法学部の学生におすすめの資格とは?魅力ある最強の資格を解説

法学部といえば、司法試験に合格し、弁護士や検察官、裁判官などの法曹三者になることが、大きな目標となっている人は多いでしょう。
しかし、法律に関する資格は司法試験だけでなく、他にも魅力ある資格がいくつかあります。
そこで本記事では、法学部の学生の方におすすめの資格、資格取得にあたって独学で取得できるかなどを詳しく解説していきます。
法学部生以外でも法律系の資格取得は目指せるので、法学部生はもちろん、法学部以外の方もぜひ最後までご覧ください。
【目次】
1.法学部の学生におすすめの資格一覧
1-1.司法試験(弁護士・検察官・裁判官)
1-2.司法書士
1-3.行政書士
①書類作成代行業務
②書類提出手続き代理業務
③相談業務
1-4.宅建士
1-5.社労士
1-6.中小企業診断士
2.法学部生におすすめの資格は?
3.就活に使えるおすすめの資格は?
4.まとめ
1.法学部の学生におすすめの資格一覧
・司法試験(弁護士・検察官・裁判官)・司法書士
・行政書士
・宅建士
・社会保険労務士
・中小企業診断士
・公認会計士
・税理士
・弁理士
・土地家屋調査士
・通関士
・法学検定
・知的財産管理技能検定
・ビジネス法務検定
法律系の資格にはさまざまなものがあり、どれを取得すべきか迷ってしまうかと思います。
やみくもに資格の勉強をしても非効率的であり、将来的にそれを生かして仕事ができないのであれば、資格取得にかける時間がもったいないといえるでしょう。
それでは、法学部の学生にはどんな資格がおすすめなのでしょうか。
ここでは、法学部生に特におすすめの資格を6つご紹介していきます。
1-1.司法試験(弁護士・検察官・裁判官)
司法試験は、裁判官や検察官、弁護士などの法曹三者になろうとする者として必要な学識・応用能力を備えているかどうかを判定するための試験であり、法科大学院課程を修了もしくは最終学年進学時点で一定の成績を収めて学長認定の取得した者、または、司法試験予備試験の合格者のみが受験することができる国家試験になります。
予備試験は、「法科大学院修了者と同等の学識及びその応用能力並びに法律に関する実務の基礎的素養を有するかどうかを判定する」(司法試験法5条)試験で、合格すると司法試験の受験資格を得ることができます。
司法試験に合格すると、たとえば弁護士であれば、業務として法律相談を受けたり、裁判書類などの法律関係の書類の作成、民事裁判の代理人や刑事裁判の弁護人など、法律事務を幅広く行うことができます。
また、扱うことのできる業務の幅は法律系資格の中でもっとも広く、ほかの士業業務をそのまま行うことができる他、他資格の試験に合格していなくても登録をすることもできるため、資格の汎用性はかなり高いといえます。
(弁護士の職務)第三条 弁護士は、当事者その他関係人の依頼又は官公署の委嘱によつて、訴訟事件、非訟事件及び審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立事件に関する行為その他一般の法律事務を行うことを職務とする。
2 弁護士は、当然、弁理士及び税理士の事務を行うことができる。
参照:弁護士法3条
【登録できる資格】
◉弁理士
◉税理士
◉社会保険労務士
◉行政書士
◉海事補佐人
弁護士法にも「その他一般の法律事務を行う」、と明文の規定がある通り、弁護士は他の士業で扱う法律事務に関しても扱うことができる資格です。
なお、司法書士が行う登記代行業務に関しても、「その他一般の法律事務」にあたるため、弁護士登録をするだけで、司法書士登録をすることなく業務を行うことができます。
なお、登録が認められない資格も存在します。
【登録できない資格】◉公認会計士
◉土地家屋調査士
これらの資格は、法律に関する資格ではありますが、法律以外の専門的な知識や実務スキル(会計や測量など)が求められるため、その資格に業務を独占させることとなっています。
つまり、上記は「その他一般の法律事務」にはあたらない専門性がある資格なのです。
とはいえ、司法試験に合格すれば、法律事務のほとんどをカバーできるため、就職や転職・独立開業に大いに役立つことは間違いありません。
近年、弁護士としての働き方の多様化が進んでおり、事務所で働くのではなく、インハウスローヤーなど、企業の一社員として法務部で働くといった働き方を選択する人も増えてきています。
司法試験に合格することができれば、将来の仕事の幅が格段に広がることを考えると、法律系の資格のなかでも幅広い分野で活躍したい人にとっては有用性の高い資格であることは間違いないでしょう。
