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弁護士の仕事がなくなる?AIの登場による弁護士の将来性を徹底解説!

2025年03月04日

 
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近年、急速なAI(人工知能)技術の発達によって、これまで人間が行ってきた仕事の一部をAIがこなせるようになってきました。

AIは、「論理的思考」と「知識の活用」という側面について、人間よりも遥かに迅速かつ正確に仕事をこなすことができます。

そのため、今までは高度な知的産業であり、資格を持った専門家以外では代替不可能と思われていた弁護士についても、将来的にAIによって仕事が奪われてしまうのではないかと危惧されています。

弁護士になることを夢見る方にとっては、将来的に弁護士の仕事がなくなってしまうのではないかと、不安に思う方もいらっしゃるかもしれません。

このコラムでは、AIの登場による弁護士の将来性や、AIとの共存の仕方、今後弁護士がAIに仕事を奪われない方法について解説していきます。

最後まで読んでいただければ、「弁護士の将来性は明るく、AIに仕事を奪われることがなく、むしろAIを利用して困っている人を助けることができる」とわかっていただけると思います。

【目次】
1.AIの登場によりさまざま仕事がAIで代替可能に
2.弁護士の仕事もAIに取って代わられる?
 2-1.そもそも弁護士の仕事とは?
 2-2.弁護士の仕事のうちAIができる仕事とは?
  2-2-1.契約書のリーガルチェック
  2-2-2.過去の判例から賠償金を算出する
 2-3.AIでは弁護士の仕事をすべて代替することはできない
3.人工知能弁護士「Ross」|Baker & Hostetler弁護士事務所
 3-1.ほかにもいくつかの法律事務所でAIが導入されている
 3-2.AI弁護士VS人間弁護士
4.法曹界でのAIの将来性|弁護士とAIの共存
5.弁護士が仕事を奪われないためには
 5-1.依頼者に親身に寄り添い信頼関係を築く
 5-2.AIを積極的に活用する
 5-3.コミュニケーション能力を高め、営業に力を入る
 5-4.専門性の高い弁護士になる
6.弁護士の将来性
7.まとめ

 

1.AIの登場によりさまざま仕事がAIで代替可能に

AIは、効率的で迅速かつ正確な事務処理能力を持ち、さまざまな問題について最適な方法で処理をすることができるため、経済活動の生産性を大きく向上させることが期待されています。

そのため、単純作業や定形作業をAIが代替するようになっていくと考えられています。

野村総合研究所の2015年のレポートではありますが、10〜20年後には日本の労働人口の約 49%がAI等で代替可能になるという結果が出ています。
参照:日本の労働人口の 49%が人工知能やロボット等で代替可能に

すでに私たちの日常生活においても、「ルンバ」等のお掃除ロボットや自動車の自動運転など、さまざまな場面でAIが活用されています。

AIが代替可能な仕事や業務は以下のような業務になります。

AIが代替できる仕事とは?
✔︎システム化が可能な単純作業
✔︎スピードや正確性が求められる作業
✔︎膨大な情報を扱う作業
✔︎一貫性を持った情報処理が必要とされる業務

 

AIに仕事を奪われる可能性のある職業
・電話オペレーター
・データ入力や管理などの単純作業
・事務職全般
・経理職全般
・スーパーやコンビニの店員
・ホテルのフロントマン
・飲食店のウエイター
・銀行員
・工場の作業員
・タクシー運転手
・電車の運転手 など


ここに挙げた職業はあくまでも一例で、AIに仕事を奪われるおそれのある職業がほかにもたくさんあります。

労働力の減少が叫ばれる中、人工知能やロボット等を活用して労働力を補完しようとした結果、それが人間の仕事を奪うことに繋がっていくのです。

 

2.弁護士の仕事もAIに取って代わられる?

それでは、弁護士の仕事も今後AIに取って代わられてしまうのでしょうか。

弁護士の仕事内容から考えていきましょう。

 

2-1.そもそも弁護士の仕事とは?

