理系でも司法試験には合格できる?受験までの流れと理系弁護士の需要を解説

司法試験は、理系出身者でも合格できる試験です。司法試験の受験資格を得るための予備試験や法科大学院の受験は、理系出身者でも文系出身者と同じように挑戦できます。
理系の論理式で培ってきた思考方法は法律の学習にも役立ちますし、理系の専門知識は弁護士の実務で活用できる場面もあるでしょう。
今回の記事では、理系出身者が司法試験の受験資格を取得する方法や理系弁護士の需要、理系出身者の勉強法などを解説します。理系出身者が司法試験の挑戦を検討するうえで役立つ情報をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
【目次】
1.理系出身者でも司法試験には合格できる
1-1.法学部の講義は司法試験に直結しない
1-2.理系出身者が司法試験の受験資格を取得するには?
2.理系弁護士には需要がある
2-1.理系の思考法は法律問題の解釈に応用できる
2-2.理系の知識が役立つ分野も多い
2-3.理系弁護士は人数が少なく需要がある
3.理系弁護士におすすめのキャリアプラン
3-1.知財関係の法律事務所
3-2.IT企業のインハウスローヤー
4.理系出身者の勉強法
4-1.ルートを決める
4-2.受験指導校を利用する
5.まとめ
1.理系出身者でも司法試験には合格できる
結論から言うと、理系出身者でも司法試験は十分に合格可能な試験です。実際、正確な人数は発表されていませんが、理系学部・大学院出身者の司法試験合格者は毎年誕生しています。
【理系出身者の司法試験合格体験談】
理系をバックグラウンドに持つ弁護士が目標。予備試験は、勉強のモチベーションが上がる点がメリット
ここでは、理系出身者でも司法試験への挑戦が不利にはならない理由と、理系出身者が司法試験の受験資格を取得する方法について解説します。
1-1.法学部の講義は司法試験に直結しない
大学の法学部の講義は、司法試験合格には直結しません。実際、法学部出身でも司法試験に挑戦して法曹の道に進むのはごく僅かです。理系出身者でも研究者とはならずに、文系・理系の関係のない営業職や一般職に就く人も多くいます。
つまり、文系理系を問わず、学部での専攻は卒業後の職業に直結しないことも多いのです。
法学部に在籍している学生も、司法試験受験のためには受験指導校を利用する人がほとんどで、学部の講義をベースに司法試験の対策を行う人はほとんどいません。司法試験に合格するためには、法学部出身者でも自主的な学習が欠かせないのです。
理系出身者でも、受験指導校を利用するなど、自主的に司法試験の学習に取り組むのであれば、法学部出身者と比べて不利になることはありません。
1-2.理系出身者が司法試験の受験資格を取得するには?
大学の学部が文系、理系どちらであっても、司法試験を受験するには受験資格を取得する必要があります。司法試験の受験資格を取得する方法は、次の2つです。
◉法科大学院(未修者・既修者)を修了する(2023年より法科大学院在学中受験が可能になりました。)
◉予備試験に合格する
法科大学院や予備試験の受験資格は、理系出身者でも文系出身者と同様に認められます。
法科大学院には、3年間で修了する未修者コースと2年間で修了する既修者コースの2つのコースがあります。これは法学部だから既修者コース、法学部以外だから未修者コースというわけではなく、法律の入学試験を行うのが既修者コース、小論文の入学試験を行うのが未修者コースという分け方にすぎません。つまり、理系出身者でも既修者コースを受験することは可能です。
予備試験は、2023年からは毎年7月、10月、1月の3段階で試験が実施され、合格すると翌年以降の司法試験受験資格を取得できます。予備試験の受験でも、法学部出身者が理系出身者に比べて優遇されるということはありません。
理系出身者でも、法律の学習に取り組めば、法学部出身者と同じ条件で法科大学院や予備試験の受験に挑戦できます。
2.理系弁護士には需要がある
司法制度改革によって弁護士の人数は増加し続けていますが、理系弁護士は現在でも希少な存在です。そのため、理系弁護士には十分な需要があります。
実際、理系出身者の弁護士を増やすために、理系出身者だけが利用できる奨学金を設置している法科大学院や団体もあります。
参考:理系出身者への法科大学院奨学金
ここでは、理系弁護士に需要がある理由を詳しく解説していきます。
2-1.理系の思考法は法律問題の解釈に応用できる
理系科目の思考法は、法律問題を解釈するのにも応用できます。
法律の学習は、条文や判例などの暗記がメインと想像する方も少なくはないでしょう。しかし、法律問題を解決するためには、法的三段論法と呼ばれる思考法を身に付けなくてはなりません。
法的三段論法とは、条文・規範に具体的な事実をあてはめて結論を導く思考法のことで、公式に数字をあてはめて解答を導く数学の思考法に近いものがあります。
そのため、理系出身者が身に付けている論理的思考力は、法律の学習を進めるうえでも役に立つと言えるでしょう。
2-2.理系の知識が役立つ分野も多い