1-2.司法書士
司法書士は「登記の専門家」ではありますが、『街の法律家』とも言われるように、私達の暮らしを守る身近な法律家という側面もあります。
司法書士ができる仕事の幅は広く、以下のような業務をする事ができます。
1.登記又は供託手続の代理2.(地方)法務局に提出する書類の作成
3.(地方)法務局長に対する登記、供託の審査請求手続の代理
4.裁判所または検察庁に提出する書類の作成、(地方)法務局に対する筆界特定手続書類の作成
5.上記1~4に関する相談
6.法務大臣の認定を受けた司法書士については、簡易裁判所における訴額140万円以下の訴訟、民事調停、仲裁事件、裁判外和解等の代理及びこれらに関する相談
7.対象土地の価格が5600万円以下の筆界特定手続の代理及びこれに関する相談
8.家庭裁判所から選任される成年後見人、不在者財産管理人、破産管財人などの業務
参照:日本司法書士連合会|司法書士の業務
このように、司法書士ができる業務の幅はかなり広いですが、おもに登記の申請がメインの仕事となっています。
たとえば、家を買った時や土地を相続した場合など、名義変更が必要な場面で司法書士が不動産の登記の申請を依頼者の代わりに申請するのが不動産登記であり、起業の際の会社の設立登記や事業承継の際の役員の変更登記を申請するのが商業登記です。
相続の場合には権利関係が複雑で、必要書類が多岐にわたる場合がありますし、住宅を購入する際にはほとんど住宅ローンを組むため、その際の登記はミスが許されません。そのため、司法書士として知識と経験が試されるという意味で、不動産登記は「司法書士の花形業務」と言われます。また、企業の誕生から終わりまで様々な形でかかわることのできる商業登記業務も、多くの司法書士にとって魅力的な業務となっています。
登記のほかにも、法務大臣の認定を受ければ、140万円以下の訴訟、民事調停、仲裁事件などの代理行為をする事ができます。
ただし、140万円を超える訴訟に関しては対応する事ができませんし、刑事事件についても司法書士業務の範囲外となります。
独立開業も可能な魅力ある資格ではありますが、登記ではなく、訴訟代理業務や刑事事件など幅広く法律事務を扱う仕事につきたいのであれば、弁護士の方が魅力的な資格であるといえるでしょう。
1-3.行政書士
行政書士は、各行政機関や官公庁に提出する書類や、事実証明に関する書類、権利義務に関する書類などの法律文書に関する専門家です。
行政書士の仕事内容はおもに3つに別れており、書類作成代行業務、書類提出手続き代理業務、相談業務がメインの仕事になります。
①書類作成代行業務
(業務)第一条の二 行政書士は、他人の依頼を受け報酬を得て、官公署に提出する書類(その作成に代えて電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によつては認識することができない方式で作られる記録であつて、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)を作成する場合における当該電磁的記録を含む。以下この条及び次条において同じ。)その他権利義務又は事実証明に関する書類(実地調査に基づく図面類を含む。)を作成することを業とする。
参照:行政書士法1条の2
行政書士は法律に関する文書を作成するのが主な仕事になりますが、作成する文書の幅はとても幅広く、さまざまなものがあります。
具体的には以下のような書面を作成することができます。
・官公庁に提出する書類
・権利義務に関する書類
・事実証明に関する書類
②書類提出手続き代理業務
行政書士は、依頼者に代わって官公署に提出する書類を作成し提出手続きを行うことができます。正しく提出することで、手続きがスムーズに進むようサポートします。
③相談業務
たとえば、建設業の許可の申請、産業廃棄物収集運搬許可の申請、酒類販売許可の申請、飲食店営業許可の申請など複雑な許認可の申請書の作成と提出の代理を行います。また、自動車の名義変更やビザの申請の際の書類の作成と提出の代理など身近な業務も行政書士の守備範囲となります。
このような書類作成の際の相談も業務範囲となり、その際に依頼者に法律的な観点から的確なアドバイスをすることは、行政書士の大切な業務の一つです。
ただし、行政書士は、あくまで許認可等の官公庁に提出する書類等の作成と代理申請のプロであり、法律事務全般について代理をすることや裁判の際の訴訟代理人となることができないことに注意が必要です。