難関国家資格である司法試験に合格した人だけが就くことのできる、法律のプロフェッショナルである弁護士ですが、その業務内容は多岐にわたり、法律事務所で勤務し、困っている方の相談を聞くだけでなく、社員として企業の法務部で働いたり、国や地方公共団体で法律を創る側に回ったりするなど、働き方の多様化も進んでいます。

弁護士としての仕事内容には、主に以下のようなものがあります。

弁護士としての仕事内容
✔法律の相談を受け、相談内容を詳細にヒアリングする
✔︎相談内容を解決するため、裁判例の調査や裁判所提出書類を作成する
✔︎相手との交渉や裁判で代理人として活動する
✔︎契約書文面の精査(リーガルチェック)や新製品サービスなどが
 法的に問題ないかをチェックする


事務作業を含めればほかにもたくさんの業務がありますが、基本的には以上4つの業務を軸に活動していくことになります。
弁護士の仕事とは?働き方や仕事内容、一日の流れなどを詳細解説!

 

2-2.弁護士の仕事のうちAIができる仕事とは?

弁護士の主な仕事のうち、AIができる仕事にはどのようなものがあるのでしょうか。

AIの得意な仕事は、単純作業や大量の情報を素早く正確に処理する仕事です。それを念頭において考えると、以下の2つの業務はAIが処理するのに向いている業務であるといえるでしょう。

 

2-2-1.契約書のリーガルチェック

契約書は基本的に書かれている文言が定型化されていて、契約内容によりある程度の雛形が決まっています。

そのため、契約書の型をAIが判別することにより、人間では見逃してしまうような契約書の抜けや漏れを素早く見つけることができます。

実際に契約書チェックにAIを導入している企業も存在しており、契約書をチェックするリソースを大幅に削減することができるため、大量の契約書をチェックしなければいけない状況であっても、時間も労力も無駄なく作業をすることができるでしょう。

その一方で、契約書を取り交わすのはAIではなく「人」であり、その時の状況に応じて契約書の内容を臨機応変に変更する必要があります。

そのため、AIによる内容の正確性のチェックだけでなく、感情を持っている「人」同士で最終的なチェックをする必要があるといえるでしょう。

 

2-2-2.過去の判例から賠償金を算出する

弁護士が損害賠償金を計算する場合には、法律や過去の裁判例と今回のケースを照らし合わし、合理的な金額を算出します。

学習機能を備えているAIであれば、膨大な量の裁判例を照合することで、人間よりも遥かに早く、賠償金の算出を行ってくれるでしょう。

しかし、実際に弁護士が相手に損害賠償を請求する場合、交渉の駆け引きを行うことで最終的に落ちつくであろう金額を想定して賠償金を決めます。

そのため、契約書のリーガルチェックと同じく、AIによって算出された賠償金をもとにして、最終的には人間が実際に請求する金額を決めていくことになるでしょう。

 

2-3.AIでは弁護士の仕事をすべて代替することはできない

契約書や損害金の算出の件でもわかるように、弁護士の業務は、最終的に人間同士の駆け引きや戦術により、臨機応変な対応を求められるものです。

この点、AIでは代替不可能な仕事の種類として、以下のようなものが挙げられます。

◉新しいものを作り上げるクリエイティブな仕事
◉企業の経営や運営など、従業員のモチベーションを含め、あらゆる情報を加味しながら柔軟な判断が必要になる仕事
◉人間同士のコミュニケーションが重要視される仕事
◉AIを開発したり、活用したりする仕事

弁護士は、既存の判例にもとづき、今回の事例であればどのような請求をするのがベストなのかを考え、交渉しながらベストな解決方法を模索していく仕事です。

基本的に、相談内容ごとに全く同じ事例は存在しないため、そういった意味では事案ごとにそれぞれの解決策を見つける必要があるクリエイティブな仕事であると言えます。

また、弁護士と依頼者は、どのような解決を希望するのかを、常にコミュニケーションをとりながら模索していくことになります。

法律や判例の知識を駆使する事だけではなく、人間同士で信頼関係を築く事が重要視される弁護士の仕事すべてを、AIが代わりに行うことは難しいと言えるでしょう。

 

