流れ

弁護士任官制度を利用して裁判官になるための大まかな流れを、常勤任官と非常勤任官ごとに紹介します。

 

3-1.常勤任官の場合

4月1日任官が原則ですが、都合によっては10月1日任官も可能とされています。

ここでは、4月1日任官の場合を例に、手続きの大まかな流れをご紹介します。

応募する
まで
法律事務所・任官支援事務所・公設
養成事務所で経験を積む
前年1月〜
2月頃まで
・所属の単位弁護士会に、任官を希望
する旨を申し出る
・「弁護士任官推薦委員会等に提出する
応募書類と関連資料を提出する
①裁判官採用選考申込書
②推薦委員会の調査・評価を受ける
ことの承諾書
③裁判官応募者のための調査質問票
(自己評価票)
④過去3年分の事件リスト記載用紙
3月頃弁護士任官推薦委員会による、面接を
含めた審査(概ね2ヵ月から3ヵ月
程度かかる)
6月下旬頃
まで
推薦委員会において推薦を可とする
議決を受けたら、所属の単位弁護士会
を通じて、最高裁判所に対する
「裁判官採用選考申込書」を提出する
11月頃・最高裁判所が、下級裁判所裁判官指名
諮問委員会に対し、任官希望者を裁判官
として指名することの適否について
諮問する
・指名諮問委員会が、地域委員会に
対して情報収集を依頼する
・最高裁判所で面接が実施される
12月頃・指名諮問委員会における審議が行わ
れる
・指名諮問委員会における審議結果
の答申を受けて、「最高裁判所裁判官
会議」において、裁判官に任命される
べき者として指名することが内定される
と、任官希望者に対して採用内定が通知
される
3月閣議決定を経て、内閣により判事(補)に
任命される
4月1日常勤裁判官として任官
※やむを得ない事情があれば、任官時期に
ついて考慮されることがある

参照: 弁護士任官Q&A ―常 勤―|日本弁護士連合会

3-2.非常勤任官の場合

非常勤裁判官は、毎年10月1日に採用されます。

応募する
まで
法律事務所・任官支援事務所・公設
養成事務所で経験を積む
前年10月
頃から1月
頃まで
各弁護士会連合会の推薦委員会による
審査を受けることの承諾書を、同委員
会宛てに提出する
※応募期間は、各弁護士会および
弁護士会連合会によって異なります
4月下旬
頃まで
同委員会及び弁護士会連合会の推薦の
議決を経て、最高裁判所に採用の
申込みをする
6月頃各実施庁の長(地裁所長・家裁所長)
等との面接が行われる
※下級裁判所裁判官指名諮問委員会の
審査は行われない
7月初旬
〜中旬
面接結果に基づき最高裁が採用を内定
する
7月下旬内定通知が発送される
10月1日非常勤裁判官として任官

参照:弁護士任官Q&A  ―非常勤―|日本弁護士連合会

4.弁護士経験のある裁判官の重要性

将来的に裁判官として働くのであれば、なるべく早い段階から裁判官としてのキャリアを積む方が良いと考える人もいるかもしれません。

しかし、国民のためにわかりやすい裁判を実現するためには、弁護士経験のある裁判官の重要性は非常に高いと言えるでしょう。

確かに、刑事司法の世界では、裁判員裁判の導入により、国民にとって刑事司法の世界が身近に感じられるようになったかもしれません。

しかし、民事司法の世界では、まだまだ国民にとって身近でわかりやすい司法制度を構築できているとは言い難い現状があります。

裁判手続きのIT化・デジタル化で国民が司法にアクセスしやすくなる等、司法の世界も徐々に変わりつつありますが、国民にとって意義のある民事司法を実現するためには、事件当事者の気持ちを汲んだ解決方法を提示できる裁判官の需要が高いと言えるのです。

この点、代理人弁護士として当事者と向き合い、試行錯誤しながら妥当な結論を導くことを経験してきた弁護士であれば、当事者の立場に立った法的解決策を常に念頭に置いて考えることができます。

弁護士として培った幅広い社会経験を活かすことで、国民にとってより身近で頼りがいのある司法の実現者になることができるのです。

なお、弁護士任官制度ではありませんが、2023年11月、弁護士として多方面で活躍されていた宮川美津子弁護士が、最高裁判所の判事に任命されました。

今後も、​​社会の実相について豊富な知識・経験を持つ弁護士の裁判官任官が期待されています。

※女性裁判官については、こちらの記事も併せてご覧ください。
女性裁判官の割合や歴代最高裁女性判事の人数は?裁判所は女性が働きやすい環境なのか解説

 

 

5.司法試験に合格して裁判官としてのキャリアを切り開こう

どのような経歴であっても、裁判官として働きたいという強い熱意を持っているのであれば、誰もが司法試験にチャレンジすべきだと思います。

裁判官は、自分の判断次第で他人の人生をも決めてしまうくらいの重い責任のある仕事です。

判決の内容によっては、社会的にも大きな影響を与えることもあるでしょう。

しかし、このような責任感ある仕事ができるのは裁判官ならではですし、当事者間では解決ができない法的問題を解決に導けるのは、裁判官の大きな魅力でもあります。

また、社会経験や弁護士経験を活かして仕事をする事で、国民と司法を結びつける重要な役割を担うこともできるでしょう。

もし、少しでも裁判官として働きたいという想いを秘めているのであれば、その夢を実現のためにぜひ司法試験にチャレンジしてみてください。

学生はもちろん、なかなか勉強時間が確保できない社会人でも、受験指導校を活用して効率よく正しい勉強を継続できれば、誰でも司法試験に合格することができます。

実際に、受験指導校を利用することで、一発合格を果たした社会人の受験生も少なくありません。

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※裁判官を含めた法曹三者の魅力について詳しく知りたい方は、こちらの記事をご覧下さい。
法曹三者(裁判官・検察官・弁護士)の仕事とは?年収・魅力・適性をご紹介!

 

6.まとめ

弁護士任官制度は、弁護士経験を積んだあとに裁判官になれる制度です。

事件当事者の問題を解決することの難しさを知っている弁護士経験を活かし、裁判官として仕事をすることで、国民にとってより身近で頼りがいのある司法の実現者になることできます。

また、裁判官という新たな視点から問題に向き合う事で、これまで培ってきた経験や知識の幅がさらに広がっていく満足感や充実感を得ることもできるでしょう。

弁護士や裁判官など法曹の仕事に興味がある、あるいは、より良い世の中を創るための社会的貢献度の高い仕事をしてみたい方は、ぜひ司法試験にチャレンジすることを検討してみてください。

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著者:伊藤塾 司法試験科

伊藤塾司法試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。

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