1-4.宅建士
不動産取引法務の専門家である宅地建物取引士(宅建士)は、法律系の国家資格の中でも比較的合格率が高く、取得しやすい国家資格の1つです。
主な業務は、不動産取引の場面における重要事項の説明と契約内容の説明や契約の締結です。土地や建物などの不動産に関する専門的知識のない顧客に対し、将来不当な損害を負うことのないよう契約の根幹に関わるさまざまな事項を説明します。
不動産に関する重要事項の説明等は、宅建士だけが行うことができる独占業務です。また、土地や建物を売買したり賃貸借の仲介を行う場面では、従業員5名につき1名以上の宅建士がいることが法律上義務付けられていることを考えると、資格取得はメリットが大きいと言えるでしょう。
また、法律系の国家資格の中でも比較的取得しやすい資格でもあり、資格を取得すれば就職活動の際に自身の法律知識をアピールできるのも、大きな魅力の1つです。
1-5.社労士
社会保険労務士(社労士)は、社会保険や労働に関する法律の専門家です。
主な業務は、社会保険関連・労働関連の書類作成業務やその相談・指導です。会社にとって必ず必要になるこの分野の知識に精通していることは、就職活動においてライバルと差をつける大きな要因になるでしょう。
また、勤務先とのトラブルを迅速に解決できるADR(裁判外紛争解決手続)において、双方に中立な立場から問題解決にあたれる「特定社会保険労務士」になれる(特定の研修および試験に合格する必要がある)のも、社労士の大きな魅力の1つです。
また、他士業とのダブルライセンスで働く方も多い資格です。特に司法書士や行政書士とあわせて開業されている方が多いです。たとえば、司法書士とダブルライセンスで働けば、会社設立の登記から設立後の社会保険・労務に関する業務に携わることができるので、仕事の幅を広げることができるでしょう。
1-6.中小企業診断士
中小企業診断士は、経営コンサルティングの専門家です。マネジメント理論や事業戦略をはじめとするさまざまな専門知識をもって、企業の健全化を図ることができます。
企業の経営課題を解決するのはもちろん、スタートアップでの事業開発やベンチャー企業育成支援など幅広い業務を行えるので、アイデア次第でさまざまなフィールドで活躍することができます。
また、将来的に弁護士等として自分の事務所を持ちたいと考えている方にとって、開業にあたって経営に関する基礎的な知識を一通り身につけられるのも魅力的です。
2.法学部生におすすめの資格は?
それでは、法学部生が取得するのにおすすめの資格は何になるのでしょうか。
すでにご紹介した6つの資格をさまざまな観点から比べてみましょう。
弁護士 検察官 裁判官 | 司法書士 | 行政書士 | |
資格取得まで にかかる 勉強時間 ※あくまでも 目安となる時 間であり個人 差が大きい | 司法試験合格 までに 2,000〜5,000時間 | 1,000〜3,000時間 | 400〜800時間 |
合格率 (令和5年度) | 司法試験:45.34% ※予備試験ルート からの司法試験 合格者:93.3% 予備試験:3.58% | 5.20% | 13.98% |
資格の汎用性 | 高い | 普通 | 低い |
年収 ※厚生労働省編 職業分類に対応 する統計情報 | 弁護士の平均年収 1121.7円 ※1 | 司法書士の 平均年収 1121.7万円 ※2 | 行政書士の 平均年収 551.4万円 ※3 |
宅建士 | 社労士 | 中小企業診断士 | |
資格取得まで にかかる 勉強時間 ※あくまでも 目安となる時 間であり個人 差が大きい | 300〜500時間 | 800~1,000時間 | 800~1,000時間 |
合格率 (令和5年度) | 17.16% | 6.36% | 1次試験合格率 29.6% 2次試験合格率 18.6% |
資格の汎用性 | 低い | 低い | 低い |
年収 ※厚生労働省編 職業分類に対応 する統計情報 | 住宅,不動産営業員 の平均年収 579.5万円 ※4 | 社労士の平均年収 947.6万円 ※5 | 中小企業診断士 の平均年収 947.6万円 ※6 |
※1:弁護士−職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag|厚生労働省
※2:司法書士−職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag|厚生労働省
※3:行政書士−職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag|厚生労働省