3.人工知能弁護士「Ross」|Baker & Hostetler弁護士事務所

2016年、法令調査用人工知能「Ross」が、アメリカの大手弁護士事務所であるBaker & Hostetlerと契約し、世界初の人工知能弁護士が誕生しました。

このRossは、従来のAIの機能に加え、対話で質問に答える機能が搭載されており、人間と同じように質問を投げかければ、膨大な法律の資料を瞬時に検索し、より関連度の高い回答をくれます。

新しい判例も学習対象となっており、使えば使うほど知識を学習していく高度なAIを搭載しています。

そのため、今まで判例や法律関係の資料の調査にかけていた時間を短縮し、効率の良い業務をすることが期待されています。

 

3-1.ほかにもいくつかの法律事務所でAIが導入されている  

近年、AIを導入し、業務効率を図る法律事務所が増えてきています。

たとえば、いくつかの法律事務所が、以下のようなシステムを導入しています。

法律事務所導入AIサービス内容
AsiaWise
法律事務所
LeCHECK・専門知識が必要な契約書の自動ビュー
・契約書の作成サポート
・契約書雛形提供
・契約書管理
・英文契約書のレビュー・和英訳
など
弁護士法人
ラグーン
AI-CON Pro・過去の契約書と比較し、不足している部分
 や誤っている部分を自動で判別し、契約書
 に潜んでいるリスクを検知する
・修正案の提示
など
吉田総合
法律事務所
LegalForce・契約書に抜けや漏れかまないかを確認し、
 契約書に潜むリスクを瞬時に検知する
・修正案の提示
・契約書の雛形や過去の契約書の検索機能
・条文ごとに契約書を検索できる機能
など
桃尾・松尾・難波
法律事務所
T-4OO・AIによる高精度の自動翻訳
・社内用語も自動で翻訳に反映してくれる


契約書のチェックや英文契約書の翻訳など、AIが得意な業務を任せることにより、弁護士はほかにしなければならないことに時間を使う事ができます。

AIを効率よく活用する事で、業務の質や業務効率の改善を図ることができるのです。

 

3-2.AI弁護士VS人間弁護士

2023年3月、アメリカにおいてAI弁護士である「DoNotPay」が、弁護士の資格を持たずに弁護士業を営んでいるとして、集団訴訟を提起されました。

人ではない人工知能が、実際の法廷で是非を問われるというのは今までに前例がなく、歴史的な裁判になる事は間違いありません。

今後、AIがどのくらい法律の世界に関与できるようになっていくのか、裁判の行方が注目されています。

 

4.法曹界でのAIの将来性|弁護士とAIの共存

法曹の世界でも、先ほどあげた契約書のチェックや英文契約書の和訳、膨大な法的資料や裁判例を照合し、基礎となる賠償金の算定を行うなどの仕事は、今後AIがメインでおこなっていくようになる可能性が高いです。

しかし、弁護士の仕事は資料を検索することだけではありません。お互いの感情や思惑が交錯し合う複雑な交渉をAIが行うのはまだまだ難しいですし、合理的な知識があるだけでは、裁判でこちらの希望通りの結果をもたらす事はできないでしょう。

また、AI弁護士がもし今後普及したとしても、人間としての付き合いができないAIとは、依頼者も信頼関係を築くことは難しいでしょう。

もちろん、AIを導入する事で、仕事の質や業務効率が良くなる事は間違いありません。

むしろ定型的な契約書の作成や一次チェックなどの事務作業にかけていた時間が削減されるので、より弁護士らしい仕事に注力することができることで、プラスとして捉えています。

そのため、弁護士としては、AIに対して脅威を感じ、仕事を奪われてしまうのではないかと考えるのではなく、AIをどのように有効活用すべきかを考えていくべきでしょう。

 