法律は、社会生活のあらゆる場面で問題となります。そのため、理系の世界でも、法律が問題となる場面は少なくありません。
たとえば、知的財産権の問題では、電子機器や医薬品、半導体などの最先端のテクノロジーを取り扱うケースも多いです。
ほかにも、IT関連の業務や医療関係の訴訟など理系の専門的知識が役に立つ場面は数多くあります。
理系の専門分野を学んでいる弁護士は少ないため、専門的知識を持つ弁護士は特定の分野では重宝されます。
2-3.理系弁護士は人数が少なく需要がある
理系の思考法と専門的な知識は、弁護士業務にも活用できます。
実際、弁護士として知的財産権の問題や医療訴訟に携わると、資料の内容を理解できずに苦労するケースも多いです。特定の分野を専攻した理系出身の弁護士であれば、資料の内容を深く理解して、事件を適切に進行させることができるでしょう。
理系弁護士の人数は少ないため、就活の場面でも弁護士業務においても理系出身者であることは大きな武器になります。
3.理系弁護士におすすめのキャリアプラン
理系弁護士が強く求められるのは、知財関係を専門に扱う法律事務所やIT企業のインハウスローヤーなどです。
3-1.知財関係の法律事務所
弁護士が扱う問題の中でも、知的財産関係の問題は特に専門性の高い分野です。そのため、知財関係の事件を専門的に取り扱うのは、弁護士と弁理士が両方とも在籍している法律特許事務所と呼ばれる事務所で、一般の事務所では知財関係は取り扱わない事務所も多いです。
知的財産の分野では、理系の専門的な知識を必要とする場面も多く、法律の知識だけでは対処するのが難しい問題が多くあります。知的財産を専門に扱う法律事務所では、理系出身者のみの求人を行うことも珍しくはありません。
理系弁護士を求める知財関係の法律事務所では、理系弁護士である強みを十分に活かすことができるでしょう。
3-2.IT企業のインハウスローヤー
さまざまな技術が発展を続けるITの分野も、理系の専門的知識を活かしやすいです。
近年では、顧問弁護士をつけるだけでなく、インハウスローヤーを雇用する企業IT企業も珍しくありません。
IT企業の企業法務では、理系の専門的知識を活用できる場面も多いため、理系弁護士の需要は大きいと言えるでしょう。
※こちらの記事も併せてご覧ください。
→年収1,000万!?インハウスローヤー(企業内弁護士)の気になる年収をご紹介
4.理系出身者の勉強法
ここでは、理系出身者が司法試験合格を目指すための勉強法を解説します。
4-1.ルートを決める
司法試験への挑戦を開始するにあたって最も重要なのは、合格までのルートを決めることです。司法試験合格までには数年単位の期間が必要となるため、闇雲に学習を進めても合格するのは難しいでしょう。
法科大学院を選択するのであれば、2年間もしくは3年間は法科大学院で法律の学習に専念する必要があります。
仕事を続けながら司法試験に挑戦する場合は、予備試験ルートを選ぶ方が多いです。仕事を続けながら予備試験の勉強を続けるのは大変なことで、こちらも合格までに数年間はかかります。
法律の学習を開始する際には、自分の現在の生活状況や将来のキャリアプランから、どちらのルートから何年での合格を目標とするのかを十分に検討してください。
※こちらの記事も併せてご覧ください。
→法科大学院の夜間コースVS予備試験、社会人にはどちらのルートがおすすめなのか詳細分析
4-2.受験指導校を利用する
理系出身者の方に限ったことではありませんが、独学で司法試験の合格を目指すのは、現実的ではありません。基礎からしっかりと法律を学習するには、受験指導校の利用をおすすめします。
伊藤塾の入門講座では、基礎から応用まで司法試験合格に必要な力を身に付けられます。全ての講義を通信講座でも受講できるため、働きながらでも自分のペースに合わせた学習が可能です。
司法試験合格までには、理系出身者のみならず法学部出身者でも、ほとんどの合格者が受験指導校を利用しています。まずは無料体験からでも、ぜひご活用ください。
5.まとめ
弁護士の数は年々増加していますが、理系弁護士の数はまだまだ少ない状況です。知的財産やITの分野などでは理系弁護士の需要は大きく、司法試験合格後は、理系出身者の強みを活かせる場面は多いでしょう。
司法試験の受験資格を取得する方法は、法学部出身者と理系出身者とで大きく変わりません。理系出身でも臆することなく、司法試験にチャレンジしてみてください。
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→【必見】司法試験の効率的な勉強法とは?科目別、短答、論文の勉強法を徹底解説!
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著者:伊藤塾 司法試験科
伊藤塾司法試験科は1995年の開塾以来、多数の法律家を輩出し、現在も業界トップの司法試験合格率を出し続けています。当コラムでは、学生・社会人問わず、法律を学びたいと考えるすべての人のために、司法試験や法曹に関する情報を詳しくわかりやすくお伝えしています。

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