※4:住宅・不動産営業−職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag|厚生労働省
※5:社会保険労務士−職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag|厚生労働省
※6:中小企業診断士−職業情報提供サイト(日本版O-NET)jobtag|厚生労働省
資格取得にまでにかかる時間が一番短いのは、宅建の300〜500時間となっています。
一方、司法試験は2,000〜5,000時間程度の勉強時間が必要だと言われています。
5,000時間と聞くと途方もない勉強時間のように聞こえますが、法学部生である程度の勉強時間を確保できるのであれば、1日平均約3.5時間の勉強時間を確保できれば、4年間で5,000時間の勉強時間を確保できる計算になります。
大学1年生から毎日計画的に勉強すれば、誰でも合格に手が届く試験なのです。
また、合格率をみてみると、司法試験の合格率が意外と高いことに驚くかもしれません。さらに、予備試験合格者の司法試験合格率は97.53%と、受験生のほとんどが合格していることがお分かりになるでしょう。
先述のとおり、司法試験(弁護士・検察官・裁判官)は非常に汎用性が高い資格です。
司法試験に合格する事ができれば、基本的に行政書士や司法書士が行う業務はすべて行うことができますし、司法書士と予備試験の合格率はさほど変わらないことなどから、可処分時間が比較的多い学生の方々には、ぜひ司法試験にチャレンジしていただきたいと思います。
また、大学入学後の早い時期から司法試験の勉強を始めることにより、学部テストで好成績を出し、高いGPAを取得できるという効果も期待できます。
さらに、年収についていえば、法律系の資格の中で弁護士・検察官・裁判官が頭ひとつ抜け出ていることも大きな魅力でしょう。
つまり、法学部生が取得を目指すべきおすすめの資格は、司法試験(弁護士・検察官・裁判官)であると言えるのです。
※法学部での成績やGPAを上げる方法については、こちらの記事で詳しく解説しています。
→法学部は難しい?GPAを上げて弁護士への道を切り開く方法
3.就活に使えるおすすめの資格は?
司法試験に合格すると、弁護士、裁判官、検察官の法曹三者として活躍するのが一般的ですが、近年、働き方の多様化が進んでおり、企業内で従業員として勤務し、法的な業務を行うインハウスローヤーという働き方も増えてきました。
このように、司法試験に合格後、就職活動をしたうえで一般企業で働くという選択肢もあるのです。
もちろん、就活では資格の有無だけではなく、人間性やコミュニケーションスキルなども重要です。
しかし、司法試験合格には就活においても大きな利点があります。
というのも、司法試験合格という目標を掲げてそれを達成したという目標達成能力や、試験合格へ向けて成長するプロセス自体が、就職の際の評価ポイントとなるからです。
大学入学後できるだけ早く勉強を始め、効率良く司法試験に合格することで、就活も有利に乗り切ることが可能になるでしょう。
4.まとめ
当記事では、法学部におすすめの資格を6つご紹介してきました。
中でも、「弁護士・検察官・裁判官」については、その社会的地位や仕事の汎用性、平均年収の高さなどを考えると、将来の就職を考えるにあたり、大学生が挑戦する価値のある魅力ある最強資格です。
よく、最終的に司法試験合格を目指すのであれば、行政書士、司法書士、予備試験、司法試験など、順を追って段階的に資格を取得していく方が効率良く資格を取得できるという話を聞く事があります。
しかし、それぞれの試験は独立していて、試験科目も試験範囲も違います。また、各試験とも年に1回しか実施されない試験であるため、順を追っていては大学4年間では足りません。
被っている試験科目も多くありますが、出題方式や出題傾向も異なるため、最終的に司法試験合格を目指すのであれば、初めから司法試験に特化した勉強をする方がコスパ的にもタイパ的にも効率がいいことは明らかです。
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著者:伊藤塾 司法試験科
伊藤塾司法試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。

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