5.弁護士が仕事を奪われないためには

それでは、弁護士としての仕事をAIに奪われないようにするためには、どのような能力を身につけるべきなのでしょうか。

 

5-1.依頼者に親身に寄り添い信頼関係を築く

弁護士は、困っている人を、法律をもって助ける事ができる法律のプロフェッショナルです。

依頼者の不安を取り除き、信頼関係を築くためには、親身になって相談を聞き、どのように問題を解決すべきかを、依頼者に寄り添いながら考えてあげることのできる弁護士であることが必要です。

依頼者の精神的な不安を取り除いてあげる事ができるのは、「人」でしか行うことができない重要な仕事です。

今後は、法的な対応能力だけではなく、依頼者とのコミュニケーション能力も意識して活動していく必要があると言えるでしょう。

 

5-2.AIを積極的に活用する

AIを有効活用し、AIが得意な仕事を任せることでリソースを削減し、これまで時間的制約により十分な時間を割くことのできなかった顧客対応業務などに時間や人手を割く事ができるようになります。

どんなに新しい技術も、結局のところ使うのが人である以上、業務のすべてがAIに取って代わられてしまう事はありません。

新しい技術であるAIを排除するのではなく、業務効率を上げるためにはAIをどのように活用したらいいのか、その知識をつけて、積極的にAIを使っていく姿勢が重要になってくるでしょう。

 

5-3.コミュニケーション能力を高め、営業に力を入れる

どの事務所もAIを取り入れ、法的な対応力や知識に差がなくなってくると、ほかの弁護士よりも多くの依頼者と契約を交わすためには、積極的に営業活動をする必要も出てくるでしょう。

営業活動には当然、コミュニケーションスキルが重要になってきます。

近年の弁護士の増加もあいまって、今後は営業活動にも力を入れていく必要があると言えるでしょう。

 

5-4.専門性の高い弁護士になる

他の弁護士との差別化を図るためには、専門性を身につけ、他の弁護士では対応できない分野の知識や経験を積む事も必要になってくるでしょう。

労働・離婚・相続・企業法務・知的財産・ネットトラブル・国際事件など、どんなジャンルでいいので、この分野であれば他の弁護士に負けないと思えるくらいの専門性を身につけ、自身の付加価値を高めていくことが重要であると言えるでしょう。

 

6.弁護士の将来性

AIが登場することにより、仕事が奪われてしまうのではなく、AIをうまく活用する事で、より弁護士としての業務の幅が広がっていくと考えられます。

AIの普及が社会で広まれば広まるほど、依頼者と相互のコミュニケーションを取る事ができる弁護士の需要は高まっていくでしょう。

法律事務所に勤務するだけではなく、インハウスローヤーや、国や地方公共団体の職員など、弁護士としての活躍の場は年々広がっています。

AIの登場により、弁護士の将来はむしろ今よりも明るくなっていくでしょう。

 

7.まとめ

このコラムでは、AIの登場による弁護士の将来性について、解説しました。

たしかに、AIの登場により、すでにさまざまな仕事がAIによって行われていることを考えると、弁護士の仕事もAIに奪われてしまうかもしれないと心配になるかもしれません。

しかし、ここでみてきたように、実際はその逆であることがご理解いただけたかと思います。弁護士の仕事は、その性質上AIがすべての業務を行うことはできません。

従来、多くの手間や労力がかかっていた定形作業についてはAIを有効活用することで、これまで時間を使う事ができなかったほかの重要な業務に注力することが可能になります。

仕事を奪われるわけではなく、事務作業が軽減され、より弁護士として働きやすい環境が整うという視点でみることが大切です。

弁護士の仕事の幅は今後ますます広がっていくことが予想されるため、弁護士の将来を心配する必要はなく、今後も目指すべき職業のひとつであると言って良いでしょう。

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著者:伊藤塾 司法試験